「草間彌生 永遠の永遠の永遠」 埼玉県立近代美術館

埼玉県立近代美術館
「草間彌生 永遠の永遠の永遠」 
4/14-5/20



埼玉県立近代美術館で開催中の「草間彌生 永遠の永遠の永遠」へ行って来ました。

先行開催の国立国際美術館では、現代作家の個展として過去最高の入場者を集めたという展覧会、奇しくも今年の六本木アートナイトでも主役をはった草間彌生ですが、その一大個展がいよいよ埼玉県立近代美術館へと巡回してきました。


埼玉県立近代美術館エントランス部分

いつもは静かな佇まいの同美術館も。草間の水玉ワールドにかかると、ご覧の通り、一際華やいで見えるのではないでしょうか。

窓には半ばアイコンと化した赤い水玉がいくつも乱れ散り、エントランスでは同じ水玉のオブジェ、「新たなる空間への道標」が出迎えてくれます。


草間彌生「新たなる空間への道標」(館内ロビー)

館内もオール水玉仕様です。チケット売場越しには、赤や緑の水玉の映える「明日咲く花」が、それこそむせ返るほどに馨しい姿をもって咲き誇っています。


草間彌生「明日咲く花」2011年(チケット売場横)

一見、ポップな水玉も、花のモチーフを借りると殊更に官能的です。

草間作品の魅力の一つに、いつも色褪せることのない艶、ようは性的な要素が散りばめられている点があるかもしれませんが、半ばそれを体現したような作品かもしれません。

さて会場内に入ると開けてくるのは、ともかく怒涛のように並ぶペインティングです。

実は本展、回顧展形式ではなく、草間の今、つまり最近の活動のみにスポットを当てています。


草間彌生「大いなる巨大な南瓜」2011年(会場内)

というわけで、展示されているペインティングも、2004年から3年間に渡って描かれた「愛はとこしえ」と、2009年にはじまり現在も続く連作「わが永遠の魂」の両連作シリーズ、そして2011年作のポートレートなど、近作に他なりません。

それらのペインティングの数は計100点超、まさに壁という壁を埋め尽くすかのように所狭しと並んでいます。その様子は絵画によって出来た水玉の森とでも言えるのではないでしょうか。

さて一口に水玉とは言えども、一連の作品を見ると、当然ながらそれだけで片付けてはならない深みがあることが良く分かります。


草間彌生「わが永遠の魂」から「花園にうずもれた心」2009年

いずれもがカラーの「わが永遠の魂」はまさに森羅万象です。

例えば「夕映えの海」では、粉々にまで砕け散った水玉の中に、多くの横顔と瞳が現れ、そこへ植物のシダのような帯状の線が自由に空間を運動していきます。

しかしながら、順を追ってのラストの二点、「星たちの消滅」では、あたかも金と銀屏風を思わせる空間に、まるで風船のように膨らんだ水玉だけが、いくつかぼんやりと浮かび上がっています。

総じてこのシリーズにおける色も形は、これまでの草間作品よりはるかに自由でかつ多面的ではないでしょうか。


草間彌生「愛はとこしえ」から「愛はとこしえ[TAOW]」2004年

一方、全てモノクロの「愛はとこしえ」は、制作期を鑑みても、「わが永遠の魂」の先駆的作品と言えるのかもしれません。

こちらは全て黒色のマーカーで描かれていますが、先にも見えた植物的なモチーフをはじめ、ともかく空間を埋め尽くすかのように出てくる女性の横顔、そしてその瞳には何とも言い難い迫力を感じます。

色こそ黒のみながらも、受ける印象は「わが永遠の魂」よりも濃厚です。

また3点の新作のポートレートに衝撃を受けた方も多いのではないでしょうか。


草間彌生「神をみつめていたわたし」2011年

会場では3点が横に一列、多少の前後をつけて展示されていますが、降りしきる雪のようなドットはもとより、ともかくもやはり見開かれた瞳、いわばその稀な目力には思わず後退りしてしまいました。

