『三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions』 千葉市美術館

千葉市美術館
『三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions』
2023/6/10~9/10



動物を樟で彫る「ANIMALS(アニマルズ)」で知られる彫刻家、三沢厚彦は、近年、空想上の麒麟やキメラといった複数の動物のイメージを組み合わせる表現を手がけるなど、大型の木彫も精力的に制作してきました。

その三沢の千葉県初の個展が『三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions』で、多次元をテーマに、1990年代の初期未発表作から最新作までの約200点の彫刻と絵画が展示されていました。



今回の個展で最も印象に深いのは、企画展示室に留まらず、美術館の建物全体が会場になっていることでした。



まず1階のさや堂ホールでは、三沢の「ANIMALS」のペガサスとともに、舟越桂の『青い体を船がゆく』といった彫刻や杉戸洋の『おほしさま』などの絵画が展示されていて、ネオ・ルネサンス様式の空間と作品が響き合う様子を見ることができました。



また同じく1階のエレベーターホールではクマがいたり、4階のびじゅつライブラリー(図書室)においてもヒョウやリスなどが展示されていて、さながら動物たちを探し歩くような体験を得ることができました。



このほか、5階常設展示室におけるセミやカエルなど、思わぬ場所に潜む小さな生き物たちも可愛らしく見えるかもしれません。



クマなどに代表される「ANIMALS」に加え、もうひとつの見どころといえるのが、三沢が動物の彫刻を手がける以前に制作していた初期の作品でした。



それらは海岸で拾った流木や廃材、日用品を組み合わせるアッサンブラージュの手法によってできた作品で、「コロイドトンプ」シリーズと名付けられていました。そこにはクマやウマなどの動物も記号的に含まれていて、手法こそ異なるものの、のちの「ANIMALS」シリーズへと展開を伺わせるものがありました。

近年の三沢が制作に注力するキメラが展示のハイライトだったのではないでしょうか。暗がりの一室には、四つ脚のキメラに加え、最新作となる二本脚で立ち上がるキメラが対峙するように置かれていて、独特の緊張感が漂うとともに、シュールとも呼べるような光景を築き上げていました。



7月14日からは子どもアトリエにおいて「つくりかけラボ12 三沢厚彦|コネクションズ 空洞をうめる」が開かれ、三沢を中心に活動するアートコレクティブ「コネクションズ」のメンバーが、来場者とともに千葉の街から着想を得たプロジェクトを展開します。そちらにあわせて出かけるのも楽しいかもしれません。



さや堂ホールやロビー、および会場内の一部展示室の撮影も可能です。


WEBメディアのイロハニアートへも展示の見どころを寄稿しました。

リアルとファンタジーが交錯する。彫刻家・三沢厚彦の個展が千葉市美術館にて開催中! | イロハニアート



9月10日まで開催されています。おすすめします。

『三沢厚彦 ANIMALS/Multi-dimensions』 千葉市美術館@ccma_jp
会期:2023年6月10日(土)~9月10日(日) 
休室日:6月12日(月)、19日(月)、26日(月)、7月3日(月)、10日(月)、18日(火)、8月7日(月)、21日(月)、9月4日(月) *第1月曜日は全館休館
時間:10:00~18:00。
 *入館は閉館の30分前まで
 *毎週金・土曜は20時まで。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
 *( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
 *リピーター割引:本展チケット(有料)半券の提示で、会期中2回目以降の観覧料が半額。
 *常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
 *ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は共通チケットが半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
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