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『ゲルハルト・リヒター展』 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
『ゲルハルト・リヒター展』
2022/6/7~10/2



東京国立近代美術館で開催中の『ゲルハルト・リヒター展』を見てきました。

1932年に生まれたドイツの美術家、ゲルハルト・リヒターは、具象と抽象を行き来しながら、絵画や写真、立体作品を手がけ、世界各地の美術館にて個展を開くなどして活動してきました。

そのリヒターの国内の美術館では16年ぶりの個展が『ゲルハルト・リヒター展』で、会場では主にリヒター財団が所蔵する110点あまりの作品が公開されていました。


『ゲルハルト・リヒター展』展示風景

まず目立つのが『8枚のガラス』を取り囲むように並ぶ「アブストラクト・ペインティング」と呼ばれる絵画シリーズで、1970年代の後半以降、リヒターが長く描き続けてきた代表的な絵画でした。


『アブストラクト・ペインティング』 1992年

いずれも自作のヘラを用い、キャンバス上にて絵具をのばしたり、削り取ることで複雑なテクスチャを築いていて、絵具が爛れるように塗られていたかと思うと、あたかもマグマのように噴出しているように見えるなど、それこそ万華鏡ならぬ多様なイメージが広がっていました。


『ゲルハルト・リヒター展』展示風景

この一連の「アブストラクト・ペインティング」から進んで左奥の展示室にて展示されていたのが、「グレイ・ペインティング」、および「カラーチャート」と呼ばれる作品でした。


『4900の色彩』(部分) 2007年

そのうち『4900の色彩』とは、既製品の色見本の色彩を偶然にしたがって配するカラーチャートに由来する作品で、25色にて構成された約50センチ四方の正方形プレート、全196枚から作られていました。色見本という具象的なモチーフに基づきながらも、モザイクのように広がる色面は抽象的なイメージを切り開いていて、眩いばかりの色彩が空間全体を照らしていました。


『モーターボート(第1ヴァージョン)』 1965年

「アブストラクト・ペインティング」と並び、リヒターの作品としてよく知られる「フォト・ペインティング」も魅惑的ではないでしょうか。これらは新聞や雑誌に載っている写真などをキャンバスへ写し取るように描いた作品で、一見リアルな写真として浮かび上がるものの、いわゆるブレやボケなども垣間見えて、いわば写真と絵画の合間の揺らぎも表現されていました。


『ビルケナウ』 2014年

今回のリヒター展で最も重要な作品とされるのが、日本初公開となる『ビルケナウ』と題した4点の絵画でした。会場では同作と同寸の複製写真、および横長の鏡の作品『グレイの鏡』が展示室を取り囲むように並んでいて、さながら「ビルケナウ」ルームと化していました。


『ビルケナウ』展示風景 *広角モードにて撮影

この『ビルケナウ』とは、アウシュヴィッツ・ビルケナウ強制収容所で囚人が隠し撮りした写真を下層に描き写したもので、画面には赤や緑の絵具が激しいタッチによって広がり、キッチンナイフによって多くの線などが刻み込まれていました。


『ビルケナウ』(部分)

この囚人の写した写真と合わせて展示されていましたが、絵画から収容所でのイメージこそ直接浮かび上がらないものの、激しく打ち付けられ、また引き伸ばされたような色面を目にしていると、どことない不安感や恐怖感が喚起されてなりませんでした。


『不法に占拠された家』 1989年

このほか、頭蓋骨や花といった西洋絵画の伝統的主題を素材とした作品や、ガラス絵とも呼べる「アラジン」のシリーズや、近年描き続けられているドローイングなども展示されていて、初期から現在へと至るリヒターの幅広い制作を目にすることができました。


『抽象絵画(赤)』 1994年 *「MOMATコレクション」より

なお2階の所蔵作品展「MOMATコレクション」でも、11室にて「ゲルハルト・リヒターとドイツ」と題した展示が行われています。


『シルス・マリア』 2003年 *「MOMATコレクション」より

こちらではリヒターをはじめ、同時代のドイツの作家であるアンドレアス・グルスキーやゲオルク・バゼリッツなどの作品が公開されていました。あわせてご覧になられることをおすすめします。


『3月』 1994年

この日はたまたま台風による荒天が予想された日だったため、会場内は人もまばらで、どの作品もゆっくりと鑑賞することができました。


『2021年7月9日』 2021年

とはいえ、すでに今年注目の現代美術展として話題を集めていて、会期が進むにつれて混雑することも考えられます。お出かけの際は同館のTwitterアカウントなどをご覧ください。


『ストリップ』 2013〜2016年

一部を除き撮影も可能でした。


ゲルハルト・リヒター展をより楽しむための見どころ紹介! | イロハニアート

10月2日まで開催されています。なお東京での展示を終えると、豊田市美術館へと巡回(2022年10月15日~2023年1月29日)します。

追加情報:9月20日(火)から10月2日(日)の期間、一部、開館日と開館日時が変更になりました。詳しくは公式サイトをご確認ください。

開館⽇・開館時間変更のお知らせ(9月20日〜10月2日)

開館日・開館時間の変更点は下記の通りです。

【開館時間】
(変更前)9月25日(日)〜10月1日(土)の金・土曜は20:00まで
(変更後)9月25日(日)〜10月1日(土)の休館日を除く全日程20:00まで。

【休館日】
(変更前)月曜日[9月19日は開館]、9月20日(火)
(変更後)月曜日[9月19日、26日は開館]、27日(火)
*20日(火)は敬老の日の振替休館の予定でしたが、開館します。

『ゲルハルト・リヒター展』@grichter2022_23) 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:2022年6月7日(火)~ 10月2日(日)
時間:10:00~17:00。
 *金・土曜は20時まで開館。
 *9月25日(日)〜10月1日(土)は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。但し7月18日、9月19日、9月26日は開館。7月19日(火)、9月27日(火)は休館。
料金:一般2200(2000)円、大学生1200(1000)円、高校生700(500)円、中学生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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