序 「娘の幽霊、本所深川に現るの巻」
(1) 伸吉は寺子屋の師匠。気が弱い。借金取立ての熊五郎に追われて大変。明和六年。やはり寺子屋の師匠だった祖母・卯女(ウメ)が昨秋に死に、伸吉が後をついだ。
(2) 寺子屋の庭に幽霊娘・小風(コカゼ)が現れる。唐傘を持つ。カラスの 八咫丸を肩に載せる。伸吉が「化け物でもいいから助けて!」と言ったので来たと、小風が説明。
其ノ一 小風、夜の墓に行くの巻
(1) 伸吉が夜の墓場に、借金取りの熊五郎を呼び出す。熊五郎には悪霊が取り憑いていた。熊五郎はもとは親切な男だったのに、すっかり性格が変わって凶暴になったのは悪霊のせいだった。小風が、悪霊を倒し、地獄に送る。妖怪の上総介が、協力。熊五郎は気絶。
(2) 小風と伸吉は、夜明け前に寺子屋に帰る。お天道様を浴びると小風は寝てしまう。
其ノ二 伸吉、幽霊の師匠になるの巻
(1) 寺子屋は、朝五つ(8時)から昼八つ(2時)まで。暮六つ(6時)を過ぎれば夜。
(2) 伸吉の祖母・卯女(ウメ)は“三途の紐”を使って死人を成仏させず幽霊にしてこき使った。
(3) 小風は、この寺子屋のある場所に、昔、住んでいた。父娘が火事で死ぬ。父が成仏せず行方不明、幽霊としてさまよう。父を捜しに小風も、幽霊として、この世にいる。
(4) 幽霊たちが、卯女(ウメ)を恨んで、その孫の伸吉に仕返ししようとしている。
(5) 熊五郎の妹のしぐれが、幽霊として現れる。寺子屋に居つく。
(6) 小風は、幽霊・化け物を使うので、その代償に、文字を彼らに教える。その役を伸吉が引き継ぐ。伸吉が、幽霊の手習いの師匠となる。
(7) 猫骸骨が、伸吉と仲良くなる。他方、化け物たちは真面目に手習いする。伸吉は、師匠としてやる気が出る。
其ノ三 小風、夜歩きするの巻
(1) 雨の日の夜、化け物の寺子屋は休み。小風が一人出かける。
(2) カラスの 八咫丸、妹分の幽霊しぐれ、伸吉師匠が、後を追う。猫骸骨が、姿を隠す闇色御幣を貸してくれる。
(3) 小風は、雷師匠の寺子屋を訪れていた。雷師匠には幽霊が、とりついている。昔、寺子屋の卯女(ウメ)が、古井戸で幽霊・化け者たちに、「子どもを連れてこい」と言っていた。それを知った雷師匠が、古井戸に向け、同じことを言った。
(4) 雷師匠は幽霊たちが見えず、幽霊の夜の手習いの師匠になれない。子どもを連れてきた幽霊たちは、代償として昼の子どもたちの寺子屋を見て、字を習おうとした。しかし、子どもたちは騒ぐばかり、勉強しない。そのため字が習えない幽霊が怒り、雷師匠に乗り移って子どもを折檻。
(5) 優しかった雷師匠を、凶暴な別人に変え、彼に乗り移った悪霊。その悪霊を、小風が、追い払う。さらに、小風は、諸々の幽霊たちを、唐傘を回し、この世から追放・成仏させる。
(6) 日が昇り朝となる。眠った小風を、伸吉師匠が、おぶって帰る。
其ノ四 しぐれ、金儲けをするの巻
(1) 幽霊しぐれの銭狂い。彼女は、熊五郎の妹。しぐれは、江戸の市内でインチキ見せ物を演じ、小銭を集める。しぐれの親は、高里屋の主人夫妻だった。
(2) 高里屋の乙松は、高利貸し。借金取りの熊五郎は、呉服問屋高里屋の跡取り息子。しかし、高里屋は借金のかたに乙松に、取り上げられた。熊五郎は、借金を返し、高里屋を取り返したいので、乙松の子分となり、今、借金取りをする。
(3) 銭狂いのしぐれから、小銭の入った巾着を、小風が取り上げる。しぐれが銭狂いなのは、乙松から、高里屋を取り返したいため。しぐれは、成仏できない。
