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「ひらいて」 綿矢りさ

2015-08-04 | 本と雑誌


新潮文庫 190ページ 430円+税

クラスの人気者 女子高生 愛が地味な男子たとえが気になり惹かれ始める。しかし、たとえは誰にも気づかれずにつきあい、手紙をやりとりしている女の子美雪がいた。これを知った愛は、美雪に近づき。。。

京都の紫野高校在学中に「インストール」で第38回文藝賞受賞した綿矢りささん。その後2004年に「蹴りたい背中」で芥川龍之介賞を受賞。本作は2012年発表、「蹴りたい背中」の9年後の作品。この間にも3作ありますが、それは読んでいません。読み始めて、すぐに「インストール」「蹴りたい背中」と同じ綿矢ワールドに招待されます。舞台は高校。進学、受験を控えた多感な高校生の内面を綿矢りさのメスで切り開いたという小説です。
本作は主人公 愛の行動について行けないと感じるところもあり。ちょいと行き過ぎじゃないですかね。

綿矢りさの表現。これは他の人では考えつかないというところ何個もあり。メモ。
・後ろ姿を見上げていると甘くて淡い、ほのかな酸味の桜色のお酒が、泡をしゅわしゅわ立てて胸に満ちていく。
・壁にかかった鏡を見ながら、制服のリボンのずれを整える。そして、笑顔の点検。鏡に映る、型通りに笑みを作った顔には、邪気が無くて呆れる。私の笑顔がちょうど、今穿いているソックスの刺繍。表側の真白い生地には、四つ葉のクローバーの刺繍が施されているが、裏返せば緑色の糸がなんの形も成さず、めちゃくちゃに行き交い、ひきつれているだけ。
・愛ちゃんは表面の薄皮と内側の肉が、細い糸でさえつながっていない。完全に分離している。だからなにを言っても私には響かないし、届かない。

本書の話題はセックスシーンの描写。新鮮かつ深い筆致、綿矢りさの世界です。これ以外は共感少なく、ちょいとがっかりな作品でした。

ひらいて (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社
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