都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」 すみだ北斎美術館
すみだ北斎美術館
「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」
2021/2/9~4/4
すみだ北斎美術館で開催中の「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」を見てきました。
彩色に工夫が凝らされ、絵師の筆触がダイレクトに残る肉筆画は、浮世絵において版画よりも先行して作られてきました。
そうした浮世絵の肉筆画に着目したのが「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」で、岩佐又兵衛にはじまり、菱川師宣や葛飾北斎、それ歌川国芳などの60名の浮世絵師の作品、約125点が紹介されていました。(前後期で全点入れ替え。一部は巻き替え。各会期で半数を展示。)
さて今回の「筆魂」展の特徴は、浮世絵の通史を肉筆画で追えるのと同時に、新発見や再発見、初公開の作品が少なくないことでした。それは重要美術品などと合わせると、実に全出品作の3割程度を占める40点に及んでいました。
また古山師重や松野親信、鳥山石燕に月斎峨眉丸といった、必ずしも有名ではない絵師の作品も多く公開されていて、それこそレアな絵師のレアな作品を楽しめる浮世絵展でもありました。
冒頭は浮世絵の先駆とされる岩佐又兵衛の作品が展示されていて、中でもかつて六曲一双の「金谷屏風」として知られ、現在は掛軸となって分蔵された「弄玉仙図」が目立っていました。笙で鳴き声を出しては鳳凰を呼ぶ姿を捉えていて、衣服などを象る滑らかな線が殊更に魅力的に思えました。まさにこれぞタイトルならぬ「線の引力」と呼べるのではないでしょうか。
菱川師宣の「二美人と若衆図」は絵師の最盛期の作品とされていて、着物の文様などが実に精緻に表されていました。すみだ北斎美術館は薄型の展示ケースも多いため、肉筆の細かな表現を目と鼻の先で見られるのも嬉しいポイントと言えるかもしれません。
黒い夏物の着物を纏う女性が化粧をする光景を描いた、喜多川歌麿の「夏姿美人図」も絶品でした。着物の下にはうっすらと水色の襦袢が透けて見えて、すらりとした立ち姿ながらも妖艶に感じられました。
新発見の歌川豊国の「三代目中村歌右衛門の急変化図屏風」も目立っていました。三代目中村歌右衛門による変化舞踏を8面に表した屏風絵で、それぞれの一瞬のポーズを切り取るように描いていました。各々が異なった様態ながらも、全体として均整がとれているように見えるのは、豊国の技量によるものかもしれません。
葛飾北斎の「合鏡美人図」は合わせ鏡で髷の具合を確かめる女性を描いた作品で、実物としては本展で初めて公開されました。また同じく北斎ではビゲローの旧蔵品とされる「登龍図」も充実していて、黒い虚空を背景に龍がとぐろを巻きながら登っていく様子を示していました。龍の体に墨の濃淡などが細かに施されているからか、立体感も巧みに表されていて、ぐるりと向きを変えては画面から飛び出してくるような味わいも感じられました。
葛飾北斎が、勝川派絵師たちと歌川豊国とともに描いた「青楼美人繁昌図」もゴージャスな作品と呼べるかもしれません。色とりどりで艶やかな衣装を身に纏った遊女たちと太鼓持ちを主題としていて、あたかも互いの遊女たちの会話が伝わるかのように臨場感がありました。この作品からは、北斎と不仲説が伝えられた勝川春章門下の兄弟子の春好や、ライバルとして知られる歌川豊国との意外な交流関係を見ることができるそうです。
展示替えの情報です。会期中、前後期で全ての作品が入れ替わります。かつての「金谷屏風」である岩佐又兵衛の「弄玉仙図」も「龐居士図」に分けて公開されます。
「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」(作品リスト)
前期:2月9日(火)~3月7日(日)
後期:3月9日(火)~4月4日(日)
事前予約制ではありませんが、展示室内の混雑防止のために入場制限する場合があります。私は祝日の夕方に出かけましたが、まだ会期早々だからか、特に混み合っていませんでした。但し充実した内容だけに今後、混み合う可能性も考えられます。またミュージアムショップが10:30~16:00までの時短営業となっていました。最新の情報は公式ツイッターアカウント(@HokusaiMuseum)でご確認下さい。
4月4日まで開催されています。おすすめします。
「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」 すみだ北斎美術館(@HokusaiMuseum)
会期:2021年2月9日(火) ~4月4日(日)
*前期:2月9日(火)~3月7日(日)、後期:3月9日(火)~4月4日(日)
休館:月曜日。
時間:9:30~17:30(入場は17:00まで)
料金:一般1200円、大学・高校生・65歳以上900円、中学生400円。小学生以下無料。
*団体受付は中止。
*観覧日当日に限り、常設展も観覧可。
住所:墨田区亀沢2-7-2
交通:都営地下鉄大江戸線両国駅A3出口より徒歩5分。JR線両国駅東口より徒歩10分。
「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」
2021/2/9~4/4
すみだ北斎美術館で開催中の「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」を見てきました。