其ノ五 百鬼、江戸を駆けるの巻
(1) 高里屋の主人夫妻(熊五郎と幽霊しぐれの両親)は、汚い長屋に住む。父親直助が、病気。母親おきのが、美人。
(2) 直助の病状が悪くなり、医者に診せたいと思い、おきのは、乙松に金を借りに行く。
(2)-2 伸吉師匠が、弱虫なのに、おきのを助けに行く。乙松は、女衒の海坊主を呼び、おきのを100両で売り払う。
(2)-3 海坊主は、乙松を刺し殺し、100両を取り戻す。その後、海坊主は、伸吉を大川に投げ込むが、カラスの 八咫丸が救う。
(3) 伸吉は、またも、海坊主につかまる。小風が、海坊主の隠れ家の荒れ寺に、おきのと伸吉を、助けに行く。
(3)-2 海坊主が、小風に対し、幽霊封じの護符をばらまく。幽霊は、護符の炎に焼かれ、灰となり護符の中に封じ込められる。小風が危ない。唐傘も、手元から離れてしまう。
(3)-3 大川から助けられた伸吉師匠が、弱虫なのに、ほれた小風を助けに行く。幽霊・化け物たち多数も、小風を助けに行く。百鬼夜行。
(3)-4 伸吉は、すぐに悪党どもに、捕まる。幽霊・化け物たちも、幽霊封じの護符のために、海坊主たち悪党に近寄れない。
(4) 小風が、唐傘を取り返す。唐傘で、八寒地獄の第五、虎々婆(ココバ)地獄の寒風を、海坊主たちが受けて、凍らせてしまう
終 伸吉、賽の河原への巻
(1) 伸吉が、賽の河原の夢を見る。
(2) 伸吉は、幽霊たちに「寺子屋に、居ていい」と言う。小風が、「お前も物好きな男だ」と応じる。
《評者の注》
罪のない物語。訴えることは何もない。説教はない。教訓もない。話が楽しい。
伸吉師匠は気が弱いが男気がある。
唐傘小風は美人でいい女で、化け物にたいして強い。カッコいい。
猫骸骨が愛嬌あり。
(1) 伸吉は寺子屋の師匠。気が弱い。借金取立ての熊五郎に追われて大変。明和六年。やはり寺子屋の師匠だった祖母・卯女(ウメ)が昨秋に死に、伸吉が後をついだ。
(2) 寺子屋の庭に幽霊娘・小風(コカゼ)が現れる。唐傘を持つ。カラスの 八咫丸を肩に載せる。伸吉が「化け物でもいいから助けて!」と言ったので来たと、小風が説明。
其ノ一 小風、夜の墓に行くの巻
(1) 伸吉が夜の墓場に、借金取りの熊五郎を呼び出す。熊五郎には悪霊が取り憑いていた。熊五郎はもとは親切な男だったのに、すっかり性格が変わって凶暴になったのは悪霊のせいだった。小風が、悪霊を倒し、地獄に送る。妖怪の上総介が、協力。熊五郎は気絶。
(2) 小風と伸吉は、夜明け前に寺子屋に帰る。お天道様を浴びると小風は寝てしまう。
其ノ二 伸吉、幽霊の師匠になるの巻
(1) 寺子屋は、朝五つ(8時)から昼八つ(2時)まで。暮六つ(6時)を過ぎれば夜。
(2) 伸吉の祖母・卯女(ウメ)は“三途の紐”を使って死人を成仏させず幽霊にしてこき使った。
(3) 小風は、この寺子屋のある場所に、昔、住んでいた。父娘が火事で死ぬ。父が成仏せず行方不明、幽霊としてさまよう。父を捜しに小風も、幽霊として、この世にいる。
(4) 幽霊たちが、卯女(ウメ)を恨んで、その孫の伸吉に仕返ししようとしている。
(5) 熊五郎の妹のしぐれが、幽霊として現れる。寺子屋に居つく。
(6) 小風は、幽霊・化け物を使うので、その代償に、文字を彼らに教える。その役を伸吉が引き継ぐ。伸吉が、幽霊の手習いの師匠となる。
(7) 猫骸骨が、伸吉と仲良くなる。他方、化け物たちは真面目に手習いする。伸吉は、師匠としてやる気が出る。
