第1部 地球と上帝(オーバーロード):地球総督カレルレンの支配がはじまる
A ストルムグレン国連事務総長のみが、上帝(オーバーロード)と会うことが出来る。
B 宇宙人であるオーバーロードの宇宙艦隊が地球に飛来。地球総督カレルレンが戦争禁止、世界連邦創設を命令する。
B-2 カレルレンは全知全能。ミサイル攻撃を受けても宇宙艦隊は無傷。そして不思議なことに、宇宙船からの反撃がない。
B-3 人種対立の南アでは、カレルレンが、警告のため太陽を消し去り、対立を終了させる。
C 地球総督カレルレンは、その命令を、国連事務総長ストルムグレンを通じてのみ行う。
C-2 上帝(オーバーロード)の宇宙艦隊が飛来して、すでに5年。
C-3 「オーバーロードは人類に、安寧と平和と繁栄をもたらした」とストルムグレン国連事務総長。
C-4 人類は、上帝(オーバーロード)カレルレンの、表面に現れない支配に慣れる。
D だが地球総督カレルレンの意図が分からない。オーバーロードの秘密主義。
E 自由連盟ほか、地球独立のための抵抗運動者あり。
F 地球総督カレルレンら上帝(オーバーロード)たちは、人類の前に姿を見せない。「今から2世代後、50年経ったら人類の前に姿を現す」とカレルレン。
F-2 50年経てば、人類は、独立の時代があったことを忘れてしまうだろう。
G 30年後、ストルムグレン国連事務総長、すでに60歳。
第2部 黄金時代:50年後、上帝(オーバーロード)の支配で地球はユートピアとなり、無知、疾病、貧困、戦争はない
A 50年後、カレルレンの宇宙船が地上に降下。地球総督カレルレンたち上帝(オーバーロード)は、悪魔の姿だった。
A-2 巨大な多数の宇宙船団は、1機を除き、実は幻影だった。
B 上帝(オーバーロード)の支配で、地球は今やユートピア。無知、疾病、貧困、戦争はない。オーバーロードの圧倒的な科学力。
B-2 無人工場化で、週20時間労働。人は贅沢したい場合にのみ、働く。生活必需品は無料。
B-3 世界は単一国家。国名はいわば、郵便配達上の住所にすぎない。
B-4 犯罪は、オーバーロードの監視により、なくなる。
B-5 28歳まで、大学で、無償で勉強できる。
B-6 飛行機で世界中に自由に行ける。海底でも、どこでも住める。
第2部-2 大学生ジャン(27歳)が、40光年先の恒星=オーバーロードの故郷の恒星へ行く
C ルーパート・ボイス:魔術・心霊研究・易学・精神感応・超物理学関係の図書1万5千冊(ボイス・コレクション)を持つ。
C-2 オーバーロードのラシャヴェラクが、心霊研究のボイス・コレクションを読みにやって来る。
C-3 ジーン・モレルはテレパシー、透視能力に興味を持つ。彼女は、ジョージ・グレッグスンと結婚するが、ジョージは懐疑主義者。
D ルーパート・ボイスが、心霊現象の実験をした時、数学・物理学専攻の大学生ジャン(27歳)が、「オーバーロードの母星は?」と質問すると「NGS569472」との答えが出る。
D-2 NGS569472は、心霊実験のいい加減な答えでなく、現実に存在する恒星であると、ジャンは確かめる。40光年先の恒星。オーバーロードの故郷の恒星。
D-3 ジャンは、オーバーロードの宇宙船に潜り込み、オーバーロードの故郷の恒星NGS569472に行く。
D-4 宇宙船は光速に近い時間で航行する。光速に近づくと、時間が遅く経過する。宇宙船内で2か月、地球上で40年経過すると、宇宙船はオーバーロードの故郷NGS569472につく。往復の宇宙船内で、ジャンにとっては4か月だが、地球上では80年経過。
E オーバーロードがもたらした「豊かな社会」のもとでの不安。「我々はこの先、どこに行くのだろうか?」
第3部 最後の世代:「素質者0号」としてオーバーロードに監視される子どもジェフ(10年後)
A ジョージ・グレッグスンと妻ジーンは、息子ジェフ、娘ジェニファーとともに芸術家・科学者の村ニュー・アテネに移住する。
A-2 ニュー・アテネは、島に建設された芸術家・科学者の村である。彼らは、知的独立・芸術的独立を目指す。豊かさの中で娯楽化する生活に対する批判、人間の自主性の確保、人間の魂の破壊や芸術の衰退の防護などを目的とするコミュニティ。人口5万人。
B ある日、大地震が起き大津波に会うが、10歳のジェフは、オーバーロードによって助けられる。オーバーロードがジェフを監視していた。
C ジェフは「素質者0号」として、オーバーロードによって監視される。
C-2 「『突破』(ブレイクスルー)がやがて起きる」と、オーバーロードが言う。
第3部-2 ジェフが夢を見る:彼はついに銀河系を出た!
