宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

牛窪恵(1968-)「恋愛しない若者たち:コンビニ化する性とコスパ化する結婚」(2015年):第3章 恋愛結婚から「連帯結婚」へ:圏外やコスパ、多様な結婚を受け入れよう!

2018-09-05 12:56:52 | Weblog
第3章 恋愛結婚から「連帯結婚」へ:圏外やコスパ、多様な結婚を受け入れよう!
(1)「結婚」はしたい(「結婚の利点」はある)が、「恋愛」は重いし面倒だ:「結婚」できるなら「圏外婚」(「年の差婚」「グローバル婚」「逆転婚」)でも気にしない!
L コミュ力がなく「恋愛」は苦手だが、「結婚」はできそうな20代男女が多数いる。彼らは「連帯結婚」を望む。「結婚の利点」調査(2010年、20代男女)では①「子どもや家族をもてる」、②「精神的安らぎの場が得られる」、③「親や周囲の期待に応えられる」、④「愛情を感じている人と暮らせる」、⑤男「社会的信用や対等な関係が得られる」、⑤女「経済的余裕が持てる」。(264頁)かくて「恋愛にこだわらない」多様な結婚が生れ始めている。
M 「圏外婚」(一昔前ならあまり考えられない結婚)が増えている:(a)「年の差婚」(10歳以上の差、同年代男性は頼りない、年上なら地位・収入がある)、(b)「グローバル婚」(男性の85%は中・比・韓朝鮮・タイ;女性は米ブラジル英計28%だが、①韓朝鮮28%、②米、③中12%)、(c)「逆転婚」(妻が主に稼ぐ、女性が男性に家事をやってもらう)。
Ex.1 「恋愛は、裏切られたりして尽くし甲斐がない。でも結婚は尽くした分だけ、子どもや家族ができたりと、リターンがある。」(男24歳)→「年の差婚」(妻が年長でもいい)・「逆転婚」に関心大。
Ex.2 「もう恋だの愛だの、言ってられない」「子どもが欲しい」(女29歳)→婚活で12歳年上の公務員2人とメアド交換&「生理的に嫌じゃない方と結婚する」。

《感想》「結婚の利点」があるから「結婚」はしたい。しかし「恋愛は、裏切られたりして尽くし甲斐がない」し、重い。そう20代男女が思うのはもっともだ。「結婚」できるなら「年の差婚」「グローバル婚」「逆転婚」など「圏外婚」でも気にしない者が増えている。これが恋愛結婚から、著者が言う「連帯結婚」へのシフトだ。

(2)コスパで選ぶ20歳男女の新たな結婚スタイル「コスパ婚」(これも「連帯結婚」の一種だ!):「ただトモ夫婦」「通い婚」(「週末婚」「別居婚」)
N 「ただトモ夫婦」(ただの友達のような夫婦):相手の領域には手を付けない。Cf. 「じゃ解散!」の一言で離婚することもある。
N-2 「週末婚」(「通い婚」1):例えば、あえて一緒に住まない。夫はもともと自分のマンションで暮らし、趣味のグッズでいっぱい。妻は「実家が楽」と別居。
N-3 「別居婚」(「通い婚」2):例えば、女性29歳、理系大学院卒で企業の研究所勤務。夫の転勤について行かない。夫が転勤から戻ってきても、一緒に住まない。それぞれ、自分のマンションに住む。別々に住めば実家とも行き来しやすい。

《感想》「通い婚」(「週末婚」「別居婚」)容認派は男27%、女41%(2011年)。ただし現実に「すでに実践している」は6%のみ。(多くは同居が可能だから、「通い婚」は不要だ。)

(3)親元・地元で幼馴染との結婚がいまブーム:「地元婚」・「同級生婚」
O 現(2015年)アラフォー年齢から下の世代(20代・30代、1976-1995年生まれ)は、男女とも圧倒的に地元志向が強い。
O-2 転機はバブル崩壊。女子大生(現アラフォー)調査(1999年)で、行きたいデートの場所は、①ディズニーランドに続くのが、②地元の「回転ずし」、③地元の「焼肉食べ放題」店。またバブル期に歓迎されなかった「おうちデート」が多数派。
O-3 90年代後半、郊外型ショッピングセンターが増大し、都会への憧れが薄れる。
O-4 不況で親が子を都会の大学に進学させられず、地元の大学へ進学。
O-5 「国も会社も守ってくれない時代」だが、「親や地元の友達(ジモ友)だけは自分を裏切らない」と、20代男女は、親ラブ志向、地元志向。Ex. 「ぼくの田舎で一緒に暮らしてくれる人が居ればその人を選ぶ」。
O-6 Uターン結婚&帰省婚活あり。地元婚は、経済的メリットも大きい。(地方は家賃・物価が安いし、親もそばにいる。)全国の就活生調査でU ターン就職を含む地元での就職を「(どちらかというと)希望する」男女7割弱。

《感想1》「国も会社も守ってくれない時代」!ひどい時代だ!
《感想2》だが生き抜かねばならない。「親や地元の友達(ジモ友)だけは自分を裏切らない」と、20代男女が親ラブ志向、地元志向なのは、当然だ。
《感想3》都会の会社はあてにならない。またインターネットが普及し、郊外型ショッピングセンターも増大し、都会への憧れが薄れた。
《感想4》地元婚は、経済的メリットも大きい。(地方は家賃・物価が安い、親もそばにいる。)「地方の時代」が到来するのか?

