都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ダ・ヴィンチ~モナ・リザ 25の秘密」 日比谷公園ダ・ヴィンチミュージアム
日比谷公園ダ・ヴィンチミュージアム(日比谷公園第二花壇内特設会場)
「特別展 ダ・ヴィンチ~モナ・リザ 25の秘密」
2010/12/7~2011/2/20

日比谷公園にレオナルド・ダ・ヴィンチの英知が結集します。日比谷公園ダ・ヴィンチミュージアムで開催中の「特別展 ダ・ヴィンチ~モナ・リザ25の秘密」のプレスプレビューに参加してきました。
チラシにも「エンタテイメントエキシビション」と記されている通り、例えばレオナルドの絵画が展示されたいわゆる美術展ではありません。

日比谷公園「ダ・ヴィンチミュージアム」
日比谷公園の大噴水の前に設けられたパビリオン「ダ・ヴィンチミュージアム」内には、レオナルドが考案し実験を重ねた様々な発明品の模型の他、「モナ・リザ」の精巧な複製パネル、また「最後の晩餐」の実寸大映像などが紹介されていました。
[展覧会の主な見どころ]
1.レオナルドの手稿に基づきイタリアで制作された工作機械、装置などの再現模型。(一部、体験可。)
2.最新の光学分析により明らかになった500年前の「モナ・リザ」の姿を紹介するとともに、極めて精巧な現在の「モナ・リザ」のレプリカを展示。
3.「最後の晩餐」の実寸大映像。

解説する池上英洋國學院大学准教授。右はモナ・リザを光学分析したゲストのパスカル・コット氏。
さてプレビュー当日、展覧会日本側監修者の池上英洋氏(國學院大学准教授)によるギャラリートークが行われました。以下、その内容に沿って展示の様子をご紹介したいと思います。
レオナルド30歳からの挑戦
いわゆる婚外子であるレオナルド。正規の教育を受けることなく画家になるため工房へと進むが、簡単には成功しなかった。
芸術家よりもまずは軍事技師として名を馳せていく。レオナルドが先人たちの知を本格的に学んだのは30歳を過ぎてからのことだった。
レオナルドの手稿~軍事技術・工作機械・解剖図~

レオナルドは様々なアイデアやスケッチを約40年に渡って手稿に書き留めた。その数は現存するもので約6000とも言われている。
軍事技術、工作機械、また灌漑設備などを考案して手稿に記した。
しかし発明は実用化されていないものが多い。
レオナルドの発明品~飛行機械

スクリュー。
レオナルドに先行する研究もあったが、彼はそれをさらに進化させた。
常に実験を重ねることを重視したレオナルド。そこに近代人としての自覚を見ることが出来る。
工作機械~結婚式の演出~

レオナルド考案の様々な工作機械。手前が自走車。
自走車は今でいうところのチョロQ。これも先行例があったが、レオナルドが研究を重ねた。
レオナルドは結婚式のコスチュームを機械仕掛けで演出したことがある。それが当時の人々の度肝を抜いた。
今でこそネジなどは既製品に頼ることが出来るが、当時そのようなものはなく、部品の一つ一つからレオナルドが作っていた。そしてそれを規格化しなくてはならないことにも気がついていた。
ようは部品すらない時代に機械を作ろうとしていたわけである。
500年前の「モナ・リザ」~マルチスペクトルカメラでわかったこと~
光の波長で絵の具を特定出来るこのカメラを用いることで、制作当時の「モナ・リザ」がどのような絵であるのかが判明した。

~一例~
指の位置:「モナ・リザ」の指の位置は極めて独特で、このように描かれた肖像画は類例がない。かつてはこの指が何を示すか分からなかったこともあったが、分析によってブランケットを持っていることが確かめられた。
眉毛の秘密:眉が描かれていないようにも見えるが、分析によってその存在が明らかになった。 またヴァザーリが「モナ・リザ」の眉について言及しているが正しかったこともわかる。経年劣化によって失われたと考えるのが妥当だろう。
「モナ・リザ」のレプリカ

「モナ・リザ」(レプリカ)
最も美しいものといわれる「モナ・リザ」のレプリカ。裏に記された数字などにも注目したい。
そこにはヴェルサイユ宮殿やルーブルにあった時の識別番号などが書かれている。18世紀に修復した痕跡も残っていた。
考案の軍事技術~お茶目なレオナルド~

装甲車。
レオナルドは様々な軍事技術を考案したが、実際に役にたたないものが多い。ただ当初は滑稽なものばかり作っていたが、次第に実用的になっていくのはレオナルドの探求の積み重ねの表れではないか。
またこうした技術を考える一方で、あまりにも殺傷能力が高いものは作らないとも述べている。
レオナルドはワイン農園を与えられ、何とか収穫を増やそうと土地に鉱物を埋めたこともあった。収穫した際、彼は一言「不味い」と記して、以降ワインには一切関わらなかったというお茶目なエピソードも残っている。このような逸話からは、彼の研究が常に成功をおさめたわけではないとこが良くわかるのではないだろうか。

