わたしがその木陰にたどり着いた日のことは、鮮明におぼえています。
青空がきれいな日のことでした。
わたしは両手にたくさんの荷物を持ち、大きなリュックも背負っていました。
その道を行くには、必要な荷物ではなかったのです。
でも、それらがあることによって、歩いてこられたような、わたしでした。
とても疲れていました。
やっとの思いでたどり着きました。
気持ちのよさそうなその木陰は小さな場所でしたが、見晴らしがよく、そよ風が吹きわたっていました。
休んでいこう、そう思いました。
荷物を下ろしたのは久しぶりでした。
なんてたくさんのものを集め背負ってきたのでしょう。
使い道のなさそうなものや、持ち歩くには重すぎるようなものばかり入っています。
やれやれ、そんな気持ちでした。
そこへ、息を切らしながら、誰かがやってきました。
その人は、なんとまあ、わたしと同じかそれ以上の荷物を抱えていたのです。
ゼイゼイと、その人はこちらへやってきました。
わたしは少し、場所を空けました。
そして、目が合いました。
わたしの脇にある荷を見て、その人は目を見開きました。
わたしたちは、笑い合ったのです。
それが、あなたとの出会いでした。
何も話さなくても、荷物を見ただけで、互いのことがわかるような気がしました。
それでもわたしたちはたくさん話しました。
なんて楽しかったことか。
道々集めてきたものを、荷物を広げ、見せあいっこをしました。
あんなものや、こんなもの…
お腹を抱えて笑いあいました。
ユニークなものばかりでしたから。
そして、同じものを持っていたことも!
そしてあなたが、険しい崖で命からがら助かった時に見つけたきれいな石を見せてくれた時、二人とも、泣きましたね。
あなたに会えたことで、わたしのそれまでの不器用な旅を、これでよかった、と初めて思うことができました。
不必要に思えていた荷物も、あなたと笑いあうために持ってきてよかった、と思うことができました。
ここに来て、ほんとによかった。
歩いてきて、ほんとによかった。
その先は、違う道を行かなければならなかったけど、最後に行きつく場所は同じだと知っているので、元気よく手を振ってわかれました。
もう、荷物を重く感じませんでした。
あなたが笑ってくれた宝物だから。
お揃いのものもあるし。
この先は、これまでよりもゆっくり、いろんなものを見て感じながら行こう、と思いました。
この花の美しさを、この鳥のこえを、この景色を、いつかあなたに伝えられるように。
いまも、一歩一歩、大切に歩んでいます。
あなたもきっとそんな風に歩いている、そう信じながら。