「日本美術をめぐる旅」 pen

雑誌「pen」8/1号、特集「日本美術をめぐる旅」を読んでみました。


「Pen (ペン) 2013/8/1号/日本美術をめぐる旅。/阪急コミュニケーションズ」

「日本という国土に、美という概念が生まれたのは一体いつのころだろう。」

という書き出しからはじまるpenの日本美術特集。当然ながら写真や図版もふんだん。多様な日本美術を専門家の「案内人」が紹介していくという企画。いつもながらに見て読ませる内容でした。



切り口は「水墨画」、「障壁画・絵巻」、「茶の湯」、「仏画」、「建築・庭」、「伊藤若冲」、「縄文美術」の7点。それぞれを各専門家のガイド、テキストを頼りに、美術館や名刹、そして作品をピックアップしながら、その魅力を探るものとなっていました。

「水墨画」 板倉聖哲(東京大学文化研究所教授)
「障壁画・絵巻」 山口晃(画家)
「茶の湯」 木村宗慎(茶人)
「仏画」 横尾忠則(美術家)
「建築・庭」 藤森照信(建築家)
「伊藤若冲」 辻惟雄(MIHO MUSEUM館長)
「縄文美術」 石倉敏明(秋田公立美術大学講師)


では早速、中身を簡単に追っていきましょう。まずはお馴染みの山口晃さんから。



取り上げるのは障壁画に絵巻。ここではモチーフ云々よりもまず障壁、襖絵などの空間構成に注目。西本願寺の白書院における類い稀な奥行きへの志向を看破。さらには一見、目立たない「竹檜の間」の障壁の金の蒔き方に目を向け、描かれた竹と金との対比を。これまた奥行きを生み出していることについて触れています。



そして絵巻ではかの有名な舟木本の「洛中洛外図屏風」。ここでも画面に広がる金の雲に注目。特に舟木本は雲が建物の邪魔をしていないと指摘した上、その下に街がある感覚をうまく表していると述べています。

また絵巻では「松姫物語絵巻」の「下手の魅力」について言及。「巧まざる部分に関しての感性が日本にはある。」という突っ込みも。単なるヘタウマではない新たな絵巻の面白さを提示しています。

山口さんで長くなりました。続いて面白いのは横尾忠則の仏画。実は横尾氏、禅寺で修行経験を1年ほど積むなど、禅に造形が深いとか。教えを視覚的にも伝える仏画の数々。それを「絵の力」というキーワードで解説しています。



注目は縄文です。ここでは人類学者の石倉敏明氏が「縄文とは、時の古さとは裏腹に今まさに新しく発見されている美といえるのではないか。」という言葉を。土偶の魅力について切々と説いています。



こうした水墨に仏画といった括りに対して、単独の画家で取り上げられているのは伊藤若冲。ガイドはお馴染みの辻先生です。ちょうど7月27日(土)から福島へ巡回するプライスコレクション展にあわせてか、例の升目屏風「鳥獣花木図屏風」が。その他には鹿苑寺の障壁画や石峰寺の石仏についての記事もありました。



とじ込み付録では「三大博物館の至宝」と題し、東博、京博、奈良博のコレクションを紹介。ごく簡単な解説と図版による構成ですが、次の出展期間について触れているのが嬉しいところ。それによると抱一の「夏秋草図屏風」は9/18から東博で展示されるとか。これは楽しみです!

「日本美術をめぐる旅」特集、ちら見せします!@Pen

またPenで有り難いのは価格が安いこと。600円です。テキスト量が意外と多く、時間をかけて楽しむことが出来ます。

なお8/1発売予定の「BRUTUS」最新号でも日本美術を取り上げるとか。こちらも追っかけたいものです。

「Pen (ペン) 2013/8/1号/日本美術をめぐる旅。/阪急コミュニケーションズ」

雑誌「Pen」8/1号(7/16発売済)、「日本美術をめぐる旅」。まずは書店にてご覧ください。

「日本美術をめぐる旅」 Pen (ペン)
内容:日本美術をめぐる旅。日本という国土に、美という概念が生まれたのは一体いつのことだろう。紀元前1万5000年前にまでさかのぼるという縄文時代には、既に美しい紋様が生みだされ、人々の暮らしのなかに息づいていた。(略)そこでPenは、全国各地に散らばるさまざまな名勝や作品を、エキスパートの解説のもと取材。さあ、未知なる日本美術の旅へ出かけよう。
価格:600円(+税)
刊行:7/16発売(8/1号)
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