「テレビが監視してる!」S男の父親は、急に叫びだした。シンナー吸引を止めることができないS男の今後について話し合っていたときのことである。「今はテレビのスイッチが入っていないし、それにテレビはこちら側から見えても、向こうからは見えませんよ。」と説明しても、その後も「頭の毛穴から虫が這い出てきた。先生、捕って下さい。」「電波が命令する。」「秘密の暗殺団が自分の命を狙っている。」「街を歩いている人が、みんな自分のことを監視している。」と不安を口にした。
S男の父親は覚醒剤中毒に陥り、幻覚と幻聴に悩まされた結果、自宅に火を放ち逮捕されたという過去を持っている。「今はキッパリと足を洗った。」とは言うものの、混乱した状態が、過去の覚醒剤中毒が原因の『フラッシュバック』から来るものなのか、それとも現在も薬を止められないでいるために起きるものなのか、私には分からなかった。しかし饒舌に話し出したと思うと、急に怯えた様子になるというパターンが常だった。
数年後、S男はビルから飛び降りて亡くなった。棺に入ったS男に手を合わせながら、シンナー中毒の少年は覚醒剤に手を出しやすいという生徒指導研修会で聞いた話を思い出した。
S男の父親は覚醒剤中毒に陥り、幻覚と幻聴に悩まされた結果、自宅に火を放ち逮捕されたという過去を持っている。「今はキッパリと足を洗った。」とは言うものの、混乱した状態が、過去の覚醒剤中毒が原因の『フラッシュバック』から来るものなのか、それとも現在も薬を止められないでいるために起きるものなのか、私には分からなかった。しかし饒舌に話し出したと思うと、急に怯えた様子になるというパターンが常だった。
数年後、S男はビルから飛び降りて亡くなった。棺に入ったS男に手を合わせながら、シンナー中毒の少年は覚醒剤に手を出しやすいという生徒指導研修会で聞いた話を思い出した。