都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ロバート・フランク展」 東京藝術大学大学美術館・陳列館
東京藝術大学大学美術館・陳列館
「ロバート・フランク Books and Films 1947-2016 東京」
11/11-11/24
東京藝術大学大学美術館・陳列館で開催中の「ロバート・フランク Books and Films 1947-2016 東京」を見てきました。
今年、92歳を迎え、アメリカを代表する写真家として知られるロバート・フランク。オリジナルのプリントは高価でかつ貴重なため、公開される機会は殆どありません。
そこで考え出されたのが今回の展覧会です。アイデアは明快。安価な新聞用紙に印刷した作品を展示しています。フランクの新旧作を年代を追って見ることが出来ました。
会場も自由な造りになっていました。プランを練ったのはゲルハルト・シュタイデル。ドイツで出版社「Steidl」を経営するデザイナーです。プリントはいずれもゲティンゲンにあるSteidl社で行っています。手書きの文字もシュタイデルが手掛けました。
シュタイデルは展示に教育的な要素を取り込みました。什器を制作したのは芸大の学生です。かなり簡易的です。フレームはメタル。磁石で作品をくっ付けています。ドイツにいるシュタイデルとやり取りしつつ、ワークショップなどで意思疎通をしながら完成させたそうです。
陳列棚のフロアは2つ。1階は2009年に制作された「セブンストーリーズ」です。どことなくプライベートな空間が捉えられています。なお映像が新聞用紙の裏側から映されていますが、これも学生のアイデアによります。写真と映像が交錯します。まるで迷路のようでした。
2階にもフランクの撮影した各シリーズが並んでいました。「Paris」が制作されたのは1951年。フランクにとってアメリカ移住後、2度目のヨーロッパ帰還でした。「新世界を体験」(キャプションより)した彼の眼差しは、何気ないパリの街角の雑踏に向きます。壁の新聞を覗き込むように読み、忙しそうに車に乗り込んでは、肩を落として行き交う人々が写し出されていました。
ほぼ同じ頃に撮影したのが「London」です。フランクはロンドンの裕福な銀行家やビジネスマンとともに、ウェールズの炭鉱労働者の家族を写しました。階級や格差について切りこもうとしたのでしょうか。2階建てのバスがたくさん走るロンドンの喧騒と、どこか荒涼としたウェールズの大地。背の高い坑夫が立っています。得意げにポーズをとる子どもの笑顔も印象的でした。
「The American」は1959年、フランクがグッゲンハイムの奨学金を得て、アメリカを横断する旅行に出た時の作品です。撮影数は何と27000点。うち83点が写真集として発表されました。ここでも彼は差別を受ける人々に関心を寄せています。いわば黄金期を迎えながらも、根深く横たわるアメリカの様々な問題を抉ろうとしたのかもしれません。
破壊された街に目がとまりました。「Come Again」です。舞台は1991年のレバノン。フランクは長き内戦で壊滅したベイルートの市中を撮影します。翌年に大半の作品を発表しましたが、彼はそれを再考し、新たなノートとして「Come Again」を作り上げます。コラージュなどの実験的な取り組みも少なくありません。
ほかフランクの手紙や試し刷りなどの資料も展示。彼の言葉も随所にあり、作品だけでなく、制作に対するスタンスの一端も伺うことが出来ました。
印刷された作品は展示終了後、全て捨てられるそうです。もちろん一概には言えませんが、何かと高額に取り引きされる市場への批判の意味も込められているのかもしれません。写真の展示の在り方にも一石を投じる企画とも言えそうです。
カタログにも工夫がありました。今回、紙を提供した南ドイツ新聞のタブロイドです。価格も500円とリーズナブルでした。
世界50会場を巡る巡回展です。東京展は11会場目です。
「The Americans/Robert Frank/Steidl」
入場は無料です。11月24日まで開催されています。おすすめします。
「ロバート・フランク Books and Films 1947-2016 東京」 東京藝術大学大学美術館・陳列館
会期:11月11日(金) ~11月24日(木)
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00 *入館は17時半まで。
料金:無料。
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。
