都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ナポレオンとヴェルサイユ展」 江戸東京博物館 6/3
江戸東京博物館(墨田区横網1-4-1)
「ヴェルサイユ宮殿博物館 - ナポレオンとヴェルサイユ展 - 」
4/8-6/18

ヴェルサイユ宮殿博物館の所蔵品によって、ナポレオンの半生を簡単にたどる展覧会です。勇壮なナポレオンの肖像画から宮殿の調度品、さらには皇妃ジョゼフィーヌゆかりの装飾具までが展示されています。

絵画ではやはりダヴィットの作品が特に優れていました。まずは有名な「マラの死」(1793)でしょうか。フランスの理論家として知られるマラ。入浴中に殺害されたという劇的なシーンが描かれています。隆々とした肉体。ペンを持ったまま腕をだらりと垂らしています。そして胸の傷口からは血が滴り落ちている。もちろん、凶器は床へ無造作に捨てられたナイフです。血がべっとりとついています。また、右側から差し込む光の陰影や、浴槽の横の木箱、それに緑や白のシーツの質感も見事でした。死を迎えて、痛々しくもどこか恍惚としているマラの表情。これは確かに魅せる作品です。

ダヴィットの描いたボナパルトの作品では、「サン=ベルナール山からアルプスを越えるボナパルト」(1800)が見応え十分でした。アルプスの険しい頂きを白馬に跨がって駆けるボナパルト。口元は引き締まり、右手は力強く行く手を指しています。また、アルプスの空には何やら暗雲が漂っています。その下では嵐が吹き荒れているのでしょうか。ボナパルトのマントや馬の鬣は、風に大きく靡いていました。もちろん彼はそんな嵐にも全く動揺していない。泰然とした、また威厳に満ちた神々しい姿をこれ見よがしに示します。もちろん実際にはラバを使ってアルプスを越えています。あくまでも、この作品は架空で理想のボナパルトでしょう。(そもそも、彼はモデルとしてポーズをとっていないと思います。)それにしても、ダヴィットのボナパルト賛美の描写には全く隙がありません。ラバを白馬にかえて彼を美化しているのはまだしも、左下にハッキリと刻まれたボナパルトの文字。それらが殆ど薄く消えかかっているハンニバルやカールらの上位に示されています。こんな細かいところまでしっかりと彼の威光を知らしめている。大したものです。
ダヴィット以外では、ジェラールの「戴冠式の正装の皇帝ナポレオン」も立派でした。目を近づけてみると、意外にも細部の描写が粗いのですが、白い毛皮の質感は見事です。威厳を見せつけるボナパルト。胸に付けたレジオン・ドヌール勲章が目立たないほど優雅で華麗な立ち姿です。
会場には、絵画の他にも、ボナパルトの使用した家具や、マリー=ルイーズの装飾品などが所狭しと展示されています。それにしても、江戸博の企画展示室は動線がまるで迷路のようです。お世辞にも優れた展示環境とは言えません。ただそんな中でも、当時の宮殿室内を再現したコーナーなどを設けている。なかなか力の入った展覧会です。
人気の展覧会なのか、館内は身動きをとるのも大変なほど混雑していました。通常は夕方17:30に閉館してしまいますが、土曜日だけは夜19:30まで開いています。その時間帯は比較的ゆっくり見られるかもしれません。今月18日までの開催です。
「ヴェルサイユ宮殿博物館 - ナポレオンとヴェルサイユ展 - 」
4/8-6/18

ヴェルサイユ宮殿博物館の所蔵品によって、ナポレオンの半生を簡単にたどる展覧会です。勇壮なナポレオンの肖像画から宮殿の調度品、さらには皇妃ジョゼフィーヌゆかりの装飾具までが展示されています。

絵画ではやはりダヴィットの作品が特に優れていました。まずは有名な「マラの死」(1793)でしょうか。フランスの理論家として知られるマラ。入浴中に殺害されたという劇的なシーンが描かれています。隆々とした肉体。ペンを持ったまま腕をだらりと垂らしています。そして胸の傷口からは血が滴り落ちている。もちろん、凶器は床へ無造作に捨てられたナイフです。血がべっとりとついています。また、右側から差し込む光の陰影や、浴槽の横の木箱、それに緑や白のシーツの質感も見事でした。死を迎えて、痛々しくもどこか恍惚としているマラの表情。これは確かに魅せる作品です。