D ジェフが夢を見る。ジェフの夢1:山全体が青い炎で燃える。青い大きな太陽。「アルファニドン第2惑星だ」とオーバーロードのラシャヴェラクとカレルレンが確認。
D-2 ジェフの夢2:「脈動変光星の夢だ」とラシャヴェラク。「彼は次第に地球から離れつつある」とカレルレン。
D-3 ジェフの夢3:「シデニュウス第4惑星と〈あかつきの柱〉だ。宇宙の中心部に達した。」とラシャヴェラクが言う。
D-4 ジェフの夢4:「ヘクキネラックス第2惑星」の夢。すさまじい重力の世界。生物がいるが、厚さは数ミリしかない。「我々の宇宙船で、この星まで達したのは数えるほどしかない」とラシャヴェラク。極めて遠方の惑星。
D-5 ジェフの夢5:太陽が6個の惑星。知的生物としての多面性の水晶。「この惑星の記録はない」とラシャヴェラク。「彼はついに銀河系を出た」とカレルレン。「『あれ』も、それほど遠いことではありますまい」とラシャヴェラクが言う。
第3部-3 オーバーマインド(上霊)が、人類の子供たちに、精神のメタモルフォーゼを命じた。
E ジョージとジーンの子供、つまり兄ジェフと妹ジェニファーを、オーバーロードが庇護する。
E-2 寝ている赤ん坊のジェニファーの周りを、ガラガラが空間に浮いて、鳴り続ける。
E-3 「〈全面突破〉Total Breakthrough が始まる。これを我々は待っていた。」「ミス・モレル(=ジーン)の生む子供こそ、その最初の人物となる。」とラシャヴェラクが言う。
F 「空間と時間を超越した不思議な力」を持った人類の誕生。
F-2 個々人の心は、いわば島で離れているように見えるが、実は海底の岩層でつながっている。精神感応が起きる。
F-3 こうした力を持つ宇宙の種族こそが、主人である。
F-4 オーバーロードは、彼らに仕え、新たな人類の誕生の産婆役をつとめる。
G 「ジェフとジェニファーが、あなた方のものであるのは、もう、そう長いことではない」とラシャヴェラクが、ジョージとジーンに言う。
H 寝ている赤ん坊のジェニファーは、物体を支配する。周囲の物体を移動させ、栄養を摂取する。
H-2 ジェフは、個性を失い、ジェフでなくなりつつあった。
H-3 ジェフとジェニファーが変態(メタモルフォーゼ)の最初。伝染病のように、変態(メタモルフォーゼ)が10歳以下の全人類に波及する。
H-4 残された人類は、未来=子供たちを、すべて失った。
I 宇宙には、科学に説明できない力がある。宇宙の最上位の力、オーバーマインド(上霊)。
I-2 地球人の変態(メタモルフォーゼ)の用意を、オーバーマインド(上霊)が、オーバーロードに命じた。
I-3 オーバーマインドが、人類の子供たちに、精神のメタモルフォーゼを、もたらした=命じた。
J オーバーロードは、子どもたちが両親によって殺されないよう、子どもたちを連れ去り隔離する。
J-2 「我々、オーバーロードより、はるかに偉大な力が目覚めつつある。」「新人類として生き残る地球の種族を、われわれはうらやむ。」と、オーバーロードの地球総督カレルレンが言う。
K 彼ら新人類に、孤独を経験する個なるものは、ない。
第3部-4 ジャンが地球に帰還する:オーバーロードの宇宙船で密航してから80年後
L オーバーロードの地球総督カレルレンが、帰還したジャンに、ビデオを見せる。
L-2 第1段階(最初の5年間):70年前、「素質者0号」のジェフとジェニファーが、人類の変態(メタモルフォーゼ)を開始する。それが伝染病のように、10歳以下の全人類に波及する。オーバーロード(上帝)は、彼らを、両親たちによる攻撃から守るため、集め、大陸を一つ彼らに与える。
L-3 第2段階(5年後):彼らはもはや、個性を持たない。空虚な顔。眠らず、統一された様式で1年近く動き回る:〈長い踊り〉。やがてオーバーマインド(上霊)は、彼らを自己の存在の中に、吸収するだろう。彼らは、食物からでなく、深淵な源泉から、エネルギーを受け取る。