(4)「里山婚」(「移住婚」):スローライフを試みる!(296頁)
P 里山暮らしは、お金はないが、豊かな暮らしを送る!(藻谷浩介『里山資本主義』)
P-2 地方も、婚活支援、移住の住宅費補助など人口減少対策。
P-2-2 ただし地元の人に役立つよう「手に職」が必要。Ex. 野菜栽培、ヘアカットなど。
P-3 普通、プライバシーはないと思った方がよい。
P-4 「農山漁村地域に、定住したい願望がある」のは、20代男女では4割。(2014年)
P-5  企業に就職しても、例えば、倒産企業の平均寿命は23.5年だ。
P-6 Cf. 今はサラリーマンが9割だが、戦前は個人事業主8割だった。

《感想》都会から地元へ、都会から農山村への流れだ。しかし問題は仕事があるかだ。地方に仕事を創出する必要がある。同時に、スローライフの価値観が根づかねばならない。

(5)同棲:すぐに結婚せず、まず試してから(Cf. 失敗を嫌う20代男女)
Q 「同棲経験あり」は、20代女性(未既婚)の4割(2008年)、30代女性(既婚)の23%(2006年)。
Q-2 上記、女性同棲経験者のうち、20代の約6割、30代の74%が、同棲相手と結婚している。
Q-3 同棲は、婚姻の前段階だ。同棲を社会としてサポートすることが、少子化対策に有効だ。(304頁)
R 同棲の利点(例)
①ご飯を作ってくれる男性なら「健康になれる」。(女性)
②「最初はルームシェア感覚(家賃が半分ですむ)、生活費が浮く。」
③「節約もあって社内の同期と同棲。」男女の関係になるまで4ヶ月。
R-2 同棲に至る経過:①「いつの間に同棲していた」33%、②「結婚を意識したから」32%。

《感想1》同棲は婚姻(事実婚・法律婚)の前段階だ。これを後押しする法整備がなされれば、少子化対策になる。
《感想2》法律婚は婚姻届を出す、つまり入籍する。事実婚は入籍しないが、住民票に世帯主の「妻or夫」と記載する。

(6)スウェーデンの「サンボ法」(1988施行)、フランスの「PACS(パックッス)」(1999制定)
S スウェーデンの「サンボ法」は、一定期間同棲を続ける男女に、婚姻している夫婦と同等の権利や保護を与える。カップルが別れた場合、(ア)住居や家財を平等に分ける、(イ)父親に養育費を支払う義務を課す。
T フランスの「PACS(パックッス)」は、同棲を続けるカップル(男女、男男、女女)について、(ア)パートナーが死亡した場合、相続権を認める、(イ)同棲でも婚姻と同様に税金等の優遇措置が受けられる。また(ウ)片方の意志だけで同棲の契約解消できる。
T-2 かくて「パックスがあるから、お試し感覚で同棲できる」と同棲が増えた。
T-3 フランスでは、パックス制定後、同棲(また同棲から婚姻へ移行)が増え、その結果、出生率が制定前の1.78から、2012年2.01へと大幅に伸びた。保育制度やワーフライフバランス(男女の労働時間短縮)の充実と両輪だが、パックスが少子化対策に貢献したのは明らかだ。

《感想》「一定期間同棲を続ける男女に、婚姻している夫婦と同等の権利や保護を与える」ことは少子化対策に役立つ。Ex. 税金・社会保障の婚姻と同じ優遇措置、別れた後の財産の相続権、養育費支払い義務等。

(7)同棲・多様婚を後押しすることが、少子化対策となる!
U 結婚を恋愛と切り離し、恋愛力やコミュ力、あるいは経済力が十分でなくても、男女が気軽に連帯できる「連帯結婚」を推進すべきだ。
U-2 したがって多様な形の結婚(多様婚)を後押しすべきだ。Ex.1 「圏外婚」(「年の差婚」「グローバル婚」「逆転婚」)、Ex.2「コスパ婚」(「ただトモ夫婦」「通い婚」)
V サムボや、パックスのように同棲(あるいは事実婚)を推進する制度を、保育制度やワーフライフバランス(男女の労働時間短縮)の充実と両輪で後押しすれば、少子化対策になる。
V-2 ドライで合理的で“コスパでお得”、かつ彼らが自分らしく連帯できる多様婚を、真剣に考慮し後押しすべきだ。
V-3 シンガポールのように「公団住宅の優遇制度(婚約者や配偶者がいれば優先的に申し込める)」を採用してもよい。若者(20代男女)に、「結婚すればお得(コスパ)」だと感じてもらう。(326頁)

