都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
『新版画 進化系UKIYO-Eの美』 千葉市美術館
千葉市美術館
『新版画 進化系UKIYO-Eの美』
2022/9/14~11/3
千葉市美術館にて開催中の『新版画 進化系UKIYO-Eの美』を見てきました。
主に大正から昭和にかけて制作された新版画は、海外でも人気を集め、複数の版元が参入しては多くの作品が生み出されました。
その新版画の系譜をたどるのが『新版画 進化系UKIYO-Eの美』で、新版画の成立から発展期までの約190点に加え、明治末期に木版画を制作したヘレン・ハイドとバーサ・ラムの約50点の作品が展示されていました。
まずプロローグでは「新版画誕生の背景」と題し、新版画へと連なる木版画が紹介されていて、中でも当時の輸出向けとして人気を呼んだ小原古邨の作品に魅せられました。古邨は近年に茅ヶ崎市美術館や太田記念美術館にて展覧会が開かれるなど、愛好家からの注目を集めてきました。
新版画をおこしたのは版元の渡邉庄三郎で、従来の浮世絵の伝統的な摺りや彫りに、同時代の画家による下絵をあわせた新たな表現を目指しました。それに応えたのが橋口五葉や伊東深水といった画家で、五葉は『浴場の女』の一作で渡邉から離れるものの、のちも深水は多くの絵を描きました。
左:川瀬巴水『東京十二ヶ月 三十間堀の暮雪』 大正9年(1920) 右:川瀬巴水『東京十二ヶ月 谷中の夕映』 大正10年(1921)
一連の新版画の中でも特に名を馳せたのが、海外でも北斎、広重と並ぶ「3H」として高く評価された川瀬巴水でした。そして展示でも「旅みやげ第一集」や「旅みやげ第二集」といった風景画の名作が並んでいて、同じく渡邉とともに新版画を手がけた伊東深水の「新美人十二姿」や山村耕花の「梨園の華」の連作など一緒に楽しむことができました。
吉田博『光る海 瀬戸内海集』 大正15年(1926)
渡邉以外の版元の作品や私家版の作品も見どころといえるかもしれません。それらは時に渡邉版とは大きく作風を変えていて、一口に新版画といえども多様な作品があることが分かりました。また鳥居言人や伊藤孝之、三木翠山といった、必ずしもよく知られているとは言えない画家にも魅力的な作品が少なくありませんでした。
小早川清『近代時世粧ノ内六口紅』 昭和6年(1931)
私家版では橋口五葉や吉田博と並んで、当時のモダンガールと呼ばれる女性を描いた小早川清の作品も目立っていました。
小早川清『近代時世粧ノ内 一 ほろ酔ひ』 昭和5年(1930)
そのうちの女性風俗を描いた連作の「近代時世粧」の『ほろ酔い』では、肌をあらわにした女性がタバコを手にしながら、どこか艶っぽい眼差しで笑みを浮かべていました。かつての浮世絵も当時の風俗を生き生きと描き出しましたが、小早川の作品もまた鮮やかに「現代」を切り取ったといえるかもしれません。
イロハニアートへも展示の内容について寄稿しました。
新版画進化系UKIYO-Eの美展の見どころは?千葉市美術館で開催中! | イロハニアート
なお展示は昨年から東京、大阪、山口を巡回したもので、ここ千葉市美術館が最後の開催地となります。
ヘレン・ハイド『入浴』 明治38年(1905)
作品数は特集展示を含めると実に240点にも及んでいて、質量ともに圧倒的ともいえる内容でした。まさに新版画展の決定版と呼んで差し支えありません。
展示替えはありません。すべての作品が全会期中にて公開されます。
一部の作品の撮影が可能です。11月3日まで開催されています。おすすめします。
『新版画 進化系UKIYO-Eの美』 千葉市美術館(@ccma_jp)
会期:2022年9月14日(水)~11月3日(木・祝)
休館日:10月3日(月)*休室日:10月11日(火)。
時間:10:00~18:00。
*入場受付は閉館の30分前まで
*毎週金・土曜は20時まで開館。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
*( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
*常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
*ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は共通チケットが半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
『新版画 進化系UKIYO-Eの美』
2022/9/14~11/3
千葉市美術館にて開催中の『新版画 進化系UKIYO-Eの美』を見てきました。
主に大正から昭和にかけて制作された新版画は、海外でも人気を集め、複数の版元が参入しては多くの作品が生み出されました。
