教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

子育てを考える②子どもを転ばせる勇気

2007年05月10日 | 子育て
小さな怪我が大きな怪我を防ぐと言います。小さな怪我をするたびに人は怪我を繰り返さないよう反省し、そのことが重大な怪我(失敗)を防ぐことになるという昔の人の教えです。

怪我をしないにこしたことはありませんが、怪我や失敗のない人生なんてありえません。松阪だって打たれるし、イチローだって三振します。浅田真央ちゃんも転倒するのです。忠告やアドバイスは、若い者に怪我をさせたくないという先輩の思いやりなのでしょうが、人は(私自身も含め)自分が怪我をしてみて初めて忠告の重みに気づくものなのです。たくさんの怪我や失敗を繰り返しながら成長するのが私たちの歩みなのです。

ところが少子化と子育ての孤立化により、我が子の小さな失敗を恐れる親が増えています。子どもが小さな時は親が先手を打てば失敗を防げます。しかし小さな失敗を経験させないまま大きくなると、失敗を未然に防ぐ力や失敗した時に立ち直る力は身につきません。失敗を前に絶望したりパニックに陥ってしまうのです。母親を殺した大阪大学生や、家族3人を殺した東大寺学園生も、失敗経験の希薄さが事件の一因になっていると言われます。

親が手助けできないような困難に直面したとき、それをどう乗り越えるかが子どもの真の力です。そのため大人はあえて子どもの失敗を見届ける勇気や忍耐を持たなければならないと思います。

ヤンキー先生こと義家さんは、瀬戸内寂聴さんとの対談でこう発言されています。
「北星学園余市高校では、『転ばせる教育』をひとつの教育方針として掲げ、全体で取り組んでいるのです。・・・日常の学校生活で、教師たちは、生徒たちがつまずきそうな石を取り除いてあげるのではなく、一つひとつ彼らを転ばせてあげる。そして起きあがるのを傍らで見守る。どうしても一人の力で起きあがれないときだけ、愛情をもって手をさしのべる。・・・どうしたらもう転ばないですむのかを、失敗を通して、生徒と一緒に考えていくんです。」(『私の夢 俺の希望』瀬戸内寂聴・義家弘介対談集 PHP研究所発行)

学校を家庭に、教師を親に置き換えてみてはどうでしょうか。転ぶ=失敗することを予測し、転んだ後の支援のあり方も考えたうえで、あえて転ぶのを見届ける。それが子育てに必要だと思います。子どもたちはいずれ親や教師を乗り越えなければなりません。大人を乗り越える力をつけてやる、そのためには転び、立ち上がる力の形成を大切にしなければなりません。


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1 コメント

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「放任のふり」の勧め (梅吉)
2007-05-22 21:01:38
はじめまして、梅吉と申します。

この記事でhigasioka-soudanさんが仰っておられる事、一つ一つ私の腑に落ちました。

「殴られてみないと、殴られる痛みは解らない」
「火傷をしてみないと、火の恐さは解らない」
「自ら小刀を扱って自らの身体に切り傷をこさえてみないと、刃物の恐さは解らない」
等々は、私が常日頃、人と接する為に欠かせない考え方だと思っている事柄の一部です。

私は、人間という生き物は、
「自分が未知であるという事に対しては、とことん鈍感である」
と考えています。

実は私は、拙いながらもブログを書き連ねております。
お時間がお有りの時にでも、宜しかったらご訪問下さいませ・・・。
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