「国宝 燕子花図屏風2011」 根津美術館

根津美術館
「コレクション展 国宝 燕子花図屏風2011」
4/16~5/15



恒例の燕子花の季節です。根津美術館で開催中の「国宝 燕子花図屏風2011」のプレスプレビューに参加してきました。

当初はメトロポリタン美術館の「八橋図」を含む「KORIN展」が予定されていましたが、震災の影響により1年延期され、同館所蔵の「燕子花図屏風」と関連作による展示へ変更となりました。


「国宝 燕子花図屏風2011」展示風景

燕子花といえば昨年、美術館の全面新装オープンにて華々しくお披露目されたことを思い出しますが、その時は作品の絵画性に着目していたのに対し、今回は物語性について追う構成となっています。

もちろんその物語とは伊勢物語です。「燕子花図屏風」は伊勢物語の第9段、東国へ下る在原業平が燕子花の名所の三河・八橋で歌を読む場面に由来していますが、展示ではその伊勢物語をはじめ、源氏物語など、和歌や文学につながる作品が一同に会しています。


「燕子花図屏風」 尾形光琳 江戸時代 根津美術館蔵

まさに絵画で歌を読む展覧会です。「燕子花図屏風」もこれまでにない叙情性をたたえながら、その艶やかな輝きを放っていました。


「扇面歌意画巻」 室町時代 根津美術館蔵

ずばり八橋の情景を取り込んだものとしてまず挙げたいのは、「扇面歌意画巻」です。扇面に歌と絵を表した雅やかな作品ですが、うち一つに燕子花のモチーフと業平の歌が記されています。

またその名の通りの「伊勢物語図屏風」にも当然ながら物語中の49場面が描かれています。八橋を探してみるのも面白いのではないでしょうか。


「吉野龍田図屏風」 江戸時代 根津美術館蔵

さて伊勢主題以外でおすすめしたいのは、桜と紅葉を画面いっぱいに散らして描いた「吉野龍田図屏風」です。このデコラティブな光景はどこか琳派的ですが、そもそも龍田とは歌枕として知られたものであり、実際に画中にも短冊にて歌が記されています。


「和漢朗詠妙」 本阿弥光悦 1626年 根津美術館蔵

一方、和歌そのものを視覚で楽しめるのは、光悦の「和漢朗詠妙」です。いつもながらに光悦一流の流麗な書体に感心させられました。

さて源氏物語においても伊勢物語をふまえている作品があるのも興味深いポイントです。

伝土佐光起の「源氏物語画帖」では、他の文学との比較についての話題が取り込まれ、そこには業平の名を下に見ることは出来まい云々と、伊勢物語を称える記述が示されていました。

こうした作品の中でも光琳の燕子花の特異性は際立っていますが、古来の物語は時代を超えて、近代でも絵画として様々に表されていきます。伊勢物語や源氏物語は絵画イメージへと変奏しました。


第6室「初風炉の茶」展示風景

さて燕子花展にあわせて開催中のテーマ展も見応え十分です。主に江戸時代の棚や卓を紹介した展示と、「初風炉の茶」と題した茶道具展が行われています。


第5室「棚と卓」展示風景

さりげなく大好きな志野の「銘 山の端」が出ているだけでも嬉しくなりましたが、一方で根津美術館の効果的なライティングによって浮かび上がる螺鈿の眩い煌めきには息をのみました。



根津美術館のもう一つの楽しみといえば広大な日本庭園です。茶室「弘仁亭」前のカキツバタは、本展の会期後半、4月末から5月初旬に見頃を迎えます。ちょうどGWとも重なるとのことで、また賑わいが増すかもしれません。

初めにも触れましたが、当初予定の「KORIN展」は中止ではなく延期です。来春、ここ根津美術館で光琳の燕子花と八橋図が出会うことを心待ちにしたいと思います。

5月15日まで開催されています。



「コレクション展 国宝 燕子花図屏風2011」 根津美術館
会期:4月16日(土)~5月15日(日)
休館:毎週月曜日
時間:10:00~17:00
住所:港区南青山6-5-1
交通:東京メトロ銀座線・半蔵門線・千代田線表参道駅A5出口より徒歩8分。

注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 「あるべきよ... 「成層圏 vol... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。