都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」 SOMPO美術館
SOMPO美術館
「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」
2021/6/25~9/12
SOMPO美術館で開催中の「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」を見てきました。
フランス、シャンパーニュ地方のランス市の中心に位置するランス美術館は、19世紀の風景画を多くコレクションすることで知られ、特にコローはルーブル美術館に次ぐ数の作品を所蔵してきました。
そのランス美術館より風景画のコレクションが日本へとやってきました。会場ではミシャロン、コロー、クールベにはじまり、バルビゾン派からブーダン、さらにはルノワールやモネなどの油彩や版画、約80点が展示されていました。
第1章「コローと19世紀風景画の先駆者たち」のコーナーからして展覧会のハイライトを飾っていたかもしれません。ここではジョルジュ・ミシェル、ギュスターヴ、クールベ、そしてコローの絵画が並んでいて、とりわけコローは全21点中、16点を占めていました。そもそも国内でこれほどまとめてコローの作品を見る機会も多くないのではないでしょうか。
そのうち白眉ともいえるのが「湖畔の木々の下のふたりの姉妹」で、高い樹木の下、湖面を垣間見る草地の上で、ふたりの姉妹がくつろぐ姿を描いていました。前景の姉妹から中景の樹木、さらには湖や空が広がる後景の対比的な表現も、ドラマティックな光景だったかもしれません。
テオドール・ルソー、ドービニー、トロワイヨンの絵画が展示されたバルビゾン派も見どころの1つでした。テオドール・ルソーの「沼」は、フランス中部のベリー地方の風景を舞台とした作品で、広い草原の中、高い樹木を背景に沼の際にいる人物をパノラマのように描いていました。この他では動物を描くのを得意としたトロワイヨンの「ノルマンディー、牛と羊の群れの帰り道」も魅惑的ではないでしょうか。朱色に染まった木立の合間を、牛や羊、それに黒い牧羊犬が農婦とともにのんびりと歩く様子を牧歌的に表していました。
コローと並んで充実していたのが、海景画で知られるウジェーヌ・ブーダンの作品でした。会場では1つのスペースをぐるりと取り囲むように7点の絵画が並んでいて、一際大きな「水飲み場の牛の群れ」などに目を奪われました。コローはブーダンを「空の王者」と呼んだとされていますが、この作品でも灰色の雲が青空を隠すように広がる空模様の変化を巧みに描いていていました。また白い波の立つ海上を複数の帆船が進む「ベルク、出航」も、水平線を低くとっては広い空に浮かぶ雲を素早い筆触で表していました。印象派を思わせるような画風といえるかもしれません。
ラストは「印象主義の展開」で、ルノワール、シスレー、ピサロ、それにモネといった印象派における風景画が並んでいました。そのうち断然に心を惹かれたのがアルフレッド・シスレーの晩年の作品である「カーディフの停泊地」でした。ここではウェールズ南部の港町のカーディフを舞台に、桟橋を望む断崖の上から水色に染まる空と海を描いていて、手前の樹木のそばには小さな人の姿が見られました。ともかく白く光をたたえた水色の空と海の色彩が目に染み入るほどに美しく思えました。
コローやドービニー、またブラックモンなどのエッチングも見応えがあったかもしれません。なおランス美術館のコレクション展は2017年、SOMPO美術館の前身の東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館などでも開かれましたが、その際はバロックからロココ、印象派から藤田などの作品を多様に展観したのに対し、今回はフランスの近代風景画の成立プロセスを辿る内容に焦点を絞っていました。
新型コロナウイルス感染症対策に伴い、日時指定制が導入されました。時間枠の定員に空きがある際は、美術館受付でも当日券が販売されますが、事前に日時指定券を購入すると優先的に入場できます。
7月11日(日)の夕方前に出かけてきましたが、特に混雑することもなく余裕がありました。しばらくはゆったりした空間で絵画を楽しめそうです。
9月12日まで開催されています。また東京での会期を終えると、宮城県美術館(2021年9月18日~11月7日)、静岡市美術館(2021年11月20日〜2022年1月23日)、茨城県近代美術館(2022年2月9日~3月27日)へと巡回します。
*既に北九州市立美術館、島根県立美術館、福井県立美術館、名古屋市美術館の会期は終了。
「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」 SOMPO美術館(@sompomuseum)
会期:2021年6月25日(金)~9月12日(日)
休館:月曜日。但し8月9日は開館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500円、大学生1100円、高校生以下無料。
住所:新宿区西新宿1-26-1
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」
2021/6/25~9/12
SOMPO美術館で開催中の「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」を見てきました。