其ノ三 小風、夜歩きするの巻
(1) 雨の日の夜、化け物の寺子屋は休み。小風が一人出かける。
(2) カラスの 八咫丸、妹分の幽霊しぐれ、伸吉師匠が、後を追う。猫骸骨が、姿を隠す闇色御幣を貸してくれる。
(3) 小風は、雷師匠の寺子屋を訪れていた。雷師匠には幽霊が、とりついている。昔、寺子屋の卯女(ウメ)が、古井戸で幽霊・化け者たちに、「子どもを連れてこい」と言っていた。それを知った雷師匠が、古井戸に向け、同じことを言った。
(4) 雷師匠は幽霊たちが見えず、幽霊の夜の手習いの師匠になれない。子どもを連れてきた幽霊たちは、代償として昼の子どもたちの寺子屋を見て、字を習おうとした。しかし、子どもたちは騒ぐばかり、勉強しない。そのため字が習えない幽霊が怒り、雷師匠に乗り移って子どもを折檻。
(5) 優しかった雷師匠を、凶暴な別人に変え、彼に乗り移った悪霊。その悪霊を、小風が、追い払う。さらに、小風は、諸々の幽霊たちを、唐傘を回し、この世から追放・成仏させる。
(6) 日が昇り朝となる。眠った小風を、伸吉師匠が、おぶって帰る。
其ノ四 しぐれ、金儲けをするの巻
(1) 幽霊しぐれの銭狂い。彼女は、熊五郎の妹。しぐれは、江戸の市内でインチキ見せ物を演じ、小銭を集める。しぐれの親は、高里屋の主人夫妻だった。
(2) 高里屋の乙松は、高利貸し。借金取りの熊五郎は、呉服問屋高里屋の跡取り息子。しかし、高里屋は借金のかたに乙松に、取り上げられた。熊五郎は、借金を返し、高里屋を取り返したいので、乙松の子分となり、今、借金取りをする。
(3) 銭狂いのしぐれから、小銭の入った巾着を、小風が取り上げる。しぐれが銭狂いなのは、乙松から、高里屋を取り返したいため。しぐれは、成仏できない。
其ノ五 百鬼、江戸を駆けるの巻
(1) 高里屋の主人夫妻(熊五郎と幽霊しぐれの両親)は、汚い長屋に住む。父親直助が、病気。母親おきのが、美人。
(2) 直助の病状が悪くなり、医者に診せたいと思い、おきのは、乙松に金を借りに行く。
(2)-2 伸吉師匠が、弱虫なのに、おきのを助けに行く。乙松は、女衒の海坊主を呼び、おきのを100両で売り払う。
(2)-3 海坊主は、乙松を刺し殺し、100両を取り戻す。その後、海坊主は、伸吉を大川に投げ込むが、カラスの 八咫丸が救う。
(3) 伸吉は、またも、海坊主につかまる。小風が、海坊主の隠れ家の荒れ寺に、おきのと伸吉を、助けに行く。
(3)-2 海坊主が、小風に対し、幽霊封じの護符をばらまく。幽霊は、護符の炎に焼かれ、灰となり護符の中に封じ込められる。小風が危ない。唐傘も、手元から離れてしまう。
(3)-3 大川から助けられた伸吉師匠が、弱虫なのに、ほれた小風を助けに行く。幽霊・化け物たち多数も、小風を助けに行く。百鬼夜行。
(3)-4 伸吉は、すぐに悪党どもに、捕まる。幽霊・化け物たちも、幽霊封じの護符のために、海坊主たち悪党に近寄れない。
(4) 小風が、唐傘を取り返す。唐傘で、八寒地獄の第五、虎々婆(ココバ)地獄の寒風を、海坊主たちが受けて、凍らせてしまう
終 伸吉、賽の河原への巻
(1) 伸吉が、賽の河原の夢を見る。
(2) 伸吉は、幽霊たちに「寺子屋に、居ていい」と言う。小風が、「お前も物好きな男だ」と応じる。
《評者の注》
罪のない物語。訴えることは何もない。説教はない。教訓もない。話が楽しい。
伸吉師匠は気が弱いが男気がある。
唐傘小風は美人でいい女で、化け物にたいして強い。カッコいい。
猫骸骨が愛嬌あり。