「ロバート・フランク Books and Films 1947-2016 東京」
11/11-11/24
東京藝術大学大学美術館・陳列館で開催中の「ロバート・フランク Books and Films 1947-2016 東京」を見てきました。
今年、92歳を迎え、アメリカを代表する写真家として知られるロバート・フランク。オリジナルのプリントは高価でかつ貴重なため、公開される機会は殆どありません。
そこで考え出されたのが今回の展覧会です。アイデアは明快。安価な新聞用紙に印刷した作品を展示しています。フランクの新旧作を年代を追って見ることが出来ました。
会場も自由な造りになっていました。プランを練ったのはゲルハルト・シュタイデル。ドイツで出版社「Steidl」を経営するデザイナーです。プリントはいずれもゲティンゲンにあるSteidl社で行っています。手書きの文字もシュタイデルが手掛けました。
シュタイデルは展示に教育的な要素を取り込みました。什器を制作したのは芸大の学生です。かなり簡易的です。フレームはメタル。磁石で作品をくっ付けています。ドイツにいるシュタイデルとやり取りしつつ、ワークショップなどで意思疎通をしながら完成させたそうです。
陳列棚のフロアは2つ。1階は2009年に制作された「セブンストーリーズ」です。どことなくプライベートな空間が捉えられています。なお映像が新聞用紙の裏側から映されていますが、これも学生のアイデアによります。写真と映像が交錯します。まるで迷路のようでした。
2階にもフランクの撮影した各シリーズが並んでいました。「Paris」が制作されたのは1951年。フランクにとってアメリカ移住後、2度目のヨーロッパ帰還でした。「新世界を体験」(キャプションより)した彼の眼差しは、何気ないパリの街角の雑踏に向きます。壁の新聞を覗き込むように読み、忙しそうに車に乗り込んでは、肩を落として行き交う人々が写し出されていました。
ほぼ同じ頃に撮影したのが「London」です。フランクはロンドンの裕福な銀行家やビジネスマンとともに、ウェールズの炭鉱労働者の家族を写しました。階級や格差について切りこもうとしたのでしょうか。2階建てのバスがたくさん走るロンドンの喧騒と、どこか荒涼としたウェールズの大地。背の高い坑夫が立っています。得意げにポーズをとる子どもの笑顔も印象的でした。
「The American」は1959年、フランクがグッゲンハイムの奨学金を得て、アメリカを横断する旅行に出た時の作品です。撮影数は何と27000点。うち83点が写真集として発表されました。ここでも彼は差別を受ける人々に関心を寄せています。いわば黄金期を迎えながらも、根深く横たわるアメリカの様々な問題を抉ろうとしたのかもしれません。
破壊された街に目がとまりました。「Come Again」です。舞台は1991年のレバノン。フランクは長き内戦で壊滅したベイルートの市中を撮影します。翌年に大半の作品を発表しましたが、彼はそれを再考し、新たなノートとして「Come Again」を作り上げます。コラージュなどの実験的な取り組みも少なくありません。
ほかフランクの手紙や試し刷りなどの資料も展示。彼の言葉も随所にあり、作品だけでなく、制作に対するスタンスの一端も伺うことが出来ました。
印刷された作品は展示終了後、全て捨てられるそうです。もちろん一概には言えませんが、何かと高額に取り引きされる市場への批判の意味も込められているのかもしれません。写真の展示の在り方にも一石を投じる企画とも言えそうです。
カタログにも工夫がありました。今回、紙を提供した南ドイツ新聞のタブロイドです。価格も500円とリーズナブルでした。
世界50会場を巡る巡回展です。東京展は11会場目です。
「The Americans/Robert Frank/Steidl」
入場は無料です。11月24日まで開催されています。おすすめします。
「ロバート・フランク Books and Films 1947-2016 東京」 東京藝術大学大学美術館・陳列館
会期:11月11日(金) ~11月24日(木)
休館:会期中無休。
時間:10:00~18:00 *入館は17時半まで。
料金:無料。
住所:台東区上野公園12-8
交通:JR線上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ千代田線根津駅より徒歩10分。京成上野駅、東京メトロ日比谷線・銀座線上野駅より徒歩15分。
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