フランス、シャンパーニュ地方のランス市の中心に位置するランス美術館は、19世紀の風景画を多くコレクションすることで知られ、特にコローはルーブル美術館に次ぐ数の作品を所蔵してきました。
そのランス美術館より風景画のコレクションが日本へとやってきました。会場ではミシャロン、コロー、クールベにはじまり、バルビゾン派からブーダン、さらにはルノワールやモネなどの油彩や版画、約80点が展示されていました。
第1章「コローと19世紀風景画の先駆者たち」のコーナーからして展覧会のハイライトを飾っていたかもしれません。ここではジョルジュ・ミシェル、ギュスターヴ、クールベ、そしてコローの絵画が並んでいて、とりわけコローは全21点中、16点を占めていました。そもそも国内でこれほどまとめてコローの作品を見る機会も多くないのではないでしょうか。
そのうち白眉ともいえるのが「湖畔の木々の下のふたりの姉妹」で、高い樹木の下、湖面を垣間見る草地の上で、ふたりの姉妹がくつろぐ姿を描いていました。前景の姉妹から中景の樹木、さらには湖や空が広がる後景の対比的な表現も、ドラマティックな光景だったかもしれません。
テオドール・ルソー、ドービニー、トロワイヨンの絵画が展示されたバルビゾン派も見どころの1つでした。テオドール・ルソーの「沼」は、フランス中部のベリー地方の風景を舞台とした作品で、広い草原の中、高い樹木を背景に沼の際にいる人物をパノラマのように描いていました。この他では動物を描くのを得意としたトロワイヨンの「ノルマンディー、牛と羊の群れの帰り道」も魅惑的ではないでしょうか。朱色に染まった木立の合間を、牛や羊、それに黒い牧羊犬が農婦とともにのんびりと歩く様子を牧歌的に表していました。
コローと並んで充実していたのが、海景画で知られるウジェーヌ・ブーダンの作品でした。会場では1つのスペースをぐるりと取り囲むように7点の絵画が並んでいて、一際大きな「水飲み場の牛の群れ」などに目を奪われました。コローはブーダンを「空の王者」と呼んだとされていますが、この作品でも灰色の雲が青空を隠すように広がる空模様の変化を巧みに描いていていました。また白い波の立つ海上を複数の帆船が進む「ベルク、出航」も、水平線を低くとっては広い空に浮かぶ雲を素早い筆触で表していました。印象派を思わせるような画風といえるかもしれません。
ラストは「印象主義の展開」で、ルノワール、シスレー、ピサロ、それにモネといった印象派における風景画が並んでいました。そのうち断然に心を惹かれたのがアルフレッド・シスレーの晩年の作品である「カーディフの停泊地」でした。ここではウェールズ南部の港町のカーディフを舞台に、桟橋を望む断崖の上から水色に染まる空と海を描いていて、手前の樹木のそばには小さな人の姿が見られました。ともかく白く光をたたえた水色の空と海の色彩が目に染み入るほどに美しく思えました。
コローやドービニー、またブラックモンなどのエッチングも見応えがあったかもしれません。なおランス美術館のコレクション展は2017年、SOMPO美術館の前身の東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館などでも開かれましたが、その際はバロックからロココ、印象派から藤田などの作品を多様に展観したのに対し、今回はフランスの近代風景画の成立プロセスを辿る内容に焦点を絞っていました。
\本日開幕/「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」が本日開幕しました!コローから印象派まで、フランスの近代風景画をたどる展覧会です。本展は日時指定予約優先のため、ご来場前の「日時指定券」取得をお勧めいたします。詳しくは⇒https://t.co/hywU0JQq5A pic.twitter.com/PxakrXOGv7
— SOMPO美術館 (@sompomuseum) June 25, 2021
新型コロナウイルス感染症対策に伴い、日時指定制が導入されました。時間枠の定員に空きがある際は、美術館受付でも当日券が販売されますが、事前に日時指定券を購入すると優先的に入場できます。
7月11日(日)の夕方前に出かけてきましたが、特に混雑することもなく余裕がありました。しばらくはゆったりした空間で絵画を楽しめそうです。
9月12日まで開催されています。また東京での会期を終えると、宮城県美術館(2021年9月18日~11月7日)、静岡市美術館(2021年11月20日〜2022年1月23日)、茨城県近代美術館(2022年2月9日~3月27日)へと巡回します。
*既に北九州市立美術館、島根県立美術館、福井県立美術館、名古屋市美術館の会期は終了。
「ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ」 SOMPO美術館(@sompomuseum)
会期:2021年6月25日(金)~9月12日(日)
休館:月曜日。但し8月9日は開館。
時間:10:00~18:00
*入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1500円、大学生1100円、高校生以下無料。
住所:新宿区西新宿1-26-1
交通:JR線新宿駅西口、東京メトロ丸ノ内線新宿駅・西新宿駅、都営大江戸線新宿西口駅より徒歩5分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 「アイヌの装... | 「MOMATコレク... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません |