ちいさなちいさな いのりのことば

 * にしだひろみ *

ボダイジュ*日々のつれづれ*

2015年10月07日 | Weblog

風が好きです。

気持ちよく、風が吹き抜けるところが。


できれば、その風は、森を渡ってきたものであってほしい。

森を渡ってきた風は、深くやわらかな香りがして、潤いに満ちていて、わたしの心を満たしてくれます。





先日、やっと時間ができて、わたしは森に行ってきました。

そこは、小高い丘になっていて、気持ちよく風が吹き抜けます。




ああ、うれしい。

なんて、うれしい。


言葉にならないような言葉を、繰り返していました。






帰り道、何気なく歩いていると、存在感のある一本の木。

親しみを感じ、近づいてみると、根元のところに「ボダイジュ」という小さな標識がありました。




ボダイジュ。

わたしの息子の誕生日の木です。

樹皮はごつごつと節くれ立っていますが、ビロードのように柔らかい。

見上げる葉っぱは黄色く色づき始めていました。




一緒にいた息子が、ボダイジュに、そうっと、触れてみました。

そして、「あっ!」と言いました。




「今、なにか、聴こえたよ。」

と言うのです。




それは、どんな風に?と尋ねると、

「ありがとう、って聴こえた。」

そう答えました。




とっても素敵ね・・・

そう言って、それ以外は何も言わないで、わたしたちはそこを去りました。





息子がボダイジュに会えたのも、触れたのも、今回が初めてでした。

何気ないことのようですが、わたしにとっては、胸がドキドキする、素晴らしい瞬間でした。



息子が体験したことは、不思議な体験や、神秘的な体験、というよりも、

いのちといのちが共鳴しあった、ごく自然な出来事、とわたしは感じます。


人にいのちがあり、想いがあるように、木にもいのちがあり、想いがあるでしょう。

ふと、隣にいる友だちの気持ちが伝わってくることがあるように、優しい気持ちでそばにいたら、木もまた、気持ちを伝えてくれるかもしれません。

ちいさな人たちは、大人たちよりも、遥かに敏感に、抵抗なく、そういうものを感じることができるように思います。



息子はまだまだ9才で、弱さや不得手はたくさんありますが、

その心や精神に、無垢で尊いものを見るたびに、まっすぐに憧れます。






ほんの少しだったけど、とっても豊かな時間でした。



ありがとう、森。

ありがとう、風。

ありがとう、ボダイジュ。








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