以上です。出自をはじめ、いわゆる普通の人であったレオナルドが、努力を重ねて驚くほど広い範囲の思索を残したという事実を丹念に説明した内容となっていました。とかく付きまといがちなオーラをあえて排し、等身大のレオナルド像を提示する池上氏ならではのトークと言えるかもしれません。

さて展示は上にも記した通り模型、パネル、複製画、また映像によって構成されています。またレオナルドはどちらかというと画家のイメージが強いかもしれませんが、今回はどちらかというと科学者としての彼の業績を見せる内容です。メインは精巧に作られた復元模型でした。

「最後の晩餐」再現映像。手前は取材にこたえる池上氏。
かつて東博に「受胎告知」が出品されたことがありましたが、その際の本館部分での展示に少し似た面があるかもしれません。冒頭の仕掛けには思わず仰け反ってしまいましたが、展示自体はかなり本格的です。
また今回嬉しいのは一部模型を実際に動かせることです。またお馴染み「ウィトルウィウス的人体図」の黄金比を体感出来るコーナーもありました。混雑すると多少並ぶかもしれませんが、ここは楽しみたいところです。
ダ・ヴィンチ展公式ブログ/@DaVinciJapan(ツイッターアカウント)
会期はお正月云々を問わず無休です。また時間も日・月を除くと連日夜9時まで開館しています。立地はまさに都心そのものでもあるので、夜間開館は重宝しそうです。

2011年2月20日まで開催されています。
*写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
「特別展 ダ・ヴィンチ~モナ・リザ 25の秘密」
2010/12/7~2011/2/20

日比谷公園にレオナルド・ダ・ヴィンチの英知が結集します。日比谷公園ダ・ヴィンチミュージアムで開催中の「特別展 ダ・ヴィンチ~モナ・リザ25の秘密」のプレスプレビューに参加してきました。
チラシにも「エンタテイメントエキシビション」と記されている通り、例えばレオナルドの絵画が展示されたいわゆる美術展ではありません。

日比谷公園「ダ・ヴィンチミュージアム」
日比谷公園の大噴水の前に設けられたパビリオン「ダ・ヴィンチミュージアム」内には、レオナルドが考案し実験を重ねた様々な発明品の模型の他、「モナ・リザ」の精巧な複製パネル、また「最後の晩餐」の実寸大映像などが紹介されていました。
[展覧会の主な見どころ]
1.レオナルドの手稿に基づきイタリアで制作された工作機械、装置などの再現模型。(一部、体験可。)
2.最新の光学分析により明らかになった500年前の「モナ・リザ」の姿を紹介するとともに、極めて精巧な現在の「モナ・リザ」のレプリカを展示。
3.「最後の晩餐」の実寸大映像。

解説する池上英洋國學院大学准教授。右はモナ・リザを光学分析したゲストのパスカル・コット氏。
さてプレビュー当日、展覧会日本側監修者の池上英洋氏(國學院大学准教授)によるギャラリートークが行われました。以下、その内容に沿って展示の様子をご紹介したいと思います。
レオナルド30歳からの挑戦
いわゆる婚外子であるレオナルド。正規の教育を受けることなく画家になるため工房へと進むが、簡単には成功しなかった。
芸術家よりもまずは軍事技師として名を馳せていく。レオナルドが先人たちの知を本格的に学んだのは30歳を過ぎてからのことだった。
レオナルドの手稿~軍事技術・工作機械・解剖図~

レオナルドは様々なアイデアやスケッチを約40年に渡って手稿に書き留めた。その数は現存するもので約6000とも言われている。
軍事技術、工作機械、また灌漑設備などを考案して手稿に記した。
しかし発明は実用化されていないものが多い。
レオナルドの発明品~飛行機械

スクリュー。
レオナルドに先行する研究もあったが、彼はそれをさらに進化させた。
常に実験を重ねることを重視したレオナルド。そこに近代人としての自覚を見ることが出来る。
工作機械~結婚式の演出~

レオナルド考案の様々な工作機械。手前が自走車。
自走車は今でいうところのチョロQ。これも先行例があったが、レオナルドが研究を重ねた。
レオナルドは結婚式のコスチュームを機械仕掛けで演出したことがある。それが当時の人々の度肝を抜いた。
今でこそネジなどは既製品に頼ることが出来るが、当時そのようなものはなく、部品の一つ一つからレオナルドが作っていた。そしてそれを規格化しなくてはならないことにも気がついていた。
ようは部品すらない時代に機械を作ろうとしていたわけである。
500年前の「モナ・リザ」~マルチスペクトルカメラでわかったこと~
光の波長で絵の具を特定出来るこのカメラを用いることで、制作当時の「モナ・リザ」がどのような絵であるのかが判明した。

