都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「Moving Plants 渡邊耕一展」 資生堂ギャラリー」
資生堂ギャラリー
「Moving Plants 渡邊耕一展」
1/13~3/25

資生堂ギャラリーで開催中の「Moving Plants 渡邊耕一展」を見てきました。
東アジア原産で、日本でも雑草として生息し、世界各地に広まった多年生植物、「イタドリ」の姿を、10年もかけて撮り続けた一人の写真家がいました。
その人物こそが渡邊耕一です。1967年に大阪で生まれ、1990年に大阪市立大学文学部心理学専攻を卒業。のちにIMI研究所写真コース修了し、主に植物をテーマとした写真作品を作り続けています。

渡邊が初めてイタドリに出会ったのは、今から約15年前、旅先の北海道の平原でした。風景の隅々に巨大な草があることに気づいた渡邊は、植物図鑑を頼りに、植物の名を探しました。それが「オオイタドリ」という名前でした。そしてイタドリの葉を眺めているうち、かつて自宅付近の小川の土手に、たくさんの白い花を咲かせていた姿を思い出したそうです。

イタドリは古くから日本に根付いていた植物でした。例えば江戸時代の「和漢三才図会」でも、日本書紀や枕草子の逸話が引用されている上、植物の薬効や特性についての記述もあります。また薬草だけなく、食材として利用する地域もありました。もはや文化の中に入り込んでいると言って良いかもしれません。
イタドリは19世紀に入って世界へと広まりました。きっかけは、ドイツの医者で、植物学者でもあったシーボルトでした。1823年、オランダ政府の委嘱を受けたシーボルトは、オランダ商館医として長崎の出島へとやって来ました。出島内にて開業し、のちに鳴滝塾を開設しては、西洋医学を教えました。さらに日本の自然誌的研究を行い、収集した植物を大量に本国へ持ち帰りました。その中にイタドリも含まれていたようです。
今でもオランダのライデンの植物園には、シーボルトの植えた個体が生きていて、「シーボルトが導入したイタドリ」とラベルの付されたイタドリも植えられています。また1850年には、イギリスのキュー王立植物園へもイタドリが届けられました。つまりイタドリは、長崎に滞在していたシーボルトにより、園芸用のアイテムとしてヨーロッパに持ち出され、世界へと広まったわけでした。

イタドリの生命力は強く、次第に野生化し、土地の生態系を変えてしまうほど繁殖しました。特に地下茎が強靭で、コンクリートやアスファルトを突き破るほどの力を持っているそうです。現在では国際自然保護連合により、侵略的外来種ワースト100に選定され、駆除の対象と化しました。実際にイギリスでは環境保護法により、イタドリを含む土壌の運搬が禁止されているほか、イタドリの天敵とされる虫を放つ作業も行われているそうです。ただし一筋縄ではいかないのか、今の段階において虫による防除は機能していません。

会場では、渡邊が撮影した各地域のイタドリをはじめ、駆除に関する研究所、さらには花卸売場の写真のほか、シーボルトに関する資料などを展示しています。
いわゆる写真展ではありますが、フィールドワークは大変に綿密で、イタドリに関するドキュメンタリーを見ているような気持ちにさせられました。詳細な解説シートしかり、かなり読ませます。

イタドリの旺盛な生命力は、プリント作品からもひしひしと伝わりました。今後、この緑は、いかなる生態系を生み出すのでしょうか。
奥の小展示室のみ撮影が可能です。3月25日まで開催されています。
「Moving Plants 渡邊耕一展」 資生堂ギャラリー(@ShiseidoGallery)
会期:1月13日(土)~3月25日(日)
休廊:月曜日。
料金:無料
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
「Moving Plants 渡邊耕一展」
1/13~3/25

資生堂ギャラリーで開催中の「Moving Plants 渡邊耕一展」を見てきました。
東アジア原産で、日本でも雑草として生息し、世界各地に広まった多年生植物、「イタドリ」の姿を、10年もかけて撮り続けた一人の写真家がいました。
その人物こそが渡邊耕一です。1967年に大阪で生まれ、1990年に大阪市立大学文学部心理学専攻を卒業。のちにIMI研究所写真コース修了し、主に植物をテーマとした写真作品を作り続けています。

渡邊が初めてイタドリに出会ったのは、今から約15年前、旅先の北海道の平原でした。風景の隅々に巨大な草があることに気づいた渡邊は、植物図鑑を頼りに、植物の名を探しました。それが「オオイタドリ」という名前でした。そしてイタドリの葉を眺めているうち、かつて自宅付近の小川の土手に、たくさんの白い花を咲かせていた姿を思い出したそうです。

イタドリは古くから日本に根付いていた植物でした。例えば江戸時代の「和漢三才図会」でも、日本書紀や枕草子の逸話が引用されている上、植物の薬効や特性についての記述もあります。また薬草だけなく、食材として利用する地域もありました。もはや文化の中に入り込んでいると言って良いかもしれません。
イタドリは19世紀に入って世界へと広まりました。きっかけは、ドイツの医者で、植物学者でもあったシーボルトでした。1823年、オランダ政府の委嘱を受けたシーボルトは、オランダ商館医として長崎の出島へとやって来ました。出島内にて開業し、のちに鳴滝塾を開設しては、西洋医学を教えました。さらに日本の自然誌的研究を行い、収集した植物を大量に本国へ持ち帰りました。その中にイタドリも含まれていたようです。
今でもオランダのライデンの植物園には、シーボルトの植えた個体が生きていて、「シーボルトが導入したイタドリ」とラベルの付されたイタドリも植えられています。また1850年には、イギリスのキュー王立植物園へもイタドリが届けられました。つまりイタドリは、長崎に滞在していたシーボルトにより、園芸用のアイテムとしてヨーロッパに持ち出され、世界へと広まったわけでした。

イタドリの生命力は強く、次第に野生化し、土地の生態系を変えてしまうほど繁殖しました。特に地下茎が強靭で、コンクリートやアスファルトを突き破るほどの力を持っているそうです。現在では国際自然保護連合により、侵略的外来種ワースト100に選定され、駆除の対象と化しました。実際にイギリスでは環境保護法により、イタドリを含む土壌の運搬が禁止されているほか、イタドリの天敵とされる虫を放つ作業も行われているそうです。ただし一筋縄ではいかないのか、今の段階において虫による防除は機能していません。

会場では、渡邊が撮影した各地域のイタドリをはじめ、駆除に関する研究所、さらには花卸売場の写真のほか、シーボルトに関する資料などを展示しています。
いわゆる写真展ではありますが、フィールドワークは大変に綿密で、イタドリに関するドキュメンタリーを見ているような気持ちにさせられました。詳細な解説シートしかり、かなり読ませます。

イタドリの旺盛な生命力は、プリント作品からもひしひしと伝わりました。今後、この緑は、いかなる生態系を生み出すのでしょうか。
「渡邊展Moving Plants」がスタートしました📷こちらは内覧会の様子。和やかな雰囲気の中、展示の見どころなどについて渡邊さんにお話しいただきました。 pic.twitter.com/i8mRMJZsrJ
— 資生堂ギャラリー (@ShiseidoGallery) 2018年1月16日
奥の小展示室のみ撮影が可能です。3月25日まで開催されています。
「Moving Plants 渡邊耕一展」 資生堂ギャラリー(@ShiseidoGallery)
会期:1月13日(土)~3月25日(日)
休廊:月曜日。
料金:無料
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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