L-4 第3段階(さらに3年後):子供たちは皆、目をつぶって立っている。あらゆる霊が邪魔なので、植物も動物も消滅する。そして彼らはただ立ち尽くしている。やがて、彼らは物質世界そのものを邪魔と思い消滅させるだろう。
M オーバーロード(上帝)は一方の道の果て。個性ある「私」と名乗るような存在。しかし袋小路。
M-2 もう一方の道の果てが、オーバーマインド(上霊)。
M-3 オーバーロードは、オーバーマインドの下僕として、共生する。
M-4 「神化へ向かうために、オーバーロードが見守り育てた五番目の宇宙種族が、地球人類である」とカレルレンが言う。
第3部-5 人類の変態の第4段階(ジャンが地球に帰還して6年後、つまり人類の変態の第1段階開始から76年後):変態(メタモルフォーゼ)を開始した子供たちがついに火柱となってオーバーマインドと合体する
N 76年前、子供たちの変態(メタモルフォーゼ)が始まり、親の世代は、生きていても、ほとんど90歳台後半以上。ジャンは33歳だから、最後の人類となるだろう。
N-2 変態を開始した子供たちが、いたずらをし、月が自転を始める。「太陽にも、いたずらすると危険だ」と、オーバーロードは、地球を去る。
N-3 変態を開始した子供たちは、地球の回転も、自在に扱うことが出来る。地震が起きる。
N-4 子供たちが、オーバーマインドの一部となるため、巨大な火柱となって上に伸びてゆく。
N-5 重力に異変が起こり、鉛筆がゆっくり落ち、大気が逃げていく。ジャンは息苦しくなってゆく。
N-6 地球は爆発し、消滅する。
O 偉大なもの、征服しえない力、すなわちオーバーマインド(上霊)から、永遠に遠ざけられている種族(オーバーロード)の悲哀を、カレルレンは知る。
O-2 「我々はこれだけ、物質世界を支配する力を持つのに、未開種族と変わらない卑小な存在だ」とカレルレン。
O-3 だがカレルレンは絶望しない。彼らオーバーロードは、オーバーマインド(上霊)に奉仕するが、絶望しない。待ち続ける。彼らが、オーバーマインド(上霊)から選ばれる日まで。
《評者の感想》
① これは、人類の物語でない。神の物語である。神が、救済される者たちを、選ぶ。新人類(ジェフを「素質者0号」とする人類の子供たちすべて)は神によって選ばれ、永遠の宇宙=神=オーバーマインド(上霊)と一体化した。(すなわち〈全面突破〉が起きた。)
② 物語の主人公は、オーバーロード(上帝)の地球総督カレルレンである。カレルレンにとって、ストルムグレン国連事務総長も、若い学生ジャンも、道具である。だがカレルレンの道具でない。神の道具である。カレルレン自身が、神の道具である。
③ SFの姿をとった神の物語を、著者は書いた。
④ ここで語られる永遠の宇宙=神=オーバーマインド(上霊)とは、存在一般、あるいは無規定の有( Sein )である。そして存在一般、あるいは無規定の有( Sein )が、それ自身謎である。なぜ、そのようなものがあるのか、それ自身謎である。神秘主義は、ここに理由がある。
⑤ カレルレンたち、オーバーロード(上帝)が、悪魔の姿を取るのは、悪魔が堕天使だからである。カレルレンたちは、神の世界に属したい、つまり天使になりたいのに、神に選ばれない。いわば堕天使である。彼らは、本質において、悪魔である。
A ストルムグレン国連事務総長のみが、上帝(オーバーロード)と会うことが出来る。
B 宇宙人であるオーバーロードの宇宙艦隊が地球に飛来。地球総督カレルレンが戦争禁止、世界連邦創設を命令する。
B-2 カレルレンは全知全能。ミサイル攻撃を受けても宇宙艦隊は無傷。そして不思議なことに、宇宙船からの反撃がない。
B-3 人種対立の南アでは、カレルレンが、警告のため太陽を消し去り、対立を終了させる。
C 地球総督カレルレンは、その命令を、国連事務総長ストルムグレンを通じてのみ行う。
C-2 上帝(オーバーロード)の宇宙艦隊が飛来して、すでに5年。
