三味線弾きの日常。

おもに津軽三味線弾き唄い。
ときどき地歌・上方唄。こっそり義太夫三味線。
三味の音を一人でも多くの人に届けたい。

未来のサムライミュージシャンズ発掘コンテスト 優秀賞受賞!

美の巨人たち。

2008年05月04日 | 鑑賞
来月は安珍清姫に再挑戦なんであります。
そんなところに、
昨日は「美の巨人たち」で
小林古径の連作「清姫」が取り上げられました。


小林古径。
彼の描く清姫の表情は、静かでむしろ哀しげですらある。
日高川で立ちすくむ清姫の顔には怒りも憎しみもなく、
ただ川面に闇がわき起こっている。
鐘に取り付く清姫が、蛇ではなく明らかに龍でしたが…
道成寺のラストシーンといえば、鐘もろとも安珍を焼き殺す蛇身の清姫。
普通なら、そこで終わってしまうけれど、古径の道成寺のラストは違う。
そこには一本の満開の桜だけが描かれている。
川面に広がっていた闇も、鐘もろとも安珍を殺した炎も、跡形もない。
ただただ美しく静かな世界。
清姫の恨みも憎しみも、叶わなかった恋情も、
あるいは安珍の恐怖も苦しみも後悔も、
すべてが赦され、癒され浄化されたあとの世界。

きっと、蛇身に変わり果てて、安珍を道連れにしても、
清姫の想いは消えなかっただろう。
恋しくて苦しくて哀しくて。
画家はそれを確かに救っている。

さて。
来月の道成寺は…。
私が最後に見せたいのは、
ただ一途に安珍を好きだった清姫の哀しみ、でしょうか。

コメント
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