宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

瀬戸内寂聴(1922-)「むなしさについて」『寂庵説法』(1985年、63歳)所収:2017年、15~39歳の各年代の死因の第1位は「自殺」だ!

2018-09-13 22:47:30 | Weblog
瀬戸内寂聴『寂庵説法』の13の説法のうち、興味深かった説法「むなしさについて」をまとめた。

A 「人生なんてどうせ、生れて死ぬだけじゃないか、努力して何かになったところでしれてる。ああつまんない。」こういう「投げやりな虚無的な考え方」が若い人に時々ある。これは「しらける」と呼ばれる。

《感想1》まさしく、これが今の老年の君だ。君は若くなく「虚無的」だ。だが、もちろん真面目に生きている。日常生活は普通に滞りなく処理するし、他者とも何とか付き合う。だが、君は「どうせ、生れて死ぬだけじゃないか」と秘かに思う。
《感想2》ところで、この『説法』が書かれたのは1985年で、まだ非正規雇用が広がっていないし、正規雇用者の終身雇用制度も壊れていない。今(2018年)は、非正規雇用が広がり、終身雇用制度も壊れた。かくて若い人はしばしば「しらける」余裕がない。ともかく食べていかねばならない。若い人に、厳しい時代になった。将来の人生設計・見通しが大変だ。非正規雇用では「努力して何かになる」のが、まず大変だ。今は、「搾取」の時代だ。

B 若い人たちが、何かあるとお決まりのように、「自分は生れたくて生まれたんじゃない、両親が勝手に好きなことして生まれたんだから、責任とってくれよ。」と言う。これに対し、今東光師(寂聴氏の師)なら、「じゃ手めえたち、すぐ、死んじまえ。」「生きてることを有り難がらないでべんべんと生きてる野郎は、ゴクつぶしというんだ。もったいないから死んでしまえ。」と怒鳴るだろう。そう寂聴氏が言う。

《感想1》今東光師の言葉は、至極もっともだ。生きたくないなら「すぐ、死んじまえ」ばいい。これが、甘えた若者の言葉なら、その通りだ。
《関雄2》だが自殺する若者が多い。2017年、15~39歳の各年代の死因の第1位は「自殺」。特に高いは20~24歳が48.1%、25~29歳が47.0%でほぼ5割だ。15~34歳で死因の第1位が自殺となっているのは主要7先進国では日本のみだ。
《感想3》もちろん《死ぬのが怖い》ので、あるいは《生きたい》ので、自分から死なない人が多い。

C 寂聴氏が言う。「私は自分の才能の可能性を試したいばっかりに、家庭を破壊し、子供を捨て、自分の欲望に生き」た。そしてついに私は、めざす「小説家」になった。ほしいものがすべて手に入り、私は「むなしさになげこまれている自分を発見した」。
C-2 名声とか、お金とか、地位とか、「人間の欲望は果てしもなく、それを満たすためには手段を選ばない。」
C-3 私は欲望の「鬼」だった。あるいは「餓鬼」だった。また全力を傾けたつもりだった仕事も、満足できなかった。マンネリズムで、このまま書き続けてもしょうがない。私は「虚無の淵」を見た。(この時、寂聴氏は51歳。)

《感想》寂聴氏と異なり、他方、残念ながら君の場合は、「ほしいものがすべて手に入る」など全くなかった。今や君は、欲望の鬼であり続ける元気もなくなり、諦め絶望して、「虚無の淵」を見る。

D 「むなしさ」に陥った寂聴氏は、本気で自殺を考えた。だが「ある日突然、死ぬ気なら何だって出来るという心の底の誰かの声を聞」く。そして幾日かが過ぎた時、不意に「出家という道がある」と「何か」が囁く。
D-2 この「誰か」あるいは「何か」とは、「超越者」の声、つまり「仏」の声だった。
D-2 寂聴氏は、今東光師に出家を許され、中尊寺で得度の式をあげた。「私は、中尊寺の仏の前で、それまで51年生きてきた瀬戸内晴美という女を殺し、寂聴という尼僧として、この世にもう一度再生したのでした。」