C-3 「オーバーロードは人類に、安寧と平和と繁栄をもたらした」とストルムグレン国連事務総長。
C-4 人類は、上帝(オーバーロード)カレルレンの、表面に現れない支配に慣れる。
D だが地球総督カレルレンの意図が分からない。オーバーロードの秘密主義。
E 自由連盟ほか、地球独立のための抵抗運動者あり。
F 地球総督カレルレンら上帝(オーバーロード)たちは、人類の前に姿を見せない。「今から2世代後、50年経ったら人類の前に姿を現す」とカレルレン。
F-2 50年経てば、人類は、独立の時代があったことを忘れてしまうだろう。
G 30年後、ストルムグレン国連事務総長、すでに60歳。
第2部 黄金時代:50年後、上帝(オーバーロード)の支配で地球はユートピアとなり、無知、疾病、貧困、戦争はない
A 50年後、カレルレンの宇宙船が地上に降下。地球総督カレルレンたち上帝(オーバーロード)は、悪魔の姿だった。
A-2 巨大な多数の宇宙船団は、1機を除き、実は幻影だった。
B 上帝(オーバーロード)の支配で、地球は今やユートピア。無知、疾病、貧困、戦争はない。オーバーロードの圧倒的な科学力。
B-2 無人工場化で、週20時間労働。人は贅沢したい場合にのみ、働く。生活必需品は無料。
B-3 世界は単一国家。国名はいわば、郵便配達上の住所にすぎない。
B-4 犯罪は、オーバーロードの監視により、なくなる。
B-5 28歳まで、大学で、無償で勉強できる。
B-6 飛行機で世界中に自由に行ける。海底でも、どこでも住める。
第2部-2 大学生ジャン(27歳)が、40光年先の恒星=オーバーロードの故郷の恒星へ行く
C ルーパート・ボイス:魔術・心霊研究・易学・精神感応・超物理学関係の図書1万5千冊(ボイス・コレクション)を持つ。
C-2 オーバーロードのラシャヴェラクが、心霊研究のボイス・コレクションを読みにやって来る。
C-3 ジーン・モレルはテレパシー、透視能力に興味を持つ。彼女は、ジョージ・グレッグスンと結婚するが、ジョージは懐疑主義者。
D ルーパート・ボイスが、心霊現象の実験をした時、数学・物理学専攻の大学生ジャン(27歳)が、「オーバーロードの母星は?」と質問すると「NGS569472」との答えが出る。
D-2 NGS569472は、心霊実験のいい加減な答えでなく、現実に存在する恒星であると、ジャンは確かめる。40光年先の恒星。オーバーロードの故郷の恒星。
D-3 ジャンは、オーバーロードの宇宙船に潜り込み、オーバーロードの故郷の恒星NGS569472に行く。
D-4 宇宙船は光速に近い時間で航行する。光速に近づくと、時間が遅く経過する。宇宙船内で2か月、地球上で40年経過すると、宇宙船はオーバーロードの故郷NGS569472につく。往復の宇宙船内で、ジャンにとっては4か月だが、地球上では80年経過。
E オーバーロードがもたらした「豊かな社会」のもとでの不安。「我々はこの先、どこに行くのだろうか?」
第3部 最後の世代:「素質者0号」としてオーバーロードに監視される子どもジェフ(10年後)
A ジョージ・グレッグスンと妻ジーンは、息子ジェフ、娘ジェニファーとともに芸術家・科学者の村ニュー・アテネに移住する。
A-2 ニュー・アテネは、島に建設された芸術家・科学者の村である。彼らは、知的独立・芸術的独立を目指す。豊かさの中で娯楽化する生活に対する批判、人間の自主性の確保、人間の魂の破壊や芸術の衰退の防護などを目的とするコミュニティ。人口5万人。
B ある日、大地震が起き大津波に会うが、10歳のジェフは、オーバーロードによって助けられる。オーバーロードがジェフを監視していた。
C ジェフは「素質者0号」として、オーバーロードによって監視される。
C-2 「『突破』(ブレイクスルー)がやがて起きる」と、オーバーロードが言う。
第3部-2 ジェフが夢を見る:彼はついに銀河系を出た!