見ているようで実はこちらを見透かしているようなイメージは、草間のポートレート絵画に共通するのかもしれません。

実は館内で放映されている草間の映像でも、制作中、キャンバスを凝視するご本人の目の力強さに圧倒されましたが、まさにその魂の生き写しとも言うべきポートレートこそ、本展のハイライトに相応しいものでした。


「チューリップに愛をこめて、永遠に祈る」2011年(会場内)

ラストは水玉世界をインスタレーションで体験出来る「魂の灯」と、水玉のオブジェ、「チューリップに愛をこめて、永遠に祈る」と続きます。

なお「魂の灯」は最大で2~3人ずつしか入場出来ません。


草間彌生「魂の灯」2008年(参考図版)

一回15秒ほどの体験ということですが、私が出向いた会期2日目でも多少の列が発生していました。混雑時はやや待つこととなりそうです。

なお草間の作品にはどこか受け手の自由な感性を喚起させるような力がありますが、幸いなことに今回ではとかくこの手の展覧会で有りがちな難しいキャプションなどが一切ついていません。

さきにも触れた水玉の絵画の森を彷徨いつつ、半ば詩と向き合うようにイメージを膨らませながら、作品を見入ることが出来ました。

また会場内でも撮影スポットがいくつかあります。出品リストの会場マップはもちろん、館内にも写真OKのマークがついています。

「展覧会の感想をブログ、ツイッターでぜひご紹介ください。」(出品リストより)とのことなので、ここは思いっきり写真を撮って楽しみました。

必ずしも広いとは言えない埼玉県美ですが、偶然なのか作品のサイズと空間が驚くほど一致しています。


草間彌生「ヤヨイちゃん」(吹き抜け部分)

六本木アートナイトで観客をわかせたヤヨイちゃんも吹き抜けにピッタリサイズでした。

ちなみにこの吹き抜けの地下1階に展覧会の関連映像、「草間彌生 永遠の永遠の永遠」(13分)が上映されています。


映像「草間彌生 永遠の永遠の永遠」(吹き抜け地下1階)

鬼気迫るように制作に没頭する草間の映像は必見です。まずこちらを見てから、そのあと会場に入られることをおすすめします。

4/22日には同館館長の建畠氏の講演会があります。

講演会「草間彌生の世界」

日時:4月22日(日) 14:30~16:00 
講師:建畠晢(当館館長)
会場:講堂(2階)
定員:100名(当日10時より整理券を配布)
費用:無料

美術館ニュースによると二人の出会いは建畠氏が20代の頃、1970年までに遡り、以来、氏が草間を招いて1993年のヴェネツィア・ビエンナーレを手がけるなど、その活動に常に注目してきたそうです。講演でもまた突っ込んだお話が伺えるのではないでしょうか。

ちなみに埼近美にはいくつか草間のコレクションがありますが、4/19より常設展で展示します。そちらもお見逃しなきようご注意下さい。


草間彌生「新たなる空間への道標」(館内ロビー)

会期は僅か一ヶ月強しかありませんが、何と嬉しいことに無休で連日開館するそうです。通常閉館日の月曜もオープンしています。


2階会場入口前

久しぶりに身ぶるいさせられるような展覧会に出会いました。年齢などもろともせず、常に前へと突き進む草間の今、その凄まじいまでの創作のエネルギーを是非感じとってみて下さい。

「無限の網 草間彌生自伝/新潮文庫」

5月20日までの開催です。おすすめします。

「草間彌生 永遠の永遠の永遠」(@kusamayayoi_ten) 埼玉県立近代美術館@momas_kouhou
会期:4月14日(土)~5月20日(日)
休館:会期中無休。
時間:10:00~17:30
住所:さいたま市浦和区常盤9-30-1
交通:JR線北浦和駅西口より徒歩5分。北浦和公園内。
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