「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」 東京国立博物館・平成館

東京国立博物館・平成館
「特別展 国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」
2019/3/26~6/2



東京国立博物館・平成館で開催中の「特別展 国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」の報道内覧会に参加してきました。

平城京遷都により建立され、823年に空海が嵯峨天皇より賜った東寺は、以来、真言密教の根本道場として多くの人々の信仰を集めてきました。

その東寺に長らく伝わって来た文化財、ないし寺宝が、約110件ほどやって来ました。中でも空海が密教の真髄を世に知らしめるべく、講堂に築き上げた立体曼荼羅のうち、史上最多の15体の仏像ほど出品されました。


「後七日御修法」の道場の再現展示

空海によってはじめられ、真言宗で最も重要の儀式、後七日御修法の道場が再現されました。元は宮中の真言院で行われていて、国家の安泰などが祈願され、現在は東寺にて開かれているものの、修法そのものは秘密のため、内容は明らかにされていません。しかしながら今回の展覧会のため、一部にレプリカを用いつつ、特別に設えが再現されていて、臨場感のある形で道場内の様子を知ることが出来ました。


重要文化財「金銅舎利塔」 平安時代・12世紀 東寺

うち「金銅舎利塔」は、本尊的な役割を果たした塔で、実際の修法では、隔年で金剛界と胎蔵界の曼荼羅の前に置かれました。なお修法は、両曼荼羅を年毎の交代で儀式の中心としていて、曼荼羅の前に壇が築かれ、周囲に五大尊像や十二天像などが掛けられました。


国宝「五大尊像」 平安時代・大治2年(1127) 東寺

その「五大尊像」が並々ならぬ迫力を見せていました。いずれも赤々とした火炎に包まれた明王を表していて、かつての像が1127年の火災で焼失したことから、鳥羽院の命によって描き直されました。いわゆる多面多臂の醜怪な姿ながらも、限りなく優美に描こうとした、当時の貴族の美意識も反映されているそうです。


国宝「十二天像」 平安時代・大治2年(1127) 京都国立博物館

「十二天像」も同様に火災で失われた後に描き直された作品で、截金や彩色が鮮やかに残っていました。平安仏画の優品として知られています。(五大尊像、十二天像ともに展示替えあり。)


国宝「金銅密教法具」 中国 唐時代・9世紀 東寺

また修法関連では、空海が唐より持ち帰ったとされる「密教法具」も見逃せません。金剛盤の上に五鈷鈴と五鈷杵が乗ったセットで、9世紀の品にも関わらず、金色の目映いばかりの光を放っていました。


国宝「山水屛風」 平安時代・11世紀 京都国立博物館 展示期間:3/26~4/21

寺宝にも見逃せない作品が少なくありません。一例が「山水屏風」で、密教の灌頂の儀礼に用いられ、平安期に制作された、現存最古の山水屏風として伝えられています。


国宝「天蓋」 平安時代・9世紀 東寺

また空海の住居跡の西院に安置された、不動明王坐像の上の「天蓋」も見事で、周縁に蓮華の花弁と、中心に菩薩が舞うように描かれていました。写真では色が失われているように見えるかもしれませんが、実際に前にすると、菩薩の衣などが実に流麗に表現されていることが分かりました。


重要文化財「八部衆面(迦楼羅、摩睺羅、夜叉、緊那羅、阿修羅)」 鎌倉時代・13世紀 東寺

インドで釈迦を護衛するための神々である「八部衆面」も、どことなくコミカルな表情を見せていて、東寺では舎利会の行列にて、僧侶の乗る輿を担ぐ人がつけていました。また同じく仮面で、灌頂会の行列に用いられたとされる、「十二天面」の穏やかな様子にも魅せられました。


国宝「後宇多天皇宸翰東寺興隆条々事書」 後宇多天皇筆 鎌倉時代・徳治3年(1308) 東寺 展示期間:3/26~4/30

書では真言密教に帰依した後宇多天皇による「宸翰東寺興隆条々事書」も目をひくのではないでしょうか。そのほか、展示は前後しますが、冒頭には空海の名筆、「風信帖」も出展されていました。ともかく優品に次ぐ優品で、見て飛ばすことは出来ません。


「特別展 国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」第4章「曼荼羅の世界」会場風景

目玉の立体曼荼羅は第2会場のラストに公開されていました。講堂にある21体のうち、国宝11体、重要文化財4体からなる計15体が一堂に会していて、全てがケースなしの露出で展示されていました。また国宝11体の仏像に関しては、360度の全方位から鑑賞することも出来ました。やや強めの照明ゆえか、仏像の細部が際立って見えるのも特徴で、あるべき場所の東寺で見る姿も趣深いものがありますが、現地よりも仏像の姿形が良く分かるかもしれません。


国宝「帝釈天騎象像」 平安時代・承和6年(839)  東寺

立体曼荼羅の配置は東寺とは大きく異なりました。東寺では中央に如来、右に菩薩、そして左に菩薩の諸像が並び、周囲を四天王が囲んでいますが、博物館では手前に四天王、右に菩薩、左に明王が並び、奥に如来像が並んでいました。そして一番手前の帝釈天のみ、ほかの諸像と反対を向いていました。なお本像は、一般会期期間中においても撮影が可能です。


国宝「金剛薩埵菩薩坐像」 平安時代・承和6年(839)  東寺

歯を剥き出しにしつつ、凄まじい表情で立つ「増長天」をはじめ、重々しい水牛に跨っては異形を見せる「大威徳明王騎牛像」など、思わず後ずさりするほどに迫力がある像ばかりでしたが、私としては温和な笑みを浮かべているようにも見える「金剛薩埵菩薩坐像」など、一連の菩薩像の端正な姿に心を奪われました。

最後に館内の状況です。報道内覧会に加え、再度、会期早々の平日の昼間に観覧して来ました。


国宝「大威徳明王騎牛像」 平安時代・承和6年(839) 東寺

入館のための待ち時間もなく、場内も一部の書の展示のみ、若干混雑していましたが、どの作品も並ぶことなくスムーズに見られました。


国宝「増長天立像」 平安時代・承和6年(839) 東寺

既に会期もあと一週間ほどで一ヶ月を迎えようとしていますが、現段階において、土日を含めても入場規制は行われていません。とはいえ、今年は改元に伴う10連休が控えるなど、GWには大変な人出となることも予想されます。金曜と土曜日の夜間開館も有用となりそうです。



それにしても、まさかこれほどのスケールで東寺の寺宝を目の当たりに出来るとは思いませんでした。東京における東寺展としては決定版と捉えて間違いありません。


現存最古の彩色の両界曼荼羅で知られる、国宝の「西院曼荼羅」が、4月23日より5月6日までの限定で出品されます。そのタイミングで私も改めて見てくるつもりです。


「特別展 国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」会場入口

6月2日まで開催されています。おすすめします。

「特別展 国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」@toji2019) 東京国立博物館・平成館(@TNM_PR
会期:2019年3月26日(火)〜6月2日(日)
時間:9:30~17:00。
 *毎週金・土曜は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。5月7日(火)。但し4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館。
料金:一般1600(1300)円、大学生1200(900)円、高校生900(600)円。中学生以下無料
 *( )は20名以上の団体料金。
 *本展観覧券で、会期中観覧日当日1回に限り、総合文化展(平常展)も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。

注)写真は報道内覧会時に主催者の許可を得て撮影したものです。
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