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「日本美術院の足跡を訪ねて〜五浦への旅」 前編:茨城県天心記念五浦美術館

日本美術院のゆかり地である、北茨城の五浦へ行ってきました。


五浦海岸。「関東の松島」とも呼ばれています。

1906年、日本美術院を北茨城の五浦へ移した岡倉天心は、横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山らともに住みながら、日本画の研鑽を積ませました。その五浦には、今も当時の活動を伝える施設が残されています。


大津港駅。駅舎が六角堂を模していました。

その1つが、茨城県立天心記念五浦美術館で、最寄り駅はJR常磐線の大津港駅でした。上野駅から特急「ひたち」に乗車し、一路、大津港駅を目指しましたが、「ひたち」は同駅に停車しません。よって、少し手前の磯原駅で降り、普通列車に乗り換えて、大津港駅に着きました。上野駅からの所要時間は、おおよそ2時間20分程度でした。


茨城県立天心記念五浦美術館。正面より。

五浦美術館へは、駅から道なりで約2キロほどあります。歩くと40分程度かかるため、まずは駅ロータリーからタクシーに乗車し、美術館へと向かいました。駅正面から直進し、ややアップダウンのある道を右手へ曲がってさらに進むと、五浦美術館の入口が見えてきました。ちょうど運賃は1000円でした。



五浦海岸の崖の上に建つ美術館は、想像以上に立派な建物でした。手前にロータリーと駐車場があり、美術館の左右には遊歩道がのびていて、展望台も整備されていました。そこから太平洋を一望することが出来ました。


「茨城県立天心記念五浦美術館」全景。敷地も広大でした。

1997年に開館した美術館は、広いエントランスロビーとAからCの3つの展示室、それに天心の業績を顕彰する岡倉天心記念室などからなっていて、カフェテリアやショップもありました。全体に人出こそ疎らでしたが、観光コースでもあるのか、団体の来場者の姿も見受けられました。


「企画展 金 -KIN-」パネル。金箔や金泥などの技法についても説明がありました。

ちょうど私が出向いた際に開催されていたのが、金に関した日本画を紹介する「企画展 金 -KIN-」でした。そこでは日本美術院の画家である下村観山の「老松」をはじめ、白い猫と黒い烏を対比的に表した菱田春草の「猫に鳥」のほか、秋の野を美しい色彩で表現した木村武山の「小春」などが展示されていました。

またそうした明治や大正期の作品だけでなく、片岡球子の「春の富士」(昭和63年)や、畠中光享の「帰去来」(平成18年)など、現代の作家の作品も網羅されていました。全部で14点と、作品数自体は少ないものの、大作の屏風絵も目立っていて、かなり見応えがありました。


新海竹蔵「岡倉天心肖像レリーフ」 昭和17(1942)年 *撮影可

岡倉天心記念室では、書簡や遺品、それにレプリカや書斎の再現などで、天心の生涯と、五浦における日本美術院の活動を紹介していました。また館内の撮影は出来ませんが、入口の天心のレリーフのみ可能でした。



一通り、展示を見終えると、外へ出て、遊歩道を散策することにしました。松林越しに太平洋が開けていて、眼下には海を望むことが出来ました。起伏のある入江と高い松林を特徴とした五浦海岸は、「日本の渚100選」にも選定された景勝地で、その北の際に美術館が位置していました。



そして美術館を後にして、旧天心邸や六角堂などからなる天心遺跡、現在の茨城大学五浦美術文化研究所へと歩いて向かいました。


「日本美術院跡」石碑。奥村土牛の筆だそうです。

天心遺跡公園近くへ至る小道を進むと、日本美術院の跡地を示す石碑や筆塚が姿を現しました。一帯は、長らく荒地になっていたものの、1980年に岡倉家より管理委託を受け、記念公園として一般に公開されました。しかし現在は、東日本大震災の影響によって、立ち入りの多くが規制されています。


岡倉天心の墓。土饅頭型と呼びます。

さらに五浦観光ホテルを過ぎ、美術研究所に近づくと、天心の墓がありました。天心は、東京の駒込の墓地に埋葬されましたが、遺言によって、五浦にも分骨されたそうです。



「後編:六角堂・五浦岬公園」へと続きます。

「日本美術院の足跡を訪ねて〜五浦への旅 後編:六角堂・五浦岬公園」(はろるど)

「企画展 金 -KIN-」 茨城県天心記念五浦美術館
会期:8月31日(金)~10月8日(月・祝)
休館:月曜日。
 *但しただし9月17日(月・祝)、9月24日(月・振)、10月8日(月・祝)は開館。9月25日(火)は休館。
時間:9:00~17:00(入館は16時半まで)
 *10月からは9:30~17:00
料金:一般310(260)円、70歳以上150(130)円、大学・高校生210(150)円、中学・小学生150(100)円。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *土曜日は高校生以下無料。
住所:茨城県北茨城市大津町椿2083
交通:JR線大津港駅よりタクシー約7〜8分。火・木・金曜のみ市巡回バスあり。
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