川端龍子「草炎」 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
川端龍子「草炎」
7/19〜9/10

東京国立近代美術館のMOMATコレクションにて、川端龍子の「草炎」が公開されています。


川端龍子「草炎」 1930(昭和5)年 文化庁管理換(東京国立近代美術館)

ごくありふれた夏の雑草が六曲一双の大画面に広がっています。1930年、川端龍子は、大田区大森の自宅近くに生えていた草を題材にして描きました。

金色の草花が闇夜に浮かび上がる姿は神秘的とも呼べるしれません。龍子は、平安時代に多く制作された、紺地金泥の装飾経のスタイルを借りて表現しました。熱心な仏教徒でもあった龍子です。おそらくはその縁から装飾経に関心を寄せたと言われています。

「その制作の結果の収穫としては、題材に雑草を主題にしたこと、そうしたものを紺地金泥、しかも六曲一双にもしたという、その計画そのものの先鞭のそれである。」 川端龍子 日記 1930年8月2日付 *「川端龍子ー超ド級の日本画」(山種美術館)カタログより引用。(110頁)


川端龍子「草炎」(部分) 1930(昭和5)年 文化庁管理換(東京国立近代美術館)

金泥の一部には青み、ないし赤みを帯びていて、龍子が雑草のニュアンスを細かに変えながら表していることも分かります。ともすると見過ごされがちな雑草を全面に捉えて描くこと自体にも、龍子の機知が伺えるのではないでしょうか


「草炎」を似た構図をとる作品として知られるのが、「草の実」(大田区立龍子記念館蔵)です。同じく濃紺の装飾経のスタイルを借り、今度は秋の草花を金やプラチナの泥にて描きました。現在は山種美術館で開催中の「川端龍子ー超ド級の日本画」に出展中(8/20まで)です。ご覧になった方も多いかもしれません。

先に描いたのが「草炎」でした。第2回青龍展へ出品。評判を呼び、久邇宮家らが所望したそうです。その声に応えるために龍子は、「草炎」の翌年、「草の実」を制作しました。

「草炎」からは暑い夏の湿気を、「草の実」からは秋の涼風を感じられるような気がしてなりません。ともに甲乙つけがたい魅力が存在します。竹橋と広尾を行き来しながら見比べるのも面白いかもしれません。


川端龍子「パラオ島スケッチ アイライ村 アバイ内部」 1934(昭和9)年 

またMOMATコレクションでは、龍子がパラオなどの南方で描いたスケッチも数点展示中です。こちらもお見逃しなきようおすすめします。


川端龍子「草炎」(部分) 1930(昭和5)年 文化庁管理換(東京国立近代美術館)

川端龍子の「草炎」は、東京国立近代美術館の所蔵品ギャラリー、1室「ハイライト」にて、9月10日まで公開されています。

川端龍子「草炎」 東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー「MOMAT コレクション」(@MOMAT60th) 
会期:7月19日(水)〜9月10日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~17:00
 *毎週金曜・土曜日は20時まで開館。
 *企画展「日本の家」の会期中の金曜・土曜日は21時まで開館。
 *入館は閉館30分前まで
料金:一般500(400)円、大学生250(200)円、高校生以下、65歳以上無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *5時から割引:一般300円、大学生150円。
 *無料観覧日(所蔵作品展のみ):8月6日(日)、9月3日(日)。
場所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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