Rくん(年長):
「今日はこの本!」と「たのしいピアノ・レッスン」の楽譜をピアノの譜面台に置きました。
右手のメロディーに左手で伴奏をつける、少し難しい弾き方も載っています。
Rくんは真剣に楽譜を見ながら、伴奏付きの「ちょうちょ」を最後まで弾きました。
右手と左手のタイミングを慎重に合わせて、最高に集中しています。
弾き終わってホッとしたように、本のページをめくりながら、一つ一つの曲に添えてある表現のガイドを読んでいきます。
「『ちょうちょ』は『やさしく』だね。『メリーさんのひつじ』も『やさしく』だ。ほかのは何かな…『ふしぎなポケット』は『たのしく』だ!『ビッグ・ベン』は『しずかに』だね。」
今まで弾いたり歌ったりした曲を、一つ一つ思い出して味わっているのかな。
説明を見て「なるほど、この曲は『しずかに』の感じだ…」と納得しているのが感じられます。
最後にRくんは、一番最後の「たまごとニワトリ」のページを開きました。
習うのはまだ先ですが、タイトルと挿し絵、歌詞が面白く 興味を引かれたようなので、時々一緒に歌って楽しんでいた曲です。
たまごとニワトリ、どっちが先だ? という内容の歌なんですが、この歌に出会った子どもたちと、さあ、どっちが先だか?という議論を戦わすのは愉快です。
子:「タマゴが先でしょ?だってニワトリはタマゴから産まれたんだから」
先生:「でも、そのタマゴはニワトリが産んだんだよ?」
子:「そっかぁ。ニワトリが先なのか…」
先:「でもさ、そのニワトリは、タマゴから産まれたんだよ?」
子:「あれ〜?」
議論は果てしなく続き、大抵は子どもたちが煙に巻かれてウヤムヤに終わっていきます。
Rくんとも、以前に何度か、この議論を戦わせたことがあったのですが、彼はその後もずっと考えを馳せていたのだと思います。
その証拠に、今日は「タマゴが先だよ。ぼくはタマゴが先だと思う」とキッパリ言い切ったのです。
「そうなの?でもそのタマゴは…」と、いつもの議論を吹っかけようとすると、Rくんは言いました。
「タマゴはね、最初に「あった」の。何か、木の穴とか、そういう所にタマゴがあって、そこから初めて、ニワトリが生まれたの。だから、一番初めはタマゴなの!だって動物はみんな、タマゴから生まれるんだから」
「そうか。そのタマゴから、最初のニワトリが生まれたのかー」
「そう! そのニワトリがタマゴを産んで、そこから、ニワトリ、タマゴ、…って、つながっていったの」
6歳の人生の、知恵の限りを総動員して導き出したRくんの結論。
その堂々たる理論にヒバリ先生が思ったのは、何あろう、旧約聖書の冒頭です。
神の言葉により、何もなかった「渾沌(こんとん)」に光が「在り」、それから最初の生き物を造った神は言いました。「生めよ、増えよ、地に満ちよ」と。
同じだ… きっと、それが全宇宙の真理なのかも…
幼い人こそが知り得る真理なのかもしれないよ…