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「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館
「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」
2019/2/2~3/24



埼玉県立近代美術館で開催中の「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」を見てきました。

かねてより建築には、完成に至らなった構想や、提案のみに留められたアイデアが数多く存在してきました。

そうしたアンビルト、未完の建築を紹介したのが、「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」で、約40名の建築家、及び美術家による、実現し得なかった建築の資料を展示していました。


ウラジーミル・タトリン「第三インターナショナル記念塔」 1919〜20年 コンピューター・グラフィックス(1998年)

冒頭からしてインパクトの強いアンビルドが待ち構えていました。それがロシアのウラジーミル・タトリンの「第3インターナショナル記念塔」で、労働者の国際組織のための塔として考案されました。高さは、当時、世界で最も高かった、エッフェル塔の300メートルを超えた400メートルで、鉄の螺旋状の構造の中に、ガラスの建物が4つ連なっていました。

1919年に発注され、完成した6メートルの模型は、パレードにも出展されましたが、技術的な問題や、内戦による混乱により、建てられませんでした。その姿は、まるでロケットの発射台、あるいはSFの宇宙船のようで、完成していれば、さぞかし人々に強い印象を与えたに違いありません。

ブルーノ・タウトが、日本で唯一、大規模な設計を行った「生駒山嶺小都市計画」も、実現し得えなかった建築でした。これは1933年から34年にかけ、当時の大阪電気軌道、現在の近畿日本鉄道の依頼によって作られた構想で、生駒山に遊園施設やホテル、住宅などを配した「山の市街」なるものでした。

前川國男の「東京帝室博物館建築設計図」も興味深いプランでした。1930年に公募された旧東京帝室博物館、つまり今の東京国立博物館の本館の設計案で、設計主旨の「日本趣味の東洋的建築様式」に反し、あえてホワイトキューブを基調としたモダニズム的な建築を提案しました。結果的に、渡辺仁の案が当選し、現在の和洋折衷的な帝冠様式をとる建物が築かれました。


黒川紀章「東京計画1961- Helix計画」 模型 1961年

このほか、菊竹清訓の「国立京都国際会館設計競技案」や、黒川紀章の「東京計画1961」なども印象的ではないでしょうか。うち後者は二重螺旋構造をしたメガストラクチャーで、数百万人が住めるように、東京湾の上に増殖可能な都市プランとして構想されました。まさに高度経済成長を反映したかのような、壮大なスケールを目にすることが出来ました。


荒川修作+マドリン・ギンズ「問われているプロセス/天命反転の橋」 模型 1973〜89年

1つのハイライトと呼べるのが、荒川修作+マドリン・ギンズの「問われているプロセス/天命反転の橋」で、フランスのエピナール市のモーゼル河にかける橋として構想されました。しかし端的に橋と言っても、大変に独特な形状をしていて、中に21の構造物が連なり、通過すると人の感覚が更新されることを意図していました。実際には140メートルで構想されていて、会場内には13メートルの模型があり、異様なまでの迫力を見せていました。


藤本壮介「ベトンハラ・ウォーターフロント・センター」 コンピューター・グラフィックス 2012年

アンビルトにも魅惑的な建物は数多く存在します。私が特に引かれたのは、藤本壮介の「ベトンハラ・ウォーター・フロントセンター」で、セビリアの首都、ベオグラードに流れるサヴァ川沿いに、商業や展示スペースを有した複合施設として構想されました。中でも、藤本が「浮遊する雲」と呼んだ、リボン状に渦を巻いたブリッジが特徴的で、建物の内外に行き来出来るように作られていました。

美術家では会田誠や山口晃も目立っていたかもしれません。「シン日本橋」と「新東都名所 東海道中 日本橋改」では、現在の日本橋の上の首都高の上、さらに巨大な木製の太鼓橋を築き上げていました。こうした美術家らの建築に対したアイデアを紹介するのも、今回の展覧会の大きな特徴でした。


ザハ・ハデッド・アーキテクツ+設計JV(日建設計・梓設計・日本設計・オーヴ・アラップ・アンド・パートナーズ・ジャパン設計共同体)「風洞実験模型」(縮尺1/300)

ラストはザハ・ハデッドの「新国立競技場」でした。この施設は、言うまでもなく、国立競技場の後継施設として構想されたもので、一度、デザインコンクールに採用されたものの、白紙化されて、実現に至りませんでした。詳細な風洞模型や、分厚い実施設計書などが並んでいて、改めて建物が着工を待つのみであったことを知ると、何とも言い難い複雑な心境にさせられました。


必ずしも取っ付きやすい内容ではないかもしれませんが、解説が詳細で助かりました。数多くある建築展の中でも、あえて「未完」に着目した、異色の展覧会と言えそうです。



3月24日まで開催されています。

「インポッシブル・アーキテクチャー もうひとつの建築史」 埼玉県立近代美術館@momas_kouhou
会期:2019年2月2日 (土) ~3月24日 (日)
休館:月曜日。但し2月11日は開館。
時間:10:00~17:30 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1200(960)円 、大高生960(770)円、中学生以下は無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *MOMASコレクションも観覧可。
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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