《感想1》若者(20代男女)にとって、「恋愛」は重く面倒だ。しかし「結婚」は利点があるのでしたいと思っている。
《感想2》若者(20代男女)の同棲を、法制度で後押しすることが、少子化対策になる。Ex. フランスが「PACS(パックッス)」制定によって、出生率が制定前の1.78から、2012年2.01へと大幅に伸びたのは、驚きだ。

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牛窪恵(ウシクボメグミ)(1968-)「恋愛しない若者たち:コンビニ化する性とコスパ化する結婚」(2015年):第2章 恋愛とセックスと結婚の歴史、そして、世界事情

2018-09-05 12:54:13 | Weblog
第2章 恋愛とセックスと結婚の歴史、そして、世界事情
(1)「セックスレス大国」日本
A 現代の日本は「セックスレス大国」だ。日本人の性交回数45回/年。調査対象41カ国中、最低。(2014年)理由は、男性「仕事で疲れている」&女性「面倒くさい」。

《感想》それにしても性産業は、日本で繁盛している。日本の夫婦関係は、相当数が暗く不幸なのかもしれない。

(2)恋愛と結婚:『古事記』の時代から、平安、鎌倉、江戸時代まで
B 『古事記』の時代から平安時代まで、恋愛はおおらかだった。庶民は、結婚前に男性が女性を訪れる「夜這い」が普通、貴族も「通い婚」だった。なお結婚は「婿とり婚」だ。
Bー2 鎌倉時代になると武士は男が家を継ぎ、「嫁とり婚」となる。女性の地位が低下しはじめた。
Bー3 戦国時代に多くの男が死傷したので、江戸時代には、村が結婚・子作り(労働力の再生産)を支援した。「夜這い」も奨励され、農村は皆婚状態だった。
Bー4 江戸時代、都市部は「大独身時代」だ。1721年、江戸の男女比は100対55。また女性は結婚まで、恋愛(セックス)が自由だった。

《感想》明治時代になる以前は、制度的に恋愛は自由だった。Ex. 武士は、正室と別に、側室も持った。

(3)「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」(性、恋愛、結婚の三位一体化)の輸入:明治・大正時代
C ヨーロッパで誕生した「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」(性、恋愛、結婚の三位一体化)は明治時代、日本に輸入された。Ex. 北村透谷、厨川白村、『みだれ髪』(与謝野晶子、M34)
C-2 M31、明治民法では、男性30歳、女性25歳まで結婚には親の同意が必要とされた。「親に逆らって恋愛結婚」は困難!
D 大正時代、自由恋愛は大変だった。Ex. ①有島武郎、『婦人公論』の記者と心中、②松井須磨子は抱月を後追い自殺、③白秋、姦通罪で告訴される、④らいてう、自殺未遂、④夢二の同棲相手のお葉が自殺未遂。
D-2 当時、主流は「見合い結婚」だ。また「恋愛結婚」といっても、「幸福な家庭」を優先する「友愛結婚」(なお結婚まで「純潔」は守る)だった。
D-3 大正時代は「国民皆結婚」(生涯未婚率は男女とも2%未満、T14)だ。Cf. 今(2015年)は生涯未婚率、男性2割、女性1割。

《感想》「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」は、衰退の傾向があるが、今も、規範として多数派だ。

(4)1960年代後半:「見合い結婚」と「恋愛結婚」の逆転
E 「見合い結婚」より「恋愛結婚」が多くなったのは1960年代後半だ。(209頁)高度成長で、若者が都会に出て、地元の「お節介おばさん」が「見合い結婚」に介在する余地がなくなった。「恋愛結婚」の半数は職場(会社)で、女性にとって会社は「腰掛け」と言われた。
E-2 70年代、生涯未婚率は男女とも2-4%と超低水準だった。

《感想》「恋愛結婚」、華やかなりし時代は、戦後民主主義が根付き、高度成長が進展した時代、つまり1960年代・70年代だ。

(5)80年代は性(恋愛)が結婚と分離し「自由恋愛」の時代!&90年代は「結婚」に楽しさ・自由を求める「友達夫婦」(or「ロマンチック・マリッジ・イデオロギー」)の時代!&2000年代には、これに専業主婦願望・「金麦女」願望という旧来の結婚観への回帰が重なる!
F  1960-70年代は婚前交渉が嫌われ、恋愛・性・結婚が三位一体だった。「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」だ。男は「セックスしたら女性の将来に責任を持つ」とされた。(221頁)
F-2 日本で「婚前交渉が『不可』」が半数を切ったのは1983年(47%)。1973年では、まだ58%。なお2013年では「婚前交渉が『不可』」は2割(現20代では1割)になった。(238頁)
F-3 80年代は性(恋愛)が結婚と分離し「自由恋愛」の時代。そしてバブル期以降、結婚は「必需品」から「嗜好品」となった。(218頁)
F-4 90年代は結婚にも楽しさ・自由を求める「友達夫婦」の時代だ。(86ー87頁)これは「ロマンチック・マリッジ・イデオロギー」だ。2000年代には、これに旧来の結婚観への回帰である専業主婦願望が重なる。女には結婚すればすてきな生活が待っているとの期待。これに対応して男には「金麦女」(檀れい)願望がある。
G だが現実は厳しい。20代男性は言う。「専業主婦を養う甲斐性はない。奥さんに働いてもらわないと!」一方で稼ぐ妻を望みながら、他方で「金麦女」(家庭的な可愛い女性)に恋する男性の矛盾。(170頁)
G-2  20-30代の未婚女性調査(2010年)では、「専業主婦になりたい」5割、しかし「なれないと思う」が7割だ。(89頁)