ダヴィットの描いたボナパルトの作品では、「サン=ベルナール山からアルプスを越えるボナパルト」(1800)が見応え十分でした。アルプスの険しい頂きを白馬に跨がって駆けるボナパルト。口元は引き締まり、右手は力強く行く手を指しています。また、アルプスの空には何やら暗雲が漂っています。その下では嵐が吹き荒れているのでしょうか。ボナパルトのマントや馬の鬣は、風に大きく靡いていました。もちろん彼はそんな嵐にも全く動揺していない。泰然とした、また威厳に満ちた神々しい姿をこれ見よがしに示します。もちろん実際にはラバを使ってアルプスを越えています。あくまでも、この作品は架空で理想のボナパルトでしょう。(そもそも、彼はモデルとしてポーズをとっていないと思います。)それにしても、ダヴィットのボナパルト賛美の描写には全く隙がありません。ラバを白馬にかえて彼を美化しているのはまだしも、左下にハッキリと刻まれたボナパルトの文字。それらが殆ど薄く消えかかっているハンニバルやカールらの上位に示されています。こんな細かいところまでしっかりと彼の威光を知らしめている。大したものです。
ダヴィット以外では、ジェラールの「戴冠式の正装の皇帝ナポレオン」も立派でした。目を近づけてみると、意外にも細部の描写が粗いのですが、白い毛皮の質感は見事です。威厳を見せつけるボナパルト。胸に付けたレジオン・ドヌール勲章が目立たないほど優雅で華麗な立ち姿です。
会場には、絵画の他にも、ボナパルトの使用した家具や、マリー=ルイーズの装飾品などが所狭しと展示されています。それにしても、江戸博の企画展示室は動線がまるで迷路のようです。お世辞にも優れた展示環境とは言えません。ただそんな中でも、当時の宮殿室内を再現したコーナーなどを設けている。なかなか力の入った展覧会です。
人気の展覧会なのか、館内は身動きをとるのも大変なほど混雑していました。通常は夕方17:30に閉館してしまいますが、土曜日だけは夜19:30まで開いています。その時間帯は比較的ゆっくり見られるかもしれません。今月18日までの開催です。
コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )
« 「神坂雪佳展... | 「カルティエ... » |
神戸でもエライ人人人でした。
何を見たのかわからないくらいです。
同時期に別な主催の大ナポレオン展もあり、そちらもとんでもない人人人でした。
人間納豆になるくらいです。
ティアラや宝石類に目が光りましたが(ピカッ)どちらの展覧会か記憶が混ざるくらいの大混雑でした。
ナポレオン、神戸でも人気でしたか!
実は私はあまり好きではないのですが…、
(と言いつつ展覧会に行っております…。)
やはりカリスマ性がありますよね。
スゴい人出でした。
それにしても江戸博のナポレオン展は何とも奇妙です。
江戸土産の売り場の横で、
ベートーヴェンの英雄が何故か華々しく鳴り響いています。
まさにごった煮状態でした。
ベートーヴェン、憤りますよね~~
いや場所ではなくに。
皇帝になったので腹を立てて『英雄』捧げるのをやめたはずですよね?間違ってたらゴメンなさい。
フランスで歌舞伎を演じたとき、『俊寛』が大人気だったそうです。
理由=島流しだから。
この話、とても好きです。
白テンの毛皮のみごとな描写が忘れられません。
私が行ったのは平日だったので空いてました。
土日に行かなくて良かったです。
フェルメールの「恋文」を
観に行った時にこの展覧会も
一緒に観てきました。
ナポレオンのことざっとおさらいして
東京展も行ってこようかな~
こんばんは。
>ベートーヴェン、憤りますよね~~
いや場所ではなくに。
皇帝になったので腹を立てて『英雄』捧げるのをやめたはずですよね?間違ってたらゴメンなさい。
そうですね、
腹を立てたのかどうかは分からないのですが、
少なくともボナパルトを消したのは事実です。
それがまた展覧会の入口で華々しくかかっているとは…。
ベートーヴェンが化けて出ますね。
>フランスで歌舞伎を演じたとき、『俊寛』が大人気だったそうです。理由=島流しだから
これはキツいですね…。
まあ、そのようなエピソードがあるのも、
ボナパルトならではの魅力なのでしょうが…。
@一村雨さん
こんばんは。TBをありがとうございます。
>白テンの毛皮のみごとな描写
見事でしたよね!
毛並が波打つような表現で…。
>私が行ったのは平日だったので空いてました。
本当に混んでいました。
藤田展以上だと思うほどです…。
@TAkさん
こんばんは。TBをありがとうございます。
>フェルメールの「恋文」を
観に行った時にこの展覧会
神戸から来たのですよね。
それにしても何故江戸博へ…。都美がピッタリかなとも…。
閉会近くなってくると、やはり人気の展覧会って混んできますね。
私が行ったときは4月の平日だったので、まだゆっくり見ることができました。
ダヴィットの絵は、どれも荘厳な感じがして迫力がありました。
どの絵も歴史や美術の教科書で見て馴染んできた絵なので、実際に目にできて嬉しかったです。
実は先月、ブログを引っ越したばかりで、お返しをできる適当な記事がありませんので、今回はコメントのみですみません。
今後ともよろしくお願いします。
ご丁寧にコメントまでありがとうございました。
>私が行ったときは4月の平日だったので、まだゆっくり見ること
やはり展覧会は会期初めに行くに限りますね…。
ともかく非常に混んでいました。
ジュエリーなどは遠目です…。
>今回はコメントのみですみません。
今後ともよろしくお願いします。
いえいえ、とんでもありません。
こちらこそ宜しくお願い致します!
はろるどさんの言葉は正しかったです。
神戸と江戸博の両方をご覧になるとはさすがTAkさん!
迷路を右往左往しながら、
まさにナポレオンの人生のように辿る展覧会です。