都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「建築家 グンナール・アスプルンド展」 松下電工汐留ミュージアム 4/15
松下電工汐留ミュージアム(港区東新橋1-5-1 松下電工ビル4階)
「建築家 グンナール・アスプルンド -癒しのランドスケープ- 」
2/11-4/16(会期終了)
先日まで汐留の松下電工ミュージアムにて開催されていた、近代スウェーデンを代表する建築家、グンナール・アスプルンド(1885-1940)の展覧会へ行ってきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/cf/029ab345af25db6ca6a9b35e7e01b8ba.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/2f/1a20cad75b1166ba7120a84c21e24ce5.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/c6/3646128ca5d7453c7d8c923a738a76dd.jpg)
飽きのこないデザインと、時代を感じさせないフォルム。ともかくアスプルンドの設計した建築物は、今から約70年前に造られたものだとは到底思えないほど古びていません。針葉樹林と緩やかな丘の映えるスウェーデンの美しい景色を取り込んだ「森の墓地」(1915-40)や「夏の家」(1937)。いずれも大地へ敬意を払うかのように、緑に包まれながらひっそりと建物が佇んでいます。また大きな写真で紹介された「森の墓地」の一棟の十字架。あくまでも自然と調和して、重要なランドマークとなりながら静かに景色へ溶け込んでいます。さらにはリステール州裁判所(1917-21)のまるでチャペルのような穏やかな空間と、カール・ヨーハン学校(1933-37)の職員サロンにおける居心地の良さ。副題の「癒し」というキーワードも、アスプルンドの場合は陳腐に聞こえてきません。建物と、その周囲の自然に包まれる感覚を感じます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/bf/b92379c213506a141d997f5ebcacd894.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/b5/c2dde771f9bc61e1f847855a68abab08.jpg)
モダニズムの原初としても紹介されるアスプルンドですが、彼は機能性だけを努めて追求した建築家というわけではありません。例えばストックホルム市立図書館(1920-28)での巨大な円柱型の吹き抜けによる大閲覧室。大きな空間の中で、本が緩やかな曲線をなぞって並ぶ様子は美しくまた壮快ですが、実際に閲覧室へ本をどれだけ置けるかとなると、やや分が悪いかもしれない。しかし本を手に取って、その匂いと重さを感じながら、一枚ずつページをめくるのに相応しい空間とはまさにあのような場のことを言うのでしょう。本が建物の一部となって、あたかもインテリアとなるかのように機能している。また上部の壁面の装飾も見逃せません。シンプルな構成をとりながら、決して無味乾燥にならないアスプルンドの建築は、細部への丁寧な処理からも由来しているように感じられました。森の火葬場の扉に配されていたアラベスクも同様です。
さて、このような素晴らしい建築家を紹介してくれた汐留ミュージアムには大いに感謝したいところですが、ともかく今回に限っては、展示場があまりにも狭かったと言わざるを得ません。大画面のスクリーンにアスプルンドの建物を映し出したりするなど、なるべく狭さを感じさせない構成をとってはいましたが、会場へ作品を詰め込み過ぎた印象は否めませんでした。次回はもっと大きなスペースにてアスプルンドの作品を紹介していただきたい。その点ではやや消化不良気味な展覧会でもありました。
*アスプルンドについてはこちらのサイトがおすすめです。(日本語です。)
「建築家 グンナール・アスプルンド -癒しのランドスケープ- 」
2/11-4/16(会期終了)
先日まで汐留の松下電工ミュージアムにて開催されていた、近代スウェーデンを代表する建築家、グンナール・アスプルンド(1885-1940)の展覧会へ行ってきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/cf/029ab345af25db6ca6a9b35e7e01b8ba.jpg)
