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「アイヌの装いとハレの日の着物」 渋谷区立松濤美術館

渋谷区立松濤美術館
「アイヌの装いとハレの日の着物―国立アイヌ民族博物館の開館によせて」
2021/6/26~8/9



渋谷区立松濤美術館で開催中の「アイヌの装いとハレの日の着物―国立アイヌ民族博物館の開館によせて」を見てきました。

2020年7月に北海道白老町に開館した国立アイヌ民族博物館は、今年で開館1周年を迎えました。

それを期して開かれたのが「アイヌの装いとハレの日の着物」で、19世紀から現代へと至るアイヌの服飾品、約50点が公開されていました。

まず地下展示室の第1章では「アイヌの装い」と題し、樹皮衣や木綿衣などが並んでいて、特に木綿衣のデコラティブな刺繍について魅せられました。また一口に文様と言っても、刺繍やテープ状の布で構成したり、幅広の布を切り抜いたものなど様々で、技法の幅広い展開についても見ることができました。

例えば一本のチェーンステッチのみを描いた木綿衣など、縫い目そのものも文様と化していて、シンプルながらもしゃれた佇まいに心を惹かれました。さらに濃紺ながら透けた生地が美しい「木綿地切伏刺繍衣装」も魅惑的ではなかったでしょうか。



続く2階展示室の第2章「ハレの日の着物」では、首飾りや耳飾りとともに、噴火湾沿岸に特徴的なハレの日の着物であるルウンペ(色裂置文衣)が展示されていました。

ルウンペとはアイヌ語で「ル(道)ウン(ある、持つ)ペ(もの)」を意味し、主に木綿の衣服の上にテープ状にて切り裂いた布を縫い、刺繍を施したもので、飾りには絹、苧麻、木綿やウールなど多様な素材が用いられました。華美でありつつも、力強さを見せる文様と言えるかもしれません。


またアイヌの人々の男性が和人との対面の場において用いた、日本の袖なしの着物を取り入れた「陣羽織」も興味深い衣装だったのではないでしょうか。なお一連の着物や首飾りは、国立アイヌ民族博物館やアイヌ民族文化財団をはじめ、日本民藝館、早稲田大学會津八一記念博物館、それに東京国立博物館などのコレクションでした。

さて今回の展示で私が特に興味深く感じたのは、2階のエレベーターホール前にて公開されていた18分のインタビュー映像でした。これは北海道白老町に住み、伝統工芸の復元や保存活動に取り組む山崎シマ子さんがルウンペを作る様子を収録したもので、公益財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構が制作しました。

ここでは山崎さんが布を切り分けつつ、針を刺して糸を塗っていく姿が映されていて、中でも「気の向くままに、針が進むままに縫う。それ刺繍の醍醐味。」と語っていたのが印象に残りました。この言葉にこそ、素材や技法も多様で、作り手の創意工夫が反映されたアイヌの衣装のエッセンスが表れているのかもしれません。

この他にはウポポイのPR映像や紹介パネルも展示されていました。なお開館一年を迎えたウポポイは、現在、年間入場者数が目標(100万人)を大幅に下回る26万人に留まるなどコロナ禍の影響を大きく受けています。私も必ずやどこかのタイミングで訪ねたいと思いました。



展示室内の撮影はできません。8月9日まで開催されています。

「アイヌの装いとハレの日の着物―国立アイヌ民族博物館の開館によせて」 渋谷区立松濤美術館@shoto_museum
会期:2021年6月26日(土)~8月9日(月・休)
休館:月曜日。但し8月9日は開館。
時間:10:00~18:00 
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700(560)円、大学生560(440)円、高校生・65歳以上350(280)円、小中学生100(80)円。
 *( )内は渋谷区民の入館料。
 *渋谷区民は毎週金曜日が無料。
 *土・日曜、祝日及び夏休み期間は小中学生が無料。
場所:渋谷区松濤2-14-14
交通:京王井の頭線神泉駅から徒歩5分。JR線・東急東横線・東京メトロ銀座線、半蔵門線渋谷駅より徒歩15分。
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