《感想1》1960-70年代は「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」の時代、80年代は「自由恋愛」の時代、90年代は「友達夫婦」(or「ロマンチック・マリッジ・イデオロギー」)の時代、2000年代には、これに専業主婦願望・「金麦女」願望という旧来の結婚観への回帰が重なるとの捉え方は、適切だ。
《感想2》同時に、2000年代になると、1986-95生れの若者(2015年時点で20代の若者)は、恋愛は重くてめんどうだと考える。「恋愛しない若者たち」!

(6)20代の若者(1986-95生れ)にとって恋愛は重くてめんどう!&日本は恋愛や結婚で「告白や入籍が当たり前」とされハードルが高い!
H 2015年時点で、20代の若者(1986-95生れ)は、「恋愛は重くてめんどうだ」。
H-2 恋愛感情抜きでセックスする「セフレ」(セックスするだけのパートナー)を求める者もいる。2011年調査でセフレがいる20代女性14%(7人に1人)。(221頁)
H-3 恋愛(性的関係)のはじまりである「告白」!これは重く、「振られるリスクを思うと告白したいと思わない(友達のままでよい)」:男性32%、女性49%。(2014年、20代の若者)
I 法律婚でなく同棲・事実婚で生まれる子ども(「婚外子」)は、スウェーデン・仏で5割強、デンマーク・英・米・蘭で4割強。
I-2 日本は「告白や入籍が当たり前」とされ、恋愛や結婚へのハードルが高い。(237頁)
I-3 欧米各国の多くは、最初の性交渉を「相手を知る方法」の一つ、あるいは「恋愛を始める一手段」ととらえる。その後、コミュニケーションを深め、「この人」と思えば、同棲・事実婚に至る。
J 日本では80年代でも、「告白」して本気度を見せないと、婚前のセックッスは手に入らなかった。
K 中国は恋愛と結婚は別。中国では学歴・階層が重要で、「お金持ちの親を持つ男性と結婚したい」が広州の女子大生の6割。(2010年)
K-2 中国や韓国では「男は妻子を養うもの」「女性は貞操を守るもの」との考え方が、日本より強い。(250頁)

《感想1》恋愛(性的関係)のはじまりである「告白」!20代の若者にとって、これは重く、「振られるリスクを思うと告白したいと思わない(友達のままでよい)」:男性32%、女性49%。(もちろん男性の7割、女性の5割は「告白」する。)
《感想2》著者の関心は、出生率を上げ、少子化問題を解決することにある。「恋愛」なしの結婚、つまり「友愛結婚」(※一種の「見合い結婚」)の推進を、著者は主張する。

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牛窪恵(1968-)「恋愛しない若者たち:コンビニ化する性とコスパ化する結婚」(2015年):第1章 恋愛レボリューション:何が若者たちを恋愛から遠ざけているのか

2018-09-05 10:31:22 | Weblog
はじめに:恋愛スルーの若者たち
(1)「恋愛が面倒」
A  未婚で恋人がいない男女の約4割が「恋人は欲しくない」。その45%が「恋愛が面倒」と答えた。(2015年)Ex.「デートは疲れる。コスト(お金や時間)がかかる割に、得がない。」
A-2 「結婚すれば、面倒な恋愛から解放される。」(「恋愛スルー」!)

《感想1》恋愛、結婚が一体でない。両者が分離する。恋愛は面倒だが、結婚はしたい。
《感想2》20代は「恋愛スルー」だ。「恋愛」は面倒でカネもかかる。しかし、「結婚」(同棲)は、気を使わずラクチンだ。カネもあまりかからない。また部屋をシェアすれば一人住まいよりコスパがよい。

(2)「どうせ国も会社も、自分を守ってくれない」
B 20代男女の9割は「いずれ結婚するつもり」。(2010年)(8頁)
C 20代男女の「恋愛スルー」の最大要因は「バブル崩壊と長引く不況」だ。恋愛はカネがかかる。
D 20代男女は「親が最後の砦」「親しか頼れない」。
Dー2 現20代は「ゆとり世代」(19ー28歳、2015年時点)かつ「右肩下がり」の世代。
Dー3 「どうせ国も会社も、自分を守ってくれない」、「どうせ日本は、こんなもの」と彼らは思う。

