都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「サイ・トゥオンブリーの写真」 DIC川村記念美術館
DIC川村記念美術館
「サイ・トゥオンブリーの写真ー変奏のリリシズム」
4/23-8/28

DIC川村記念美術館で開催中の「サイ・トゥオンブリーの写真ー変奏のリリシズム」を見てきました。
アメリカ現代美術を代表するアーティストの一人であるサイ・トゥオンブリー(1928~2011)。いわゆるカリグラフィー的な作品でも知られ、日本でも昨年、初めて美術館としての回顧展が原美術館にて開かれました。
今回のテーマは写真です。トゥオンブリー自身は画家ですが、若い頃から写真にのめり込み、「創作活動のかたわら」(解説より)、主にポラロイドで撮影を続けていました。
冒頭は1950年代のモノクローム。「静物」に惹かれました。テーブルの上のボトルやカップ。にわかに質感を確認できませんが、いずれもガラスでしょうか。ちょうど画面の中央に4つ並んでいます。ふとモランディの絵画を思い出しました。さらにベットのリネンや椅子や布を捉えた写真が続きます。いずれも日常の光景です。何ら飾ることもありません。
チラシ表紙は「室内」です。時は1980年。床は大理石かもしれません。古風なテーブルセットが置かれています。壁には大きな古典絵画が立てかけてありました。一枚は裏向きになっています。手前には白い扉。全体をどこか皮膜ともいうべきヴェールが覆っています。ざらついた独特の感触です。ブレと呼んで良いのでしょうか。それが妙に心地良い。焦点は必ずしも定まっていません。
「室内」が撮影された場所はローマです。イタリアで撮られた作品が多いことに気がつきました。実はトゥオンブリー、アメリカ人ではあるものの、幼い頃からローマに憧れがあり、30代の結婚を機に移住したそうです。しかも妻は貴族の出身。城のように大きな邸宅で暮らしていました。絵画作品こそ前衛的とも言えるトゥオンブリーですが、写真はさも懐古的。実際にも古い神話に関心がありました。どこかノスタルジックですらあります。

「ケルティック・ボート」 1994年 個人蔵
かなり対象に迫ったせいか、一体、何が写っているか分からない写真もありました。「チューリップ」です。タイトルを見れば一目瞭然、確かにチューリップの花が写されていますが、花弁はさも彫刻のようで、あまりリアリティーがありません。ほかにも絵画の一部分を接写した作品も多い。全体像を伺えない写真は少なくありません。

「スペルロンガ6」 2010年 個人蔵
「変奏」とあるように、同じモチーフを複数の視点で撮影するなど、いわば実験的な取り組みがあるのも興味深いところです。例えば一つのズッキーニをカゴに入れて俯瞰したり、はたまた接写するなどの試みを行っています。逆に全く異なったモチーフが同じようなイメージとして浮かび上がる写真もあります。「林」と「絵のディテール」です。前者が樹木、後者がおそらく縦方向にのびる線のドローイングを撮っていますが、そのラインが相互に似ているのです。また同じパンとコップを撮影しては移動させ、改めて写し直したりもしています。結果生まれた写真は2枚です。対を意識していたのかもしれません。

「ミラマーレ、海辺」 2005年 個人蔵
被写体は彫刻や絵画、花に野菜、室内のほか、海辺や墓地などと多様です。作品は全100点と多い。年代も古くは1950年代から、最晩年、つまり2011年に撮られた作品までと幅があります。解説に「トゥオンブリーの生きた私的空間を切り取る視覚体験」なる言葉がありました。絵画制作との影響関係を伺うのは難しいかもしれませんが、トゥオンブリーがカメラを通して何を見ようとしていたのかを知る良い機会だと言えそうです。
写真以外にも絵画が3点ほど出ています。いずれも国内の美術館のコレクションです。さらにドローイングも4点。特筆すべきは彫刻です。全てブロンズ。国内では初めての公開だそうです。
トゥオンブリー展の後に常設展を廻ってきましたが、かつて「アンナの光」の収められていた部屋に、ライマンの「アシスタント」が展示されていました。これが思いの外に収まりが良い。下のロスコの赤と対比的な白い絵画です。しばし見惚れました。
会場内、意図的なのかキャプションがありません。紙のリストに見取り図と作品名が記載されています。よって鑑賞の際には常にリストを参照する必要がありました。

ロングランの展覧会です。8月28日まで開催されています。
「サイ・トゥオンブリーの写真ー変奏のリリシズム」 DIC川村記念美術館(@kawamura_dic)
会期:4月23日(土)~8月28日(日)
休館:月曜日。但し7月18日は開館。7月19日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1200(1000)円、学生・65歳以上1000(800)円、小・中・高生600(500)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*コレクション展も観覧可。
*5月5日(木)はこどもの日につき高校生以下入館無料。
*5月18日(水)は国際博物館の日につき入館無料。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
「サイ・トゥオンブリーの写真ー変奏のリリシズム」
4/23-8/28

