1.日時 2006年2月10日(金)~2月11日(土)
2.場所 品川区立原小学校
品川区立日野学園建設現場(現日野第二小学校)
3.指定 内閣府 『構造改革特別区域研究開発校』指定
品川区教育委員会 研究学校
4.研究主題
小中学校9年間を一貫とした柔軟な教育課程の研究開発
「教養豊かで品格のある人間を育てる教育課程の編成に向けて」
5.品川区小中一貫教育取り組みの紹介
(1)品川区教育改革の概要
1998年 全小中学校での学校公開スタート
2000年 教育改革「プラン21」スタート
小学校での学校選択制導入
2001年 中学校での学校選択制導入
2002年 文部科学省の小中連携カリキュラム研究開発校の指定
外部評価者制度導入
学力定着度調査導入
2003年7月 構造改革特区小中一貫教育特区認定
2006年4月 品川区全小中学校で小中一貫教育を開始
品川区大崎地区で小中一貫校開校
2007年4月 品川区大井地区で小中一貫校開校
(2)品川区小中一貫教育のねらい
小・中学校間に存在する学力観や指導観、教育観の違いを是正し①子どもたちから学習上の負担を取り除くとともに②人間形成上の連続性をもたせる
特に小中学校の教職員の間に横たわる相互不信を払拭し、小中学校の文化の違いを埋めるため子どもたちの9年の成長を保障する場としての小中一貫校の開校に踏み切った
(3)品川区小中一貫教育の基本
①4-3-2のまとまりで教育課程を考える
1~4年 児童期前期 基礎・基本の定着を図る
5~7年 児童期後期 基礎・基本の徹底
8~9年 青年期 教科・内容の選択幅拡大と個人の個性・能力を十分に伸ばす
前半の1~4年は子どもと教師の信頼関係を築くことを大切にしながら基礎・基本の徹底に重点をおいた指導を行う
後半の5~9年は教科や学習内容の選択の幅を増やしたり、一人ひとりの学習の習熟状況に応じて学ぶ「ステップアップ学習」を導入
②小学校「英語科」の開設
単なる英語活動からの脱却
・ゲームや歌などで単に英語を「聞く」「話す」活動を楽しくしていていいのか
・小学校での指導材料の基準はどこにあるのか
・教育活動として取り組むなら評価が必要ではないか
↓
21世紀を生き抜くため国際的共通語としての英語のコミュニケーション能力を
身につけるための小学校英語科の開設
・授業時数 1年・2年…20時間 3年~6年…35時間
・指導者 担任+ALT(外国語指導助手)・ボランティア
・指導内容 コミュニケーション場面を設定し指導計画と評価基準を設定
区としてワークシート・カード・歌等の副教材を作成
・評価 1年~4年…所見 5年・6年…観点別所見記入
③市民科の開設
「人間らしい生き方を自覚」させ「自分自身の生きる道筋を発見するための教養」を身につけさせることを目標とする
その実現のために「社会の構成員としての役割を遂行できる資質・能力」と「確固たる自信をもち、自らを社会的に有為な存在として意識しながら生きていける」力をつけることが市民性であると考え、市民科を開設した
市民科は、今まで独自に取り組んできた「道徳」・「特別活動」・「行事」を否定するのではなく、それらを総合的に取り組むものである
・市民科の領域と身に付けさせる能力(5領域・15能力)
《自己管理領域》………自己管理・生活適応・責任遂行
《人間関係形成領域》…集団適応・自他理解・コミュニケーション
《自治的活動領域》……自治活動・道徳実践・社会的判断行動
《文化創造領域》………文化活動・企画表現・自己修養
《将来設計領域》………社会的役割遂行・社会認識・将来志向
・授業時数
1年~4年 70時間 5年~7年 105時間 8年~9年 105~140時間
・指導内容は5領域・15能力に見合った区独自の副読本を作成
・評価は文章表記で行う
④ステップアップ学習についての説明
・意義 基礎基本の定着と優れた能力を伸ばすことを目的とする
・学習の実際
ステップアップⅠ 5年~9年 各教科の横断的な基礎基本の定着を図る
ステップアップⅡ 8年・9年 生徒の実態にあわせ必修教科の補充学習と発展学習に分かれる
ステップアップⅢ 8年・9年 生徒自身が課題を設定・追求する課題学習を実施し、特定分野の能力や学ぶ力を伸長させる
課題に関係する教科担当が指導にあたり、学習計画作成・学習・中間報告・最終報告(論文・作品・実技発表など)を行う
6.品川区教育委員会 若月秀夫教育長の挨拶