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飽きのこないデザインと、時代を感じさせないフォルム。ともかくアスプルンドの設計した建築物は、今から約70年前に造られたものだとは到底思えないほど古びていません。針葉樹林と緩やかな丘の映えるスウェーデンの美しい景色を取り込んだ「森の墓地」(1915-40)や「夏の家」(1937)。いずれも大地へ敬意を払うかのように、緑に包まれながらひっそりと建物が佇んでいます。また大きな写真で紹介された「森の墓地」の一棟の十字架。あくまでも自然と調和して、重要なランドマークとなりながら静かに景色へ溶け込んでいます。さらにはリステール州裁判所(1917-21)のまるでチャペルのような穏やかな空間と、カール・ヨーハン学校(1933-37)の職員サロンにおける居心地の良さ。副題の「癒し」というキーワードも、アスプルンドの場合は陳腐に聞こえてきません。建物と、その周囲の自然に包まれる感覚を感じます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3e/bf/b92379c213506a141d997f5ebcacd894.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5e/b5/c2dde771f9bc61e1f847855a68abab08.jpg)
モダニズムの原初としても紹介されるアスプルンドですが、彼は機能性だけを努めて追求した建築家というわけではありません。例えばストックホルム市立図書館(1920-28)での巨大な円柱型の吹き抜けによる大閲覧室。大きな空間の中で、本が緩やかな曲線をなぞって並ぶ様子は美しくまた壮快ですが、実際に閲覧室へ本をどれだけ置けるかとなると、やや分が悪いかもしれない。しかし本を手に取って、その匂いと重さを感じながら、一枚ずつページをめくるのに相応しい空間とはまさにあのような場のことを言うのでしょう。本が建物の一部となって、あたかもインテリアとなるかのように機能している。また上部の壁面の装飾も見逃せません。シンプルな構成をとりながら、決して無味乾燥にならないアスプルンドの建築は、細部への丁寧な処理からも由来しているように感じられました。森の火葬場の扉に配されていたアラベスクも同様です。
さて、このような素晴らしい建築家を紹介してくれた汐留ミュージアムには大いに感謝したいところですが、ともかく今回に限っては、展示場があまりにも狭かったと言わざるを得ません。大画面のスクリーンにアスプルンドの建物を映し出したりするなど、なるべく狭さを感じさせない構成をとってはいましたが、会場へ作品を詰め込み過ぎた印象は否めませんでした。次回はもっと大きなスペースにてアスプルンドの作品を紹介していただきたい。その点ではやや消化不良気味な展覧会でもありました。
*アスプルンドについてはこちらのサイトがおすすめです。(日本語です。)
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
« 東京都交響楽... | ブログリンク » |
ランドスケープ模型で十字架の道を追体験できるのが良かったです。緩やかにうねる瞑想の丘、歩くと共に姿を現す火葬場、そして劇的かつ合理的な内部動線。とてもよく練られた自然と建物の関係に感動しました。
でも、通路ほどの巾しかないスペースに両面展示されると、ちょっと混むだけで身動き取れなくなって、困りますよね。広ーいロビーがあるので、そちらと併用してくれればいいのに。。。
『昨日はわたし 今日はあなた』
ちょっと加工しました。
素敵な展覧会でしたよね。
汐留はわたしにはヒット率の高い場所です。
映像も優れていたと思います。
でも確かに・・・せまかったですね。
早速のコメントとTBをありがとうございます。
>ランドスケープ模型で十字架の道を追体験
あれは良かったですよね。
まるでその場に立っているかのようでした。
>練られた自然と建物の関係に感動
そうですよね。
自然を取り込んだとでも言うのでしょうか、
建築も自然とともに育まれているように感じました。
>混むだけで身動き取れなくなって
ちょっと狭かったですよね…。
映像を使って工夫していたとは思いますが…。
@遊行七恵さん
こんばんは。
コメントとTBをありがとうございます。
こんな素晴らしい建築家がいたとは全く知りませんでした。
>映像も優れていたと思います。
ロビーの映像も拝見しました。
良く出来ていましたよね。
DVDが欲しいくらいです!