その新版画の系譜をたどるのが『新版画 進化系UKIYO-Eの美』で、新版画の成立から発展期までの約190点に加え、明治末期に木版画を制作したヘレン・ハイドとバーサ・ラムの約50点の作品が展示されていました。
まずプロローグでは「新版画誕生の背景」と題し、新版画へと連なる木版画が紹介されていて、中でも当時の輸出向けとして人気を呼んだ小原古邨の作品に魅せられました。古邨は近年に茅ヶ崎市美術館や太田記念美術館にて展覧会が開かれるなど、愛好家からの注目を集めてきました。
新版画をおこしたのは版元の渡邉庄三郎で、従来の浮世絵の伝統的な摺りや彫りに、同時代の画家による下絵をあわせた新たな表現を目指しました。それに応えたのが橋口五葉や伊東深水といった画家で、五葉は『浴場の女』の一作で渡邉から離れるものの、のちも深水は多くの絵を描きました。
左:川瀬巴水『東京十二ヶ月 三十間堀の暮雪』 大正9年(1920) 右:川瀬巴水『東京十二ヶ月 谷中の夕映』 大正10年(1921)
一連の新版画の中でも特に名を馳せたのが、海外でも北斎、広重と並ぶ「3H」として高く評価された川瀬巴水でした。そして展示でも「旅みやげ第一集」や「旅みやげ第二集」といった風景画の名作が並んでいて、同じく渡邉とともに新版画を手がけた伊東深水の「新美人十二姿」や山村耕花の「梨園の華」の連作など一緒に楽しむことができました。
吉田博『光る海 瀬戸内海集』 大正15年(1926)
渡邉以外の版元の作品や私家版の作品も見どころといえるかもしれません。それらは時に渡邉版とは大きく作風を変えていて、一口に新版画といえども多様な作品があることが分かりました。また鳥居言人や伊藤孝之、三木翠山といった、必ずしもよく知られているとは言えない画家にも魅力的な作品が少なくありませんでした。
小早川清『近代時世粧ノ内六口紅』 昭和6年(1931)
私家版では橋口五葉や吉田博と並んで、当時のモダンガールと呼ばれる女性を描いた小早川清の作品も目立っていました。
小早川清『近代時世粧ノ内 一 ほろ酔ひ』 昭和5年(1930)
そのうちの女性風俗を描いた連作の「近代時世粧」の『ほろ酔い』では、肌をあらわにした女性がタバコを手にしながら、どこか艶っぽい眼差しで笑みを浮かべていました。かつての浮世絵も当時の風俗を生き生きと描き出しましたが、小早川の作品もまた鮮やかに「現代」を切り取ったといえるかもしれません。
イロハニアートへも展示の内容について寄稿しました。
新版画進化系UKIYO-Eの美展の見どころは?千葉市美術館で開催中! | イロハニアート
なお展示は昨年から東京、大阪、山口を巡回したもので、ここ千葉市美術館が最後の開催地となります。
ヘレン・ハイド『入浴』 明治38年(1905)
作品数は特集展示を含めると実に240点にも及んでいて、質量ともに圧倒的ともいえる内容でした。まさに新版画展の決定版と呼んで差し支えありません。
展示替えはありません。すべての作品が全会期中にて公開されます。
ナイトミュージアム割引実施中🌛毎週金・土曜日は20:00まで開館、18:00以降にご来館の方は企画展「新版画 進化系UKIYO-Eの美」の観覧料が半額(一般1,200円→600円、大学生700円→350円)となります。この機会にぜひ足をお運びください!https://t.co/HAT6w0tMgj pic.twitter.com/cYoEMq0xgL
— 千葉市美術館 (@ccma_jp) September 23, 2022
一部の作品の撮影が可能です。11月3日まで開催されています。おすすめします。
『新版画 進化系UKIYO-Eの美』 千葉市美術館(@ccma_jp)
会期:2022年9月14日(水)~11月3日(木・祝)
休館日:10月3日(月)*休室日:10月11日(火)。
時間:10:00~18:00。
*入場受付は閉館の30分前まで
*毎週金・土曜は20時まで開館。
料金:一般1200(960)円、大学生700(560)円、高校生以下無料。
*( )内は前売り、市内在住の65歳以上の料金。
*常設展示室「千葉市美術館コレクション選」も観覧可。
*ナイトミュージアム割引:金・土曜日の18時以降は共通チケットが半額
住所:千葉市中央区中央3-10-8
交通:千葉都市モノレールよしかわ公園駅下車徒歩5分。京成千葉中央駅東口より徒歩約10分。JR千葉駅東口より徒歩約15分。JR千葉駅東口より京成バス(バスのりば7)より大学病院行または南矢作行にて「中央3丁目」下車徒歩2分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 『石井光智 ... | 『シャネルを... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません |