日米安全保障条約 第2条「経済的協力」の重要性について

私は、
日米二国間交渉で、「食料自給の原則」「食の安全・安心の原則」に反する農畜産物の輸入や、高額新薬・ワクチンの輸入、著作権法改悪、ISDS条項など、日本にとって不当な米側の要求を受け入れないために、また安全保障面でも、GDP比1%を超える防衛費増、高額な武器・装備の購入、集団的自衛権の行使など、やはり日本にとって不当な米側の要求を受け入れないために、日本の方から積極的に、先手必勝で、トランプ大統領の公約である、特にラストベルト4州(ミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、ウィスコンシン)での製造業再生と雇用創出と全米のインフラ整備のために、日本政府保有の米国債(約126兆円)を活用した「50兆円規模のドル・ドル基金創設」を提案しました。


2月10日の日米首脳会談の前に、大きく報道された、日本資金を活用した約50兆円の市場を生み出し70万人の雇用を創出する「日米成長雇用イニシアチブ」は、私の提案とは似て非なるものですが、いずれにしても、日本から米側に経済協力をする場合は、私は日米安全保障条約第2条を根拠にすることが重要だと思います。その理由は、2点あります。


第一に、米側から要求も要請もされていないのに、日本から公的資金を使って、米国に積極的に経済協力を行うには、それが日本の利益にもなるものであっても、法的根拠があることが重要だからです。


日米安保条約 第2条の条文は、
「締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎を成す原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによって、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する」
となっています。


また、日米安保条約の前文には、
「両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的安定及び福祉の条件を助長することを希望」と書いてあります。


第二に、日米安保条約 第5条「日本の領域における武力攻撃・共通の危険に対処」と第6条「米軍への基地提供」だけでは、日米双方ともにバランスをとるのが難しくなっているからです。世界第二の経済大国となり、海洋進出・世界進出を図る中国が、国際情勢に大きな変化を与えていることが大きな要因です。


中国の東シナ海・南シナ海等での国際法違反行為には、RCEPやAPECの枠組みでの経済制裁とともに、米軍のプレゼンスも必要となってきます。日本は、専守防衛以外の軍事的貢献はできないので、「経済的協力」でバランスをとることが重要だと思います。中国経済にはバブル崩壊のリスクもありますが、このリスクへの対処にも日米の協力が必要です。


日米安保条約 第2条「経済的協力」第5条「日本の領域における武力攻撃・共通の危険に対処」第6条「米軍への基地提供」でバランスをとることによって、双務性を確保することが重要になったのです。


「経済的協力」のポイントは、4年後の大統領選で再選をめざすトランプ大統領にとっての最優先課題である、ラストベルト4州(ミシガン・オハイオ・ペンシルベニア・ウィスコンシン)での製造業再生・雇用創出への、日本の貢献です。


既に、シャープ・ホンハイ(台湾)が、アメリカに、8000億円規模の投資で、最大で3万人~5万人の雇用を創出する液晶パネルの工場を建設する計画であると表明し、立地についてはペンシルベニア州と言われています。非常に賢明な選択だと思います。


トランプ大統領は、任期途中で倒れるか、1期4年で終わるのか、それとも2期8年間、大統領を全うするのか、は、わかりませんが、トランプ氏が大統領である間は、ムダな対立はせず、winwinの関係を構築するのは当然のことです。また、トランプ大統領でなくでも、ラストベルト4州での製造業再生と雇用創出は、サンダース氏の支持者をはじめ全ての米国民が歓迎すると思います。


鴻海・シャープの素早く的確な行動に対して、日本のトヨタ自動車の対応は鈍い、と私は思います。新年早々、1月6日のtweetで、メキシコ工場建設についてトランプ氏から猛攻撃を受けたことに対して、トヨタの豊田章男社長は、1月9日に、今後5年間に100億ドルを投資すると表明しましたが、残念ながらピントが外れていると思います。


本来なら、トヨタは、トランプ大統領の要求に対して、メキシコの新工場建設の中止であるとか、米国で販売する車は、米国で現地生産するという「地産地消」原則に対応しなければならないのですが、もちろん、それは大変なことです。だからこそ、トヨタは、素早く、ラストベルト4州に、例えば、電気自動車EVの工場を建設するとか、燃料自動車FCVの工場を建設して10万人の雇用を創出するとか、あるいは、日米共同で「水素社会」を実現するために、また、米国製造業再生のために、中国アリババのジャック・マー会長のように、今後10年間で100万人の雇用を創出する構想を、示すべきだと思います。


トヨタも、まず、ラストベルト4州での工場建設・10万人の雇用創出を宣言・実行すれば、トランプ大統領から感謝され、中長期的な取り組みができる基盤ができると思います。


米国は、製造業再生もインフラ整備も、対中国の巨大貿易赤字の縮小も、日本の協力なしでは達成できないのではないか、と、私は思います。


安倍総理は、2月10日の首脳会談前に、米国でのインフラ整備で、50兆円の市場を生み出し、70万人の雇用を創出する「日米成長雇用イニシアチブ」の構想を示しましたが、インフラ整備=公共事業による雇用創出は一時的なものであり、真の米国経済の再生・成長戦略にはなりません。中小企業も含めた、日本の製造業の協力で、米国の製造業再生・雇用創出を実現し、日米winwinの関係を構築すべきだと思います。


●外務省HP 日米安全保障条約

●はたともこPPPA「ドル・ドル基金

 

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