《感想1》寂聴氏の次の言葉が印象的だ。「死ぬまで私には悟りなど得られないことでしょう。それでいいのです。私はもう、すべてを仏の御心のままにゆだねきっているので、実に楽で平安な気持ちでいます。有り難いことだと感謝せずにはいられません。」
《感想2》彼女のこの平安さは、小説家として「自分の生活くらいまかなえるだろう」との経済的保障への確信が秘かな前提だ。
《感想3》経済的にひどく難渋していれば、もしかしたら君は「仏」を恨むかもしれない。

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烏賀陽(ウガヤ)正弘(1932-)『世の中の仕組みが分かる 超「〇〇(マルマル)の法則」辞典』(2016年)

2018-09-13 10:18:40 | Weblog
第1章「企業と組織」の12法則、第2章「数字と確率」の14法則、第3章「人生」の13法則、第4章「人間社会」の11法則より、以下(1)~(9)の法則について紹介・コメントする。

(1)「マシュマロの法則」:社会的成功には「自制心」が重要!
「自制心」が強い子供ほど、後に成功するという法則。4歳の子供186人の実験で、机の上の皿にマシュマロ1個を載せ、「15分の間、食べるのを我慢したらマシュマロをもう1つあげる、食べたら2つ目はないよ」と言って部屋を出る。マシュマロを食べなかった(「自制心」がある)子供は、約1/3。そして10数年後、1988年の追跡調査で、大学進学適性試験(SAT)のスコア(計2400ポイント)が彼ら「自制心」がある子供は210ポイント、他の子供より高い。2011年の追跡調査でも、彼らの社会的成功度が高かった。

《感想》「自制心」つまり忍耐強さが、社会的成功に役立つことは予想がつく。これを実験的に証明した点がすごい。

(2)「YAGNI(ヤグニ)の法則」:今、最も重要なことが何かを選び定め、それに集中する!
ソフトウェア開発の手法。"You ain't gonna need it". 「そんなものは必要ないさ!」つまり「本当に必要かどうか分からないようなものをあれこれ考えすぎて設計・実装したりしない!」

《感想》日常生活では、例えば、将来のためと思ってあらかじめ物を買っても、結局持て余してしまうことが多い。人生に応用すれば、今、最も重要なことが何かを選び定め、それに集中するのが最良だ。

(3)「割れ窓の法則」:割れた窓を放っておくと犯罪が拡大する!
軽微な犯罪を徹底的に取り締まると、凶悪犯罪を抑止できる。Ex. 割れた窓を放っておくと、やがてさらに窓を割る・落書きする・放火する・不法占拠して犯罪の温床となると連鎖する。1994年NYジュリアーニ市長が「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策を実践し、警官にSTOP-AND-FRISK(停止&身体検査)を認め、治安回復させた。

《感想1》だがNY警察のSTOP-AND-FRISKは人種差別的だと批判された。「職務質問」に「身体検査」を加えたものだ。2013年に連邦地裁が違憲判決。日本の昔の「おいこら警察」だ。
《感想2》むしろ、この割れ窓の法則は、子どもに対する生活指導にあてはまる。普段から子供を丁寧に観察、注意、アドバイスすることが大事だ。

(4)「コベットの法則」:美しさは皮一枚だけのことだ!
1829年に英国のWilliam Cobbetが述べた。 “Beauty is only skin deep.” 見た目の美しさは、表面の皮一枚だけだ。大切なのは、皮の下の中身を見抜くこと!