《感想1》20代男女(2015年時点で20ー29歳、1986ー1995生まれ)にとって、「恋愛」「性」「結婚」の3位1体という昭和的見方(「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」)はない。
《感想2》バブル崩壊と長引く不況、つまり「失われた20年」は1992ー2001年だ。金融不況(1997ー8年)によるリストラ、さらに非正規雇用の拡大、年金の給付水準低下・・・・。
《感想2-2》その上、2008年はリーマンショック。20代男女は苛酷な時代を生きてきた。
《感想3》「親が最後の砦」。Ex. 親孝行(親を喜ばす)のため、高校生・大学生の一部が、異性の親と一緒にお風呂に入る。

第1章 恋愛レボリューション:何が若者たちを恋愛から遠ざけているのか
第1節 若者たちの恋愛阻害要因①:「超情報化社会」がもたらした功罪――バーチャル恋愛とリアル恋愛の狭間で
E 膨大な情報開示(Ex. アダルトサイトの性交画面)によってときめきのチラリズムが消失した。「恋愛」と「性」が別物となった。そして性欲は「性風俗」で処理する。
E-2 裏切らないバーチャル恋愛に比べ、リアル恋愛は重い。Ex.「元彼は、束縛が強くて会っても『重い』だけだった。」
E-3  PCのネット接続によるアダルトサイトが、「ひとりエッチ」を促し「恋愛」を阻害した。Ex. オナホール「典雅」のヒット。Ex. 女性向けアダルト動画サイト「GIRL'S CH」。
F SNSの普及で、グループ内・コミュニティ内恋愛は面倒なので避ける。

《感想1》チラリズムの消失、恋愛と性の分離、性風俗の利用が、20代男子の「恋愛」を阻害する。
《感想2》確かに恋愛は重いし面倒くさい。恋愛・性・結婚の三位一体という「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」(18世紀ヨーロッパで成立、日本では明治期に導入、高度成長期の60ー70年代に定着)が解体しつつある。
《感想3》若者(20代男女)には「SNS疲れ」がある。20代の5割以上。(2014年)(50頁)

第2節 若者たちの恋愛阻害要因②:「男女平等社会」と「男女不平等恋愛」のジレンマ――昭和の恋愛幻想にしばられる若者たち
(1)「将来に希望を持てない」&「男女不平等恋愛」
G 今の20代は、「将来に希望を持てない」。かくて「『いま・ここ』の幸せに関心を向ける」ので「現状の生活満足度が高い」。(67頁)
H 男性は相変わらず「大企業」「正社員」というプレッシャーに縛られるが、女性はのびのびしている。ニートも女性なら「家事手伝い」と対面を保てる。(68頁)
Hー2 男女平等なのに、何で「告白」や「支払い」は男なんスか?(20代男性)
Hー3  本命の恋人には昭和的な「男らしさ」「女らしさ」を意識するので、男も女も疲れる。Ex. 気を使わない「セフレ(セックス・フレンド)」が楽だという20代女性がいる。

《感想1》昭和的「男らしさ」「女らしさ」イデオロギーは20代男女にも健在だ。なぜなら当然にも彼らは、それより上の世代からの影響をうけるから。
《感想2》昭和的「男らしさ」「女らしさ」イデオロギーは、女性差別イデオロギーである。①「男女平等」を否定し、②女性の人格を認めず、③《セクハラは犯罪でない》と女性を性的慰安道具と見る。

(2)昭和の恋愛幻想にしばられる
I 1960-70年代は婚前交渉が嫌われ、恋愛・性・結婚が三位一体だった。(「ロマンチック・ラブ・イデオロギー」!)80年代は、恋愛が結婚と分離し「自由恋愛」の時代だ。
I-2 90年代は「結婚」にも楽しさ・自由を求める「友達夫婦」の時代。これは「ロマンチック・マリッジ・イデオロギー」だ。結婚すればすてきな生活が待っていると、専業主婦、シロガネーゼ、プチセレブ妻願望。これに対応して男には「金麦女」(檀れい)願望。
I-3 だが現実は厳しい。20代男性は言う。「専業主婦を養う甲斐性はない。奥さんに働いてもらわないと!」稼ぐ妻を望みながら、家庭的な可愛い女性(「金麦女」)を夢想する男性の矛盾。(170頁)
I-4  20-30代の未婚女性調査(2010年)では、「専業主婦になりたい」5割、しかし「なれないと思う」が7割。(89頁)

《感想》「金麦女」は、20代男女にとって非現実だ。それは、昭和企業戦士・専業主婦時代のなごりの幻影(残映)だ。女性差別的見解の権化、女性の社会進出への無関心・反対、経済的にパートが絶対に必要な主婦の無視、家事を全く手伝わない男の肯定だ。

第3節 若者たちの恋愛阻害要因③:超親ラブ族の出現と恋愛意欲の封じ込め――なぜ子離れできない親が増えたのか?
J 「ゆとり世代」(現19ー28歳)の男女は「超親ラブ族」だ。
Ex.1 彼氏といるよりママと買い物に行った方が、胸がキュンとなったりする。可愛いバッグやワンピを見て「カワイイ!」と叫ぶ。理由は「好きなことが言えて楽」、「金銭的援助」がある。(22歳女子大生)
Ex.2 母と息子の場合も同様だ。例えば「付き合うなら、親が気に入る相手」と息子が言う。
K 「バブル崩壊」と「右肩下がりの日本」しか見てこなかった20代男女にとって、親だけが自分を裏切らない「最後の砦」だ。(98頁)