彩色に工夫が凝らされ、絵師の筆触がダイレクトに残る肉筆画は、浮世絵において版画よりも先行して作られてきました。
そうした浮世絵の肉筆画に着目したのが「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」で、岩佐又兵衛にはじまり、菱川師宣や葛飾北斎、それ歌川国芳などの60名の浮世絵師の作品、約125点が紹介されていました。(前後期で全点入れ替え。一部は巻き替え。各会期で半数を展示。)
さて今回の「筆魂」展の特徴は、浮世絵の通史を肉筆画で追えるのと同時に、新発見や再発見、初公開の作品が少なくないことでした。それは重要美術品などと合わせると、実に全出品作の3割程度を占める40点に及んでいました。
また古山師重や松野親信、鳥山石燕に月斎峨眉丸といった、必ずしも有名ではない絵師の作品も多く公開されていて、それこそレアな絵師のレアな作品を楽しめる浮世絵展でもありました。
【ニュース】新発見の《青楼美人繁昌図》など肉筆浮世絵、約125点を展示 ー すみだ北斎美術館先駆とされる岩佐又兵衛から、浮世絵の始祖である菱川師宣、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川国芳ら60人の作品が並ぶ。https://t.co/D4bzcjix8W$青楼美人繁昌図 #すみだ北斎美術館 #浮世絵 #肉筆 pic.twitter.com/CMlVjPoO3V
— インターネットミュージアム (@InternetMuseum) February 8, 2021
冒頭は浮世絵の先駆とされる岩佐又兵衛の作品が展示されていて、中でもかつて六曲一双の「金谷屏風」として知られ、現在は掛軸となって分蔵された「弄玉仙図」が目立っていました。笙で鳴き声を出しては鳳凰を呼ぶ姿を捉えていて、衣服などを象る滑らかな線が殊更に魅力的に思えました。まさにこれぞタイトルならぬ「線の引力」と呼べるのではないでしょうか。
菱川師宣の「二美人と若衆図」は絵師の最盛期の作品とされていて、着物の文様などが実に精緻に表されていました。すみだ北斎美術館は薄型の展示ケースも多いため、肉筆の細かな表現を目と鼻の先で見られるのも嬉しいポイントと言えるかもしれません。
黒い夏物の着物を纏う女性が化粧をする光景を描いた、喜多川歌麿の「夏姿美人図」も絶品でした。着物の下にはうっすらと水色の襦袢が透けて見えて、すらりとした立ち姿ながらも妖艶に感じられました。
新発見の歌川豊国の「三代目中村歌右衛門の急変化図屏風」も目立っていました。三代目中村歌右衛門による変化舞踏を8面に表した屏風絵で、それぞれの一瞬のポーズを切り取るように描いていました。各々が異なった様態ながらも、全体として均整がとれているように見えるのは、豊国の技量によるものかもしれません。
葛飾北斎の「合鏡美人図」は合わせ鏡で髷の具合を確かめる女性を描いた作品で、実物としては本展で初めて公開されました。また同じく北斎ではビゲローの旧蔵品とされる「登龍図」も充実していて、黒い虚空を背景に龍がとぐろを巻きながら登っていく様子を示していました。龍の体に墨の濃淡などが細かに施されているからか、立体感も巧みに表されていて、ぐるりと向きを変えては画面から飛び出してくるような味わいも感じられました。
葛飾北斎が、勝川派絵師たちと歌川豊国とともに描いた「青楼美人繁昌図」もゴージャスな作品と呼べるかもしれません。色とりどりで艶やかな衣装を身に纏った遊女たちと太鼓持ちを主題としていて、あたかも互いの遊女たちの会話が伝わるかのように臨場感がありました。この作品からは、北斎と不仲説が伝えられた勝川春章門下の兄弟子の春好や、ライバルとして知られる歌川豊国との意外な交流関係を見ることができるそうです。
展示替えの情報です。会期中、前後期で全ての作品が入れ替わります。かつての「金谷屏風」である岩佐又兵衛の「弄玉仙図」も「龐居士図」に分けて公開されます。
「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」(作品リスト)
前期:2月9日(火)~3月7日(日)
後期:3月9日(火)~4月4日(日)
事前予約制ではありませんが、展示室内の混雑防止のために入場制限する場合があります。私は祝日の夕方に出かけましたが、まだ会期早々だからか、特に混み合っていませんでした。但し充実した内容だけに今後、混み合う可能性も考えられます。またミュージアムショップが10:30~16:00までの時短営業となっていました。最新の情報は公式ツイッターアカウント(@HokusaiMuseum)でご確認下さい。
4月4日まで開催されています。おすすめします。
「筆魂 線の引力・色の魔力ー又兵衛から北斎・国芳まで」 すみだ北斎美術館(@HokusaiMuseum)
会期:2021年2月9日(火) ~4月4日(日)
*前期:2月9日(火)~3月7日(日)、後期:3月9日(火)~4月4日(日)
休館:月曜日。
時間:9:30~17:30(入場は17:00まで)
料金:一般1200円、大学・高校生・65歳以上900円、中学生400円。小学生以下無料。
*団体受付は中止。
*観覧日当日に限り、常設展も観覧可。
住所:墨田区亀沢2-7-2
交通:都営地下鉄大江戸線両国駅A3出口より徒歩5分。JR線両国駅東口より徒歩10分。
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