《感想1》それは、そうだが、女性の場合、「容姿端麗」は社会的上昇の武器だ。
《感想2》そもそも昔から、女性は美しさが称揚された。ニニギノミコトは美しい木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)と結婚したが醜い姉の磐長姫(イワナガヒメ)は実家に帰してしまった。『竹取物語』のかぐや姫も美しい。
《感想3》真善美と、美が永遠の価値の一つとされるのだから、表面の皮一枚の見た目の女の美しさに騙され、その下の中身を見抜けない男が、たくさんいるのは必然だ。

(5)「ビル・ゲイツの法則」:難題は怠け者に任せろ!
マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツが、「怠け者は、もっとも簡単な方策を見つけるから、難題は怠け者に任せる」との方針をとった。

《感想》
ここで言う「怠け者」とは、怠けるために様々な工夫や手段を考える者だ。「怠け者」は便利さを追求する。そもそも売れる商品とは便利な商品だ。物質文明とは、「怠け者」の文明である。また消費者の本質は「怠け者」だ。

(6)「チェンバースの法則」:大きい企業が勝つのでない、速い企業が勝つのだ!
世界最大のコンピューター・ネットワーク機器開発会社、シスコシステムズ社の会長John Chambers が述べた。

《感想1》もちろん資金は企業にとって不可欠だ。だが豊富な資金力があるだけでは、大企業だからといって競争に勝てない。
《感想2》中小企業でも、速い企業は勝てる。ここで「速い」とは企業が、IT化、インターネット化することだ。「速い企業」でないと勝利できない、は生き残っていけないのは、現代の常識だ。

(7)「シャチの法則」:シャチの追跡調査で、経験豊富な更年期のメスがリーダーとなるとわかった!
2001-09年間のシャチの追跡調査で、「経験豊富な更年期のメスがリーダーとなり、エサになる鮭のいる場所へ誘導する」ことが明らかになった。更年期のメスのシャチは、生殖能力が低下するが、進行方向の判別能力や危険察知能力が高い。人間でも経験豊富な年配の女性が長年培(ツチカ)った知恵で、リーダーになってもおかしくない。Ex. ドイツのメルケル首相、イギリスのサッチャー首相。なおドイツは2016年初め、大手企業役員の30%に女性登用することを法的に義務付けた。割当(クオータ)制である。

《感想》日本の女性も頑張ってほしい。「かわいい」「けなげ」「美人」だけで女性を評価するような男に従うことはない。

(8)「日本商社の交渉の法則」:「イン・パキ・レバ・シリ」の商人は駆け引きに強いから注意せよ!
インド、パキスタン、レバノン、シリア、さらに最近ではイラン、イラクの商人は、駆け引きがうまい。彼らは、相手の出方、弱点、強味、また状況を的確に把握し、交渉・談判を進める。彼らにとって駆け引きは、悪意に満ち、だますための手段でない。彼らにとって、そもそも世渡りが駆け引きなのだ。

《感想》「世渡りは駆け引きだ」とは商人の国の発想だ。商売は戦争でない。商売における「駆け引き」は、平和的だ。だから「駆け引き」をあまり悪く言ってはいけない。もちろん権力を背景にした圧力、脅し、悪意、詐術もあるが、それらにいかに平和的に対処するかが「駆け引き」だ。「駆け引き」はスパンが短期的だ。その前提は、もちろん長期的な戦略だ。

(9)「少数の法則」:人は一般に、少数の例から全体の物事を類推する!(Daniel Kahneman)
「モーツァルト効果」について1993年の有名な実験がある。学生にモーツァルトの音楽を10分聴かせたら、聴かない学生より知能テストの成績が高かった。だがカーネマンが批判する。学生36人の実験にすぎない。それを一般化して「モーツァルトを聴くと知能テストの成績が上がる」などと言うのは、誤りだ!

《感想1》だが日常生活では「少数の法則」が圧倒的に支配する。自分の体験ばかりが一般化される。「井の中の蛙(カワズ)大海を知らず」だ。
《感想2》「群盲象をなでる」と言ってもよい。「象」はどんな生き物だと問われた盲人が、ある者は「細長い」(尻尾を触った)、ある者は「平べったい」(耳を触った)、「壁のようだ」(胴体を触った)、「尖った棒のようだ」(牙を触った)、「太い丸太のようだ」(脚を触った)、「大蛇のようだ」(鼻を触った)。かくて盲人は自分一人の経験を一般化する。これが「少数の法則」だ。君の世界観、人間観、社会観はしばしば「少数の法則」にも基づいて作られる。

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