~一例~
指の位置:「モナ・リザ」の指の位置は極めて独特で、このように描かれた肖像画は類例がない。かつてはこの指が何を示すか分からなかったこともあったが、分析によってブランケットを持っていることが確かめられた。
眉毛の秘密:眉が描かれていないようにも見えるが、分析によってその存在が明らかになった。 またヴァザーリが「モナ・リザ」の眉について言及しているが正しかったこともわかる。経年劣化によって失われたと考えるのが妥当だろう。
「モナ・リザ」のレプリカ

「モナ・リザ」(レプリカ)
最も美しいものといわれる「モナ・リザ」のレプリカ。裏に記された数字などにも注目したい。
そこにはヴェルサイユ宮殿やルーブルにあった時の識別番号などが書かれている。18世紀に修復した痕跡も残っていた。
考案の軍事技術~お茶目なレオナルド~

装甲車。
レオナルドは様々な軍事技術を考案したが、実際に役にたたないものが多い。ただ当初は滑稽なものばかり作っていたが、次第に実用的になっていくのはレオナルドの探求の積み重ねの表れではないか。
またこうした技術を考える一方で、あまりにも殺傷能力が高いものは作らないとも述べている。
レオナルドはワイン農園を与えられ、何とか収穫を増やそうと土地に鉱物を埋めたこともあった。収穫した際、彼は一言「不味い」と記して、以降ワインには一切関わらなかったというお茶目なエピソードも残っている。このような逸話からは、彼の研究が常に成功をおさめたわけではないとこが良くわかるのではないだろうか。

以上です。出自をはじめ、いわゆる普通の人であったレオナルドが、努力を重ねて驚くほど広い範囲の思索を残したという事実を丹念に説明した内容となっていました。とかく付きまといがちなオーラをあえて排し、等身大のレオナルド像を提示する池上氏ならではのトークと言えるかもしれません。

さて展示は上にも記した通り模型、パネル、複製画、また映像によって構成されています。またレオナルドはどちらかというと画家のイメージが強いかもしれませんが、今回はどちらかというと科学者としての彼の業績を見せる内容です。メインは精巧に作られた復元模型でした。

「最後の晩餐」再現映像。手前は取材にこたえる池上氏。
かつて東博に「受胎告知」が出品されたことがありましたが、その際の本館部分での展示に少し似た面があるかもしれません。冒頭の仕掛けには思わず仰け反ってしまいましたが、展示自体はかなり本格的です。
また今回嬉しいのは一部模型を実際に動かせることです。またお馴染み「ウィトルウィウス的人体図」の黄金比を体感出来るコーナーもありました。混雑すると多少並ぶかもしれませんが、ここは楽しみたいところです。
ダ・ヴィンチ展公式ブログ/@DaVinciJapan(ツイッターアカウント)
会期はお正月云々を問わず無休です。また時間も日・月を除くと連日夜9時まで開館しています。立地はまさに都心そのものでもあるので、夜間開館は重宝しそうです。

2011年2月20日まで開催されています。
*写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )
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工学機械の再現はサラッと流しましたが、こちらのほうも良い展示でした。
こんばんは。
少しでもお役に立てたようで嬉しいです。
機械の再現はレオナルドの頭の中をのぞくようで興味深かったですね。
またモナリザしかり、現地で本物を見たくなるような展覧会でした。
TBありがとうございました。
テレビで本展覧会の紹介番組を見て行ったのですが、番組にのせられて期待が大きすぎたかもしれません。ダ・ビンチは中学生の頃からファンで、京都にモナ・リザが来たとき、大阪から見に行きましたが、とんでもない人の数、厳重すぎる警備でガラスに照明が反射してよく見えなかったという残念な思い出です。
制作時のモナ・リザがラピスラズリのブルーの背景であったというのは衝撃的でしたが、年月を経た今のミステリアスなモナ・リザの方が好きかなぁ。
当方、基本は映画ブログですが偶に展覧会の記事も書きますのでお立ち寄りいただければ嬉しいです。
こちらこそはじめまして。コメントありがとうございます。
京都でモナリザご覧になられましたか!確かに凄い警備でしょうね…。現地でも大変な人だかりとも聞きますので…。
今回の展覧会はエンターテイメントの色合いが濃かったかもしれません。ただ昔のモナリザのイメージが再現されていたのには驚きました。レプリカも精巧でしたね。
こちらこそ駄文を連ねておりますが、またお立ち寄り下されば嬉しいです!