「さかざきちはるの本づくり展」 市川市文学ミュージアム

市川市文学ミュージアム
「さかざきちはるの本づくり展 手のひらサイズの大冒険」 
2020/11/7~2021/1/31



市川市文学ミュージアムで開催中の「さかざきちはるの本づくり展 手のひらサイズの大冒険」を見てきました。

市川市に生まれ、Suicaペンギンやチーバくんの生みの親で知られるイラストレーターのさかざきちはるは、絵本作家としても活動し、多くの絵本を世に送り出してきました。



そのさかざきの本の制作に着目したのが「さかざきちはるの本づくり展 手のひらサイズの大冒険」で、展示に合わせて再編した「ぴーちゃんの歌」の制作プロセスを中心に、過去の絵本や自主制作の書籍などが紹介されていました。



まず目を引くのが、あたかも鑑賞者を誘うように連なる黒いアウトラインでした。これはさかざきのイラストの特徴的な黒の輪郭線を壁面から展示室へと三次元的に展開したもので、線を辿りながら絵本の工程を理解できるように工夫されていました。


「ぴーちゃんと私」 著者手稿3、4

全ての「本づくり」の始まりは絵ではなく言葉にありました。冒頭には「ぴーちゃんと私」の直筆原稿が展示されていて、言葉の響き合いなどから絵本のイメージが生み出されている様子を思い浮かべることができました。


「ぴーちゃんと私」 DDCP校正紙

なおさかざきは今回、20年前に刊行された「ぴーちゃんの歌」を「ぴーちゃんと私」として再編し、描き下ろしていて、その際に主人公をかつてのブタからペンギンへと変えました。さかざきにとってもペンギンは特別な存在で、そもそも一番最初に自主制作した本も「ペンギンゴコロ」と題した作品でした。


参考資料「塗る」 黒い部分を塗りつぶす

言葉に続くのは、下絵、トレース、仕上げ、色付けなどの作画のプロセスで、実際に描かれた下絵などが公開されていました。


「ぴーちゃんと私」 下絵

中でも下絵で興味深いのは、絵本と同じ大きさのコピー用紙を用いていることで、絵だけでなく、テキストも同時に記されていました。まず言葉を大切に考えて絵本を描くのもさかざきの制作の特徴なのかもしれません。


参考資料「再校正」 赤字が反映された再校
 
この後の色や素材選び、印刷、そして製本のプロセスでは、色見本帳や試し刷りの表紙、また赤字を入れた初校や再校正などの資料が展示されていて、本づくりに関わる様々な手仕事を知ることができました。


左:参考資料「表紙色校1刷り」 イニシャル限定版 表紙1刷目(校正用)
右:参考資料「表紙色校1刷り」 イニシャル限定版 表紙(工場での試し刷り)

なお今回は本のサイズが小さく、厚みも薄いことから、人の手による手製本が採用されたそうです。


「ぴーちゃんと私とチーバくん」 シルクスクリーン ほか

また展示を記念してシルクスクリーン版も制作していて、完成した作品とともに、製版フィルムやシルクスクリーンの版も公開されていました。


「構造で見る絵本」展示風景

これまでに制作した25冊の絵本を分解した「構造で見る絵本」の展示も充実していました。


「構造で見る絵本」展示風景

ここでは1999年の「ペンギンゴコロ」や「100万匹目の羊」にはじまり、2019年の「なかよし ちびゴジラ」までの絵本が、カバー、表紙、折丁などに分けて並んでいて、まさに本の作りを目の当たりにできました。


「ペンギンのおかいもの」 手描き制作画 ほか

この他では、デジタル以前に制作された「ペンギンのおかいもの」や「ペンギンのゆうえんち」の手描き制作画なども、さかざきの細かな筆遣いが感じられる作品だったかもしれません。


「チーバくん ピーナッツカレンダー」 12カ月レシピ 2019年版

かなり手狭なスペースではありましたが、さかざきファンはもとより、本がどのように作られるのかという造本設計の観点からも興味深い展示だったのではないでしょうか。



さかざきがメインイラストの「ぴーちゃんと私とチーバくん」を制作する光景を捉えた、約10分間の映像も見応えがありました。

新型コロナウイルス感染症対策に伴い、マスク着用、手指の消毒の他、検温などが行われています。また入場時には、名前や住所、連絡先を来館者カードへ記入する必要がありました。


市川市生涯学習センター(メディアパーク市川)

最後にアクセスについての情報です。市川市文学ミュージアムの主な最寄駅は、JR総武線、及び都営新宿線の本八幡駅です。駅から歩いて15分~20分強ほどのメディアパーク市川(市川市中央図書館)の2階にあります。



駅から少し離れているため、例えば雨の日などはメディアパーク市川の北側に隣接するショッピングモール「ニッケコルトンプラザ」への無料バスも有用かもしれません。同プラザ開館日において、JR本八幡駅北口のロータリーより毎時4~6本ほどシャトルバスが行き来しています。シャトルバスについてはコルトンプラザのWEBサイトをご参照下さい。


市川市中央図書館入口横のパネル

なお1階の中央図書館内でも「本づくり展」に関連した資料の展示も行われていました。あわせて見るのも良さそうです。


中央:「ぴーちゃんの歌」 自主制作本 カバー手刺繍

地元市川でのさかざきちはるの個展としては、2017年の「さかざきちはるのおしごと展」(市川市芳澤ガーデンギャラリー)以来、約3年ぶりのことになります。


会場内の撮影が可能です。(常設展示は不可)2021年1月31日まで開催されています。*最上段の写真は、「ぴーちゃんと私とチーバくん」著者による手描きイラスト。

「さかざきちはるの本づくり展 手のひらサイズの大冒険」 市川市文学ミュージアム@nasi_ryman
会期:2020年11月7日(土)~2021年1月31日(日)
休館:月曜日。但し11月23日、1月11日は開館。11月24日、11月27日、年末年始(12月28日~1月4日)、1月12日、1月29日。
料金:一般500(400)円、65歳以上400(300)円、高校・大学生250(200)円、中学生以下無料。
 *( )内は25名以上の団体料金。
時間:10:00~19:30(平日)、10:00~18:00(土日祝)。
 *入場は閉館の30分前まで。
住所:千葉県市川市鬼高1-1-4 市川市生涯学習センター(メディアパーク市川)2階
交通:JR線・都営新宿線・本八幡駅より徒歩15~20分。京成線鬼越駅より徒歩10分。
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