「明治有田ー超絶の美」 泉屋博古館分館

泉屋博古館分館
「明治有田ー超絶の美」 
9/24~12/4



泉屋博古館分館で開催中の「明治有田ー超絶の美」を見てきました。

明治時代、欧米各国でも人気を博した有田磁器。今年でおおよそ創業400年を迎えました。


有田「染付蒔絵富士山御所車文大花瓶」 1873(明治6)年 有田ポーセリンパーク

驚くほどに巨大な有田焼がやって来ました。「染付蒔絵富士山御所車文大花瓶」です。図版ではまるで分かりませんが、高さは何と180センチ。身長を超えるほどです。もちろん明治有田では最大級。青は染付、富士山と龍を表しています。その上を覆うのは蒔絵です。桜で漆塗りでした。ウィーン万国博覧会の会場写真に本作と同じ花瓶が写っているそうです。とすると出品作と考えて良いのかもしれません。

有田が世界で注目を浴びた一つの切っ掛けが万国博覧会でした。ウィーンを皮切りに、フィラデルフィアやパリの万国博覧会へも出品。大きな成功を得ます。実際にパリ万国博に出されたのが「金彩雲透彫天女陽刻文三足壺」です。器は内と外の2つ。外は雲の透彫りです。内側は天女のレリーフが彫られています。つまり外器の中に内器を入れれば、雲越しに天女が垣間見えるという仕掛けです。何とも心憎い。海外でも賞賛されたのではないでしょうか。


香蘭社(辻勝蔵)「色絵菊花流水文透台付大花瓶(対)」 1876(明治9)年頃 個人蔵

明治有田を牽引したのは2つの製造会社でした。1つが「香蘭社」です。明治8年に有田焼の有力窯業者らが設立。当初から輸出を志向していたのでしょう。個人の窯では叶わなかった大量生産にも対応します。日本最初の有田焼メーカーとして万国博へも意欲的に作品を送り出しました。

しかし僅か5年もしない間に会社は分裂。経営方針などで対立があったそうです。メンバーの一部は離脱し、新たに「精磁会社」を立ち上げます。結果的に「精磁会社」は設立後、約20年で終焉。一方の「香蘭社」は現在まで続くメーカーとして生き残りました。


精磁会社「金彩パルメット桐文チュリーン」 1879(明治12)〜1897(明治30)年頃 個人蔵

「精磁会社」は最新鋭のフランス式設備を導入したそうです。やや短い制作期間ながらも多くの傑作を生み出しました。特に目を引くのは洋食器です。華麗でかつモダンで美しい。紋様は極めて精緻です。鹿鳴館の饗宴にも供されます。宮中へも納められました。

香蘭社では作品の元になる図案が出ていました。「色絵亀甲地羽根文瓶」はほぼ図案と同等の紋様が表現されています。これらの図案、今回の展示のために新たに調査されたものです。ゆえに初公開が多数。また興味深いのは図案と必ずしも一致しない作品が多いことです。いわゆるアイデアの一つとして位置付けられていたのでしょうか。


香蘭社「色絵麒麟花喰鳥文鳳凰形トレイ・コーヒーセット」 1875(明治8)年~1880年 株式会社賞美堂本店

イスラムやギリシャの紋様を取り入れた作品も多い。世界をあっと驚かせた明治有田の超絶技巧。よほどの高い技術に裏打ちされていたのでしょう。今では再現が難しいものも少なくありません。


精磁会社「色絵鳳凰花唐草文透彫大香炉」 1879(明治12)年~1897(明治30)年 個人蔵

図案などを入れると100点超。いつもの手狭なスペースですが、思いの外にボリュームもありました。

「明治有田ー超絶の美/世界文化社」

ちょうど上野の芸大美術館でも明治の工芸を集めた「驚きの明治工藝」展が開催中です。(10/30まで)あわせて観覧するのも良さそうです。



12月4日まで開催されています。

「明治有田ー超絶の美」 泉屋博古館分館
会期: 9月24日(土)~12月4日(日)    
休館:月曜日。但し10/10は開館、10/11は休館。
時間:10:00~16:30(入館は16時まで)
料金:一般800(640)円、学生600(480)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体。
住所:港区六本木1-5-1
交通:東京メトロ南北線六本木一丁目駅北改札1-2出口より直通エスカレーターにて徒歩5分。
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