品川区の教育改革のねらいは、教員自身の内部努力で教育が見捨てられる状況を阻止することにある。いくつかの地方で民間人校長が導入されている。そのことの是非をここで論ずるつもりはないが、品川区としては考えていない。民間の知恵に学ぶことは大切であるが、学校を変えていくのは最終的には教員の力でないとできない。
小中一貫教育を推進する背景は、いろいろあると思う。都市部や過疎地での統廃合がきっかけになっている地域もあると思う。品川の背景は、不登校やイジメで悩む子どもの現状を変えたいという意欲の現われだ。
教育界では中高一貫という流れもある。受験に便利なのだろうと思うが、「~に便利」という発想とは別に、小中という義務教育を高めることを品川では大切にしたい。
市民科について一言。教科指導と道徳指導は違う。教科指導はやれば力がつく。しかし道徳の授業をやれば道徳の力がつくかといえばそうではない。品川は今までの道徳を実りのあるものに変えるために、市民科に衣替えし計画的に子どもたちの市民としての力を身につけさそうと考えている。
みなさんのご批判により、更に品川の改革が実り多いものになることを願っている。
7.大崎地区日野学園建設現場視察
登下校中に子どもたちが被害にあう事件が続いている。そのため新たに建設される日野学園の通学路について現場を歩きながら調査を行った。
現日野中学は校区のほぼ中央にあり、第一日野小とは道を隔てて、校区の東端にある第二日野小からは直線距離で約1.2Km、西端にある第四日野小からは約500mの位置関係にある。
新しく建設される日野学園は東端にある日野第二小学校の校地に建てられるため、西端の第四日野小学校からは直線距離にして約1.4Km、途中に京浜急行・首都高速・JR山手線の三つの高架、の距離となる。更に、第四小学校の端にあたる西五反田4丁目周辺の子どもたちにとっては1.9Kmの通学距離となる。通学距離として妥当かどうか疑問である。
都心部の学校であるため、耕地面積は極端に狭く,半地下の温水プールと体育館の屋上が運動場になるという工夫を凝らし、狭い校地面積を立体的に使う工夫がされている。しかし、小中学生が広くはない同じ空間で生活する際の安全性確保が今後重要となると思われる。
2.場所 品川区立原小学校
品川区立日野学園建設現場(現日野第二小学校)
3.指定 内閣府 『構造改革特別区域研究開発校』指定
品川区教育委員会 研究学校
4.研究主題
小中学校9年間を一貫とした柔軟な教育課程の研究開発
「教養豊かで品格のある人間を育てる教育課程の編成に向けて」
5.品川区小中一貫教育取り組みの紹介
(1)品川区教育改革の概要
1998年 全小中学校での学校公開スタート
2000年 教育改革「プラン21」スタート
小学校での学校選択制導入
2001年 中学校での学校選択制導入
2002年 文部科学省の小中連携カリキュラム研究開発校の指定
外部評価者制度導入
学力定着度調査導入
2003年7月 構造改革特区小中一貫教育特区認定
2006年4月 品川区全小中学校で小中一貫教育を開始
品川区大崎地区で小中一貫校開校
2007年4月 品川区大井地区で小中一貫校開校
(2)品川区小中一貫教育のねらい
小・中学校間に存在する学力観や指導観、教育観の違いを是正し①子どもたちから学習上の負担を取り除くとともに②人間形成上の連続性をもたせる
特に小中学校の教職員の間に横たわる相互不信を払拭し、小中学校の文化の違いを埋めるため子どもたちの9年の成長を保障する場としての小中一貫校の開校に踏み切った
(3)品川区小中一貫教育の基本
①4-3-2のまとまりで教育課程を考える
1~4年 児童期前期 基礎・基本の定着を図る
5~7年 児童期後期 基礎・基本の徹底
8~9年 青年期 教科・内容の選択幅拡大と個人の個性・能力を十分に伸ばす
前半の1~4年は子どもと教師の信頼関係を築くことを大切にしながら基礎・基本の徹底に重点をおいた指導を行う
後半の5~9年は教科や学習内容の選択の幅を増やしたり、一人ひとりの学習の習熟状況に応じて学ぶ「ステップアップ学習」を導入
②小学校「英語科」の開設
単なる英語活動からの脱却
・ゲームや歌などで単に英語を「聞く」「話す」活動を楽しくしていていいのか
・小学校での指導材料の基準はどこにあるのか
・教育活動として取り組むなら評価が必要ではないか
↓
21世紀を生き抜くため国際的共通語としての英語のコミュニケーション能力を
