「森淳一 trinitite」 ミヅマアートギャラリー

ミヅマアートギャラリー
「森淳一 trinitite」
11/24-12/24



ミヅマアートギャラリーで開催中の森淳一個展、「trinitite」へ行ってきました。

展示概要、作家プロフィールなどは同ギャラリーのWEBサイトをご覧ください。

「森淳一:trinitite」/プロフィール@ミヅマアートギャラリー

1996年に東京芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻を修了後、現在、同大学で准教授をつとめる森淳一は、これまでvoid+での個展の他、ジパング展、MOTアニュアル展(ともに2010年)などのグループ展に参加してきました。なおミヅマでの個展は今回が初めてだとのことです。

さてミヅマのメインのホワイトキューブにそびえ立つ一体の木彫像を見て、その何とも言い難い迫力、また神秘的なまでの姿に、思わず息をのんだ方も多いのではないでしょうか。

三面の一体、亡骸となった顔を三方に向け、何とか毅然に振る舞わんとばかりに立っているのは、展覧会タイトルにもなった「trinitite」と呼ばれる人物の立像でした。

茶色に焦がれた皮膚の表面は爛れ、また目は窪み、さらに歯が剥き出しになっているほどぼろぼろに朽ち果てていますが、よく見るとそれこそ仏像を思わせるかのような隆々たる襞を靡かせた下半身の着衣にまで、細かな穴があいていることが見て取れるではありませんか。

一体、この像は何を表しているのか、そしてここに漂う死の気配は何に由来するのかということを強く思わざるにはいられませんでした。

その答えは同じく作品タイトルにありました。詳細は上記ギャラリーのリンク先をご参照いただきたいところですが、「trinitite」とは1945年にアメリカで起きた人類初の核実験、トリニティ実験の際に生成した人工鉱物の名を指し示しています。そしてそれと同種の爆弾が長崎に投下されました。

つまり原爆がテーマです。長崎に生まれた作家の森は、この痛ましい事件に目を向け、今回、改めて原爆と向き合う一連の作品に取り組みました。

そしてその『一連の作品』と言うのには訳があります。作品は「trinitite」にとどまりません。長崎の教会の被爆マリアをモチーフとした顔像「shadow」の他、また原爆実験で用いられた研究所を模した写真など、森は様々なアプローチをとることで、この原爆というテーマを複層的に掘り下げていきました。

和室に置かれた「shadow」から発せられた受ける哀しみとも苦しみともとれる感情は、まさに原爆の悲劇性を告発しているのではないでしょうか。また先の「trinitite」同様、マリアも中がくり抜かれています。その闇の深淵さには思わず吸い込まれてしまうほどでした。

元々、森の作品は、その彫像自体の技巧云々だけでも十分に見応えがありますが、今回はテーマの設定、また多様な表現など、展示全体として捉えても高い完成度だったと言えるのではないでしょうか。比較は意味をなしませんが、あえて言えば、少なくとも私の印象は、2010年に拝見したアニュアル展をゆうに上回りました。



なお会期末、12月23日の祝日金曜日には、ジャーナリストの高瀬毅氏とのトークイベントがあるそうです。

森淳一×高瀬毅氏 対談 「残像-ナガサキ」
日時:2011年12月23日(祝・金) 14時~(1時間半程を予定。)
場所:ミヅマアートギャラリー
無料/予約不要 *23日は祝日開廊。(11時~17時)

もはや神々しいとさえ言える「trinitite」の姿は、未だ頭から離れることがありません。是非、会場へ足を運んでみて下さい。

12月24日までの開催です。断然におすすめします。

「森淳一 trinitite」 ミヅマアートギャラリー
会期:11月24日(木)~12月24日(土)
休廊:日・月・祝
時間:11:00~19:00
住所:新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2階
交通:東京メトロ有楽町線・南北線市ヶ谷駅出口5より徒歩5分。JR線飯田橋駅西口より徒歩8分。
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