「特別展 桃山―天下人の100年」 東京国立博物館

東京国立博物館・平成館
「特別展 桃山―天下人の100年」
2020/10/6~11/29



東京国立博物館・平成館で開催中の「特別展 桃山―天下人の100年」のプレス内覧会に参加してきました。

1573年の室町幕府滅亡から1603年の江戸幕府開府までの30年間を指す安土桃山時代には、日本美術史の中でも「変革期」とされる様々な文化