《感想》面倒くさく重い「恋愛」より、①「家族」の気軽さ、また②「家族」はカネを出してくれる、そして③親だけが自分を裏切らない「最後の砦」なので、20代男女は「恋愛」より「家族(親)」を好む。

第4節 若者たちの恋愛阻害要因④:恋愛リスクの露呈と若者たちのリスク回避――「自己責任」に脅える恋愛事情
L 「恋愛リスク」:(1)リベンジポルノなど「別れたあとの復讐劇」、(2)エイズ(HIV感染症)、(3)ストーカー、(4)デートDV(Ex. 交友関係やメールチェック)、(5)男性が脅える冤罪リスク(Ex. 近頃はナンパが減る、Ex. 2度断られたらストーカーと勘違いされるのでもう誘わない)、(6)女性が「授かり婚」(妊娠による結婚)を意図し、彼氏に告白・プロポーズさせる、(7)女性がシングル・マザーになった場合、「半数以上が貧困」(1985年以来)。
L-2 これらの「恋愛リスク」について、「自己責任」と当事者の若者を責める風潮。社会は冷たい。かくて異性との交際は、若者にとって「怖い」「ヤバイ」ものとなる。(140、153頁) 
M 若者に対して、「立場」を利用したセクハラ、パワハラもある。Ex.「俺を怒らせていいのか」「お前みたいな田舎者、人脈がすべてなんだ」とME(医用工学)スクール講師からセックスを強要された女子大学生。(141頁)

《感想》異性との交際は「怖い」「ヤバイ」と若者(男女)が思って、確かに当然だ。しかもすべてが「自己責任」と本人のせいにされる。

第5節 若者たちの恋愛阻害要因⑤:バブル崩壊と長引く不況が招いた、恋愛格差社会――非正規では恋愛もできない!
N 非正規雇用で「恋人あり」の20代男性は、正規雇用の半分以下だ。年収200-300万円が、男性(20-30代)の未婚・既婚の壁である。(154-5頁)
N-2 女性(22-34歳):「収入が少ない」男性(低年収・非正規)とは恋愛したくない。(156頁)
N-3 合コンに誘われても、「人前に出られる身分じゃない」と引いてしまう男性。(24歳フリーター)(160頁)

《感想1》「収入が少ない」男性(低年収・非正規)にとって憂世だ。狡猾に生きるか、ひっそり生きるか、恨みを持って生きるか、あるいは、あきらめて生きるか!
《感想2》「貧しい者」がいる。原因は色々だ。(a)貧しい家に生まれつき、金持ちの家に生まれなかった。(相当に重要な原因だ。)(b)本人の努力が不足だった。(c)努力したが知的能力が十分でなかった。(d)決断力、先見の明、社交力、信頼関係をつくる力などの不足。(e)運が悪かった。(f)社会のシステムが「貧しい者」と「金持ち」を固定化して再生産するようになっている。

第5節-2 非正規の「分相応」!&有効求人倍率「0ポイント台」の1993-2005年!
0 努力しても非正規では、昇進も昇給もない。またいつ解雇されるかもわからない。かくて「身の丈」「分相応」「力を抜いて生きる」のが一番だ。
P 日本の「初の就職氷河期」はバブル崩壊後の93年、有効求人倍率0.76だ。かくて「団塊ジュニア」(1971-1976生れ)は「貧乏くじ世代」と呼ばれる!
P-2 以後、アジア通貨危機(97)、(不良債権による)金融危機(97-98)、米同時多発テロ(01)で、有効求人倍率はずっと「0ポイント台」が2005年まで続く。
P-3 有効求人倍率が久々に2006年「1ポイント台」。しかし08年リーマンショックで急降下。アベノミクスの14年から再び「1ポイント台」を安定的にキープ。

《感想1》1992-2005年は、明らかに「失われた20年(以上)」だ。2008年から再び「失われた5年間」(評者)(2008-2012年)だ!かくて1992-2012年まで、日本経済は「失われた30年」と言うべきだろう。
《感想2》アベノミクスが、有効求人倍率を「1ポイント台」に載せたと言っても、求人の半数は非正規雇用だ。事態を改善したと言うべきか、判断が分かれるところだ。
《感想2-2》2014年から有効求人倍率が「1ポイント台」を安定的にキープするから、全体として売手市場で、「正規雇用」のチャンスがある者には恵まれた事態だ。ただし正規雇用者の仕事の負担は増大し、サービス残業という名のタダ働きが常態化している。他方、「非正規雇用」しかチャンスがない者は、有効求人倍率が「1ポイント台」でも、ひどい低賃金で、その上、いつでもクビになることに変わりがない。