DIC川村記念美術館で開催中の「サイ・トゥオンブリーの写真ー変奏のリリシズム」を見てきました。
アメリカ現代美術を代表するアーティストの一人であるサイ・トゥオンブリー(1928~2011)。いわゆるカリグラフィー的な作品でも知られ、日本でも昨年、初めて美術館としての回顧展が原美術館にて開かれました。
今回のテーマは写真です。トゥオンブリー自身は画家ですが、若い頃から写真にのめり込み、「創作活動のかたわら」(解説より)、主にポラロイドで撮影を続けていました。
冒頭は1950年代のモノクローム。「静物」に惹かれました。テーブルの上のボトルやカップ。にわかに質感を確認できませんが、いずれもガラスでしょうか。ちょうど画面の中央に4つ並んでいます。ふとモランディの絵画を思い出しました。さらにベットのリネンや椅子や布を捉えた写真が続きます。いずれも日常の光景です。何ら飾ることもありません。
チラシ表紙は「室内」です。時は1980年。床は大理石かもしれません。古風なテーブルセットが置かれています。壁には大きな古典絵画が立てかけてありました。一枚は裏向きになっています。手前には白い扉。全体をどこか皮膜ともいうべきヴェールが覆っています。ざらついた独特の感触です。ブレと呼んで良いのでしょうか。それが妙に心地良い。焦点は必ずしも定まっていません。
「室内」が撮影された場所はローマです。イタリアで撮られた作品が多いことに気がつきました。実はトゥオンブリー、アメリカ人ではあるものの、幼い頃からローマに憧れがあり、30代の結婚を機に移住したそうです。しかも妻は貴族の出身。城のように大きな邸宅で暮らしていました。絵画作品こそ前衛的とも言えるトゥオンブリーですが、写真はさも懐古的。実際にも古い神話に関心がありました。どこかノスタルジックですらあります。

「ケルティック・ボート」 1994年 個人蔵
かなり対象に迫ったせいか、一体、何が写っているか分からない写真もありました。「チューリップ」です。タイトルを見れば一目瞭然、確かにチューリップの花が写されていますが、花弁はさも彫刻のようで、あまりリアリティーがありません。ほかにも絵画の一部分を接写した作品も多い。全体像を伺えない写真は少なくありません。

「スペルロンガ6」 2010年 個人蔵
「変奏」とあるように、同じモチーフを複数の視点で撮影するなど、いわば実験的な取り組みがあるのも興味深いところです。例えば一つのズッキーニをカゴに入れて俯瞰したり、はたまた接写するなどの試みを行っています。逆に全く異なったモチーフが同じようなイメージとして浮かび上がる写真もあります。「林」と「絵のディテール」です。前者が樹木、後者がおそらく縦方向にのびる線のドローイングを撮っていますが、そのラインが相互に似ているのです。また同じパンとコップを撮影しては移動させ、改めて写し直したりもしています。結果生まれた写真は2枚です。対を意識していたのかもしれません。

「ミラマーレ、海辺」 2005年 個人蔵
被写体は彫刻や絵画、花に野菜、室内のほか、海辺や墓地などと多様です。作品は全100点と多い。年代も古くは1950年代から、最晩年、つまり2011年に撮られた作品までと幅があります。解説に「トゥオンブリーの生きた私的空間を切り取る視覚体験」なる言葉がありました。絵画制作との影響関係を伺うのは難しいかもしれませんが、トゥオンブリーがカメラを通して何を見ようとしていたのかを知る良い機会だと言えそうです。
写真以外にも絵画が3点ほど出ています。いずれも国内の美術館のコレクションです。さらにドローイングも4点。特筆すべきは彫刻です。全てブロンズ。国内では初めての公開だそうです。
トゥオンブリー展の後に常設展を廻ってきましたが、かつて「アンナの光」の収められていた部屋に、ライマンの「アシスタント」が展示されていました。これが思いの外に収まりが良い。下のロスコの赤と対比的な白い絵画です。しばし見惚れました。
会場内、意図的なのかキャプションがありません。紙のリストに見取り図と作品名が記載されています。よって鑑賞の際には常にリストを参照する必要がありました。

ロングランの展覧会です。8月28日まで開催されています。
「サイ・トゥオンブリーの写真ー変奏のリリシズム」 DIC川村記念美術館(@kawamura_dic)
会期:4月23日(土)~8月28日(日)
休館:月曜日。但し7月18日は開館。7月19日(火)は休館。
時間:9:30~17:00(入館は16時半まで)
料金:一般1200(1000)円、学生・65歳以上1000(800)円、小・中・高生600(500)円。
*( )内は20名以上の団体料金。
*コレクション展も観覧可。
*5月5日(木)はこどもの日につき高校生以下入館無料。
*5月18日(水)は国際博物館の日につき入館無料。
住所:千葉県佐倉市坂戸631
交通:京成線京成佐倉駅、JR線佐倉駅下車。それぞれ南口より無料送迎バスにて30分と20分。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
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