D ジェフが夢を見る。ジェフの夢1:山全体が青い炎で燃える。青い大きな太陽。「アルファニドン第2惑星だ」とオーバーロードのラシャヴェラクとカレルレンが確認。
D-2 ジェフの夢2:「脈動変光星の夢だ」とラシャヴェラク。「彼は次第に地球から離れつつある」とカレルレン。
D-3 ジェフの夢3:「シデニュウス第4惑星と〈あかつきの柱〉だ。宇宙の中心部に達した。」とラシャヴェラクが言う。
D-4 ジェフの夢4:「ヘクキネラックス第2惑星」の夢。すさまじい重力の世界。生物がいるが、厚さは数ミリしかない。「我々の宇宙船で、この星まで達したのは数えるほどしかない」とラシャヴェラク。極めて遠方の惑星。
D-5 ジェフの夢5:太陽が6個の惑星。知的生物としての多面性の水晶。「この惑星の記録はない」とラシャヴェラク。「彼はついに銀河系を出た」とカレルレン。「『あれ』も、それほど遠いことではありますまい」とラシャヴェラクが言う。
第3部-3 オーバーマインド(上霊)が、人類の子供たちに、精神のメタモルフォーゼを命じた。
E ジョージとジーンの子供、つまり兄ジェフと妹ジェニファーを、オーバーロードが庇護する。
E-2 寝ている赤ん坊のジェニファーの周りを、ガラガラが空間に浮いて、鳴り続ける。
E-3 「〈全面突破〉Total Breakthrough が始まる。これを我々は待っていた。」「ミス・モレル(=ジーン)の生む子供こそ、その最初の人物となる。」とラシャヴェラクが言う。
F 「空間と時間を超越した不思議な力」を持った人類の誕生。
F-2 個々人の心は、いわば島で離れているように見えるが、実は海底の岩層でつながっている。精神感応が起きる。
F-3 こうした力を持つ宇宙の種族こそが、主人である。
F-4 オーバーロードは、彼らに仕え、新たな人類の誕生の産婆役をつとめる。
G 「ジェフとジェニファーが、あなた方のものであるのは、もう、そう長いことではない」とラシャヴェラクが、ジョージとジーンに言う。
H 寝ている赤ん坊のジェニファーは、物体を支配する。周囲の物体を移動させ、栄養を摂取する。
H-2 ジェフは、個性を失い、ジェフでなくなりつつあった。
H-3 ジェフとジェニファーが変態(メタモルフォーゼ)の最初。伝染病のように、変態(メタモルフォーゼ)が10歳以下の全人類に波及する。
H-4 残された人類は、未来=子供たちを、すべて失った。
I 宇宙には、科学に説明できない力がある。宇宙の最上位の力、オーバーマインド(上霊)。
I-2 地球人の変態(メタモルフォーゼ)の用意を、オーバーマインド(上霊)が、オーバーロードに命じた。
I-3 オーバーマインドが、人類の子供たちに、精神のメタモルフォーゼを、もたらした=命じた。
J オーバーロードは、子どもたちが両親によって殺されないよう、子どもたちを連れ去り隔離する。
J-2 「我々、オーバーロードより、はるかに偉大な力が目覚めつつある。」「新人類として生き残る地球の種族を、われわれはうらやむ。」と、オーバーロードの地球総督カレルレンが言う。
K 彼ら新人類に、孤独を経験する個なるものは、ない。
第3部-4 ジャンが地球に帰還する:オーバーロードの宇宙船で密航してから80年後
L オーバーロードの地球総督カレルレンが、帰還したジャンに、ビデオを見せる。
L-2 第1段階(最初の5年間):70年前、「素質者0号」のジェフとジェニファーが、人類の変態(メタモルフォーゼ)を開始する。それが伝染病のように、10歳以下の全人類に波及する。オーバーロード(上帝)は、彼らを、両親たちによる攻撃から守るため、集め、大陸を一つ彼らに与える。
L-3 第2段階(5年後):彼らはもはや、個性を持たない。空虚な顔。眠らず、統一された様式で1年近く動き回る:〈長い踊り〉。やがてオーバーマインド(上霊)は、彼らを自己の存在の中に、吸収するだろう。彼らは、食物からでなく、深淵な源泉から、エネルギーを受け取る。
L-4 第3段階(さらに3年後):子供たちは皆、目をつぶって立っている。あらゆる霊が邪魔なので、植物も動物も消滅する。そして彼らはただ立ち尽くしている。やがて、彼らは物質世界そのものを邪魔と思い消滅させるだろう。
M オーバーロード(上帝)は一方の道の果て。個性ある「私」と名乗るような存在。しかし袋小路。
M-2 もう一方の道の果てが、オーバーマインド(上霊)。
M-3 オーバーロードは、オーバーマインドの下僕として、共生する。
M-4 「神化へ向かうために、オーバーロードが見守り育てた五番目の宇宙種族が、地球人類である」とカレルレンが言う。
第3部-5 人類の変態の第4段階(ジャンが地球に帰還して6年後、つまり人類の変態の第1段階開始から76年後):変態(メタモルフォーゼ)を開始した子供たちがついに火柱となってオーバーマインドと合体する
N 76年前、子供たちの変態(メタモルフォーゼ)が始まり、親の世代は、生きていても、ほとんど90歳台後半以上。ジャンは33歳だから、最後の人類となるだろう。
N-2 変態を開始した子供たちが、いたずらをし、月が自転を始める。「太陽にも、いたずらすると危険だ」と、オーバーロードは、地球を去る。
N-3 変態を開始した子供たちは、地球の回転も、自在に扱うことが出来る。地震が起きる。
N-4 子供たちが、オーバーマインドの一部となるため、巨大な火柱となって上に伸びてゆく。
N-5 重力に異変が起こり、鉛筆がゆっくり落ち、大気が逃げていく。ジャンは息苦しくなってゆく。
N-6 地球は爆発し、消滅する。
O 偉大なもの、征服しえない力、すなわちオーバーマインド(上霊)から、永遠に遠ざけられている種族(オーバーロード)の悲哀を、カレルレンは知る。
O-2 「我々はこれだけ、物質世界を支配する力を持つのに、未開種族と変わらない卑小な存在だ」とカレルレン。
O-3 だがカレルレンは絶望しない。彼らオーバーロードは、オーバーマインド(上霊)に奉仕するが、絶望しない。待ち続ける。彼らが、オーバーマインド(上霊)から選ばれる日まで。
《評者の感想》
① これは、人類の物語でない。神の物語である。神が、救済される者たちを、選ぶ。新人類(ジェフを「素質者0号」とする人類の子供たちすべて)は神によって選ばれ、永遠の宇宙=神=オーバーマインド(上霊)と一体化した。(すなわち〈全面突破〉が起きた。)
② 物語の主人公は、オーバーロード(上帝)の地球総督カレルレンである。カレルレンにとって、ストルムグレン国連事務総長も、若い学生ジャンも、道具である。だがカレルレンの道具でない。神の道具である。カレルレン自身が、神の道具である。
③ SFの姿をとった神の物語を、著者は書いた。
④ ここで語られる永遠の宇宙=神=オーバーマインド(上霊)とは、存在一般、あるいは無規定の有( Sein )である。そして存在一般、あるいは無規定の有( Sein )が、それ自身謎である。なぜ、そのようなものがあるのか、それ自身謎である。神秘主義は、ここに理由がある。
⑤ カレルレンたち、オーバーロード(上帝)が、悪魔の姿を取るのは、悪魔が堕天使だからである。カレルレンたちは、神の世界に属したい、つまり天使になりたいのに、神に選ばれない。いわば堕天使である。彼らは、本質において、悪魔である。