第5節-3 お金はあれど残業が恋愛に優先の「正規」(男性)!&恋愛の自信がない「非正規」(男性)!
Q 労働者派遣法(86年)、その後の改正(99、04、06年)で製造業への派遣も事実上、認可された。2014年、25-35歳の非正規男性は14%だ。(バブル最盛期には3%。)
Q-2 20代男性(月~金フルタイム)の年収が360万円(97年)から306万円(14年)へ低下。(国税庁)「正社員以外」の年収は186万円。(2015年、厚労省)
R 「モーレツ社員」を支えた終身雇用制は90年代半ば、事実上崩壊した。「正社員」20代さえ「リストラの不安がかなりor多少ある」が約4割。(『プレジデント』09年)
S 新入社員「デートをやめて仕事をする」8割以上、「残業を断ってデート」の若者は2割未満。(日本生産性本部、14年調査)。

《感想1》20代男性(月~金フルタイム)の年収が360万円(97年)から306万円(14年)へ低下。「正規社員」でさえ、これでは少なすぎる。子供を産めないし、まして育てられない。日本が「豊かな社会」と言えるのか、難しい。
《感想2》20代男性「正社員以外」の年収186万円。(2015年)これは厳しい。そうした低年収の25-35歳の「非正規」男性は14%もいる。(バブル最盛期には3%。)(2014年)
《感想2-2》25-35歳の「非正規」男性は、なぜそうなったのか?(a)貧しい家に生まれつき、金持ちの家に生まれなかった。そのため教育投資がなされず、コネクションもなかった。(相当に重要な原因だ。)(b)本人の努力不足。(c)努力したが知的能力が不十分。(d)決断力、先見の明、社交力、信頼関係をつくる力などの不足。(e)不運。(f)社会のシステムが「貧しい者」と「金持ち」を固定化して再生産するようにできている。(かなりそうなっている。)(g)タイミング的に新卒での就職が超氷河期に当たり就職できず、そのまま非正規となった。

第5節-4 若者男女は多くが「できれば早く、結婚したい」と思っている
(1)女性の恋愛:男性ほど年収や雇用形態に左右されない
T 女性の恋愛は、男性ほど年収や雇用形態に左右されない。20代「恋人なし」の割合は、正規も非正規も同じ。「結婚」については、正規より非正規の方が、婚姻率が高いくらいだ。
T-2 女性については、「恋愛にご無沙汰」の20-30代女子も「干物女」「恋愛ニート」などと共感され好意的で悲壮感がない。男性の悲壮感と対照的だ。(171頁)

《感想》日本は「男性中心社会」であり、一般に男性への要求度が高い(Ex. 高年収)。これに対し女性への要求度は相対的に低い。良し悪しは別にして、女性の方が気分的に伸び伸びできる。

(2)「できれば早く、結婚したい」&「おひとりさま不安」
U 若者(20代男女)は、一方で恋人と一緒より、親といた方が楽だと思う。また「同棲や結婚で、家事負担が増えたり、趣味の時間が奪われる」のも嫌だと言う。
U-2 ところが他方で、若者男女は「できれば早く、結婚したい」とも思っている。(177頁)
U-3 「おひとりさま」についての見方の変遷(2007-2011年)
①「おひとりさま不安」あり。一時は上野千鶴子『おひとりさまの老後』(2007年)で、独身(未婚)を前向きにとらえる流れも出て来た。
②しかし『シリーズ“無縁社会”ニッポン』(NHK、2010年)で「一生独身は怖い」に変化。
③2011年東日本大震災で、「家族の絆」「家族が大事」「命を育むのは尊い」との考えが浸透する。

《感想1》「おひとりさま不安」がしばしば語られる。「孤独死」はマイナスイメージだ。
《感想1-2》しかし超越者(Ex. 「天」、「阿弥陀仏」、「神」、「自然」、「宇宙」)と向き合えば、死に際して目前に人間が居ないからといって、何もマイナスでない。君は「天命」を全うするのだ。死は君の問題であって、一人で死ぬからと、他人から非難され憐れみを受ける理由はない。
《感想2》「孤独死」へのマイナスイメージは、実は、「孤独死」させた家族(子供たち)への非難だ。ここには「人(「孤独死」させた家族)を非難すれば、非難する側の自分の自尊心が満たされる」という暗い動機がある。

(3)「できれば早く、結婚したい」と思う理由
U-4 若者男女が「できれば早く、結婚したい」と思う理由。
(a)「何があっても、自分を裏切らないのは家族」「親や親族こそが、最後の砦」という20代特有の思い。(Cf. 既述98頁、超親ラブ家族)
(b)  若者(20代男女)の考えでは、恋愛についてバブル世代のように能天気に、恋だの愛だの言ってる場合じゃない。(ここには「反バブル」「反負け犬」意識あり。)重要なのは「恋愛」でなく「結婚」だ!(180頁)
(c)「男女は結婚or出産してこそ一人前」との見方。(178頁)
(d)社会制度(法的保障、税、社会保障)の面で、一般的に独身が既婚者より冷遇されている。だから「結婚」した方が得だ。
V なお未婚女性は35歳を過ぎると、その後結婚できる確率は1割あるかないかだ。(総務省)