身につけるための小学校英語科の開設
・授業時数 1年・2年…20時間 3年~6年…35時間
・指導者 担任+ALT(外国語指導助手)・ボランティア
・指導内容 コミュニケーション場面を設定し指導計画と評価基準を設定
区としてワークシート・カード・歌等の副教材を作成
・評価 1年~4年…所見 5年・6年…観点別所見記入
③市民科の開設
「人間らしい生き方を自覚」させ「自分自身の生きる道筋を発見するための教養」を身につけさせることを目標とする
その実現のために「社会の構成員としての役割を遂行できる資質・能力」と「確固たる自信をもち、自らを社会的に有為な存在として意識しながら生きていける」力をつけることが市民性であると考え、市民科を開設した
市民科は、今まで独自に取り組んできた「道徳」・「特別活動」・「行事」を否定するのではなく、それらを総合的に取り組むものである
・市民科の領域と身に付けさせる能力(5領域・15能力)
《自己管理領域》………自己管理・生活適応・責任遂行
《人間関係形成領域》…集団適応・自他理解・コミュニケーション
《自治的活動領域》……自治活動・道徳実践・社会的判断行動
《文化創造領域》………文化活動・企画表現・自己修養
《将来設計領域》………社会的役割遂行・社会認識・将来志向
・授業時数
1年~4年 70時間 5年~7年 105時間 8年~9年 105~140時間
・指導内容は5領域・15能力に見合った区独自の副読本を作成
・評価は文章表記で行う
④ステップアップ学習についての説明
・意義 基礎基本の定着と優れた能力を伸ばすことを目的とする
・学習の実際
ステップアップⅠ 5年~9年 各教科の横断的な基礎基本の定着を図る
ステップアップⅡ 8年・9年 生徒の実態にあわせ必修教科の補充学習と発展学習に分かれる
ステップアップⅢ 8年・9年 生徒自身が課題を設定・追求する課題学習を実施し、特定分野の能力や学ぶ力を伸長させる
課題に関係する教科担当が指導にあたり、学習計画作成・学習・中間報告・最終報告(論文・作品・実技発表など)を行う
6.品川区教育委員会 若月秀夫教育長の挨拶
品川区の教育改革のねらいは、教員自身の内部努力で教育が見捨てられる状況を阻止することにある。いくつかの地方で民間人校長が導入されている。そのことの是非をここで論ずるつもりはないが、品川区としては考えていない。民間の知恵に学ぶことは大切であるが、学校を変えていくのは最終的には教員の力でないとできない。
小中一貫教育を推進する背景は、いろいろあると思う。都市部や過疎地での統廃合がきっかけになっている地域もあると思う。品川の背景は、不登校やイジメで悩む子どもの現状を変えたいという意欲の現われだ。
教育界では中高一貫という流れもある。受験に便利なのだろうと思うが、「~に便利」という発想とは別に、小中という義務教育を高めることを品川では大切にしたい。
市民科について一言。教科指導と道徳指導は違う。教科指導はやれば力がつく。しかし道徳の授業をやれば道徳の力がつくかといえばそうではない。品川は今までの道徳を実りのあるものに変えるために、市民科に衣替えし計画的に子どもたちの市民としての力を身につけさそうと考えている。
みなさんのご批判により、更に品川の改革が実り多いものになることを願っている。
7.大崎地区日野学園建設現場視察
登下校中に子どもたちが被害にあう事件が続いている。そのため新たに建設される日野学園の通学路について現場を歩きながら調査を行った。
現日野中学は校区のほぼ中央にあり、第一日野小とは道を隔てて、校区の東端にある第二日野小からは直線距離で約1.2Km、西端にある第四日野小からは約500mの位置関係にある。
新しく建設される日野学園は東端にある日野第二小学校の校地に建てられるため、西端の第四日野小学校からは直線距離にして約1.4Km、途中に京浜急行・首都高速・JR山手線の三つの高架、の距離となる。更に、第四小学校の端にあたる西五反田4丁目周辺の子どもたちにとっては1.9Kmの通学距離となる。通学距離として妥当かどうか疑問である。
都心部の学校であるため、耕地面積は極端に狭く,半地下の温水プールと体育館の屋上が運動場になるという工夫を凝らし、狭い校地面積を立体的に使う工夫がされている。しかし、小中学生が広くはない同じ空間で生活する際の安全性確保が今後重要となると思われる。