《感想》著者の目的は、少子化問題の解決、つまり合計特殊出生率の向上だ。つまり《結婚させ、子供を産むよう誘導する政策》を考え出すことだ。若者(20代男女)の多くが「できれば早く、結婚したい」と思っていることは、少子化問題の解決に関してプラス要因である。

第5節-5 格差社会が生んだ「最底辺にだけは行きたくない」「せめていまの位置にいたい」という恐怖と願望:中間所得層の男女の気持ち(189頁)
W 若者(20代男女)は、今あるものを失わないように、過度の守りに入る。低年収層の一部の不用意な妊娠を見て、「ああはなりたくない」と恋愛・セックスから遠ざかる中間所得層の男女。「20歳そこそこで結婚するのは怖い」、「恋愛に惑わされて妊娠したりしない」!
W-2 リスクが多く、かつ「失ったものを二度と取り返せない」世の中であってはならないと、著者は言う。
W-3 「失ったものを取り戻せる社会」、「底辺からでも這い上がれる(可能性がある)社会」を、大人が若者に用意しなければならない。今のように「希望に格差がある社会」(「希望格差社会」)ではいけない。(189頁)
X 「マイルドヤンキー」の方には行きたくないと、中間所得層の男女が思う。(181頁)

《感想1》ここで述べられているのは、中間所得層の男女の気持ちだ。
《感想2》他方で、「最底辺」と他者から位置づけられ、また自らも位置づけるほかない「最底辺」の本人たちの気持ちはどのようだろうか?あきらめ、憤り、ルサンチマン(怨恨感情)、やるせなさ、ハングリー精神、あやうい自尊感情、これらのコンプレックス(複雑に絡んだ感情群)だ!

第5節-6 「マイルドヤンキー」:地元が大好きな若者で、早婚の場合は妻や子と仲がいい!&多くが中卒、高卒でパート・アルバイト、あるいは専業主婦!(Cf. 評者の見解:「地元志向若者層」と呼ぶべきだ!)
Y 「マイルドヤンキー」(原田曜平、2014年):郊外や地方に住み、地元が大好きな若者で、一緒に遊ぶのは小中学時代の友人が圧倒的に多く、クルマ、バイク、パチンコにはまり、早婚の場合は妻や子と仲がいい。地元指向が強く、内向的、上昇志向が低い。
Y-2 「マイルドヤンキー」は低年収で非正規でも、積極的に恋愛し、セックスする。夫とラブラブで性行動にも前向き。多くが中卒、高卒でパート・アルバイト、あるいは専業主婦。(182頁)
Y-3 収入が低い男女は、結婚生活を続けるために、「それでも愛している」と自分を納得させる。(富田隆)
Y-4 「経済的な苦しさ」もあり、愛情弁当や手作りの夕食を用意する。
Y-5 「パパが大好き!」と言いながら、殴られたような青あざがあることも少なくない。

《感想1》統計的には「生活に貧するほど離婚に向かいやすく、早婚の男女ほど離婚率が高い」(184頁)。さらに離婚は、特に女性がシングル・マザーになった場合、「半数以上が貧困」(1985年以降)だから大変だ。
《感想2》「マイルドヤンキー」との命名は、失礼だ。「ヤンキー」とは、かつての「不良」だ。暴力的でないので「マイルドな不良」とは失礼な命名だ。「地元志向若者層」(評者命名)と呼ぶべきだ。
《感想2-2》「地元志向若者層」は、「都市部集中若者層」(評者命名)と異なる。後者は、都市部集中、車離れ、晩婚化、少子化と特徴づけられる。原田曜平『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(2014年)は、「マイルドヤンキー」(※「地元志向若者層」)の人生観を次のように述べる。女性は「都会に住んで貧乏になるより、低賃金でも地方で務め、早く結婚して子どもを産み、親や地域の絆に支えられて子育てする」と考える。男性は「安定した雇用が期待できないのなら、非正規の仕事を掛け持ちしながら、親元に住み、将来的には親の面倒も見る」と考える。
《感想2-3》彼らは低収入でも今後、子どもの成長に伴う消費が期待できる。また親との同居や地方在住のため住居費の負担が小さく、車購入など消費意欲が高い。かくて「マイルドヤンキー」(※「地元志向若者層」)は、日本経済を牽引する存在になりうる。彼らは、地域再生に寄与する存在であり、雇用の確保が重要だ。(以上、原田曜平の見解!)

第5節-7 希望格差社会:弱者が上昇願望を「どうせ無理だ」として端(ハナ)から持てない社会!(185頁)
Z 格差が大きく、上昇への希望が断たれると、「妊娠してもしなくても苦しいことに変わりない、避妊などしなくていい」と絶望&自暴自棄になる。
Z-2 例えば、大学の学費が下がるなど「明日は少しでもよくなる」と希望が持てたり、高年収家庭との格差が感じにくくなると、若者は前向きになる。また「妊娠してもいいや」でなく、「1人の恋人を大事にしよう」と思うようになる。

《感想》大人の責任、あるいは社会の責任は、「希望格差社会」を終わらせ、《誰もが上昇への希望を持てる社会》を作ることだ。そう述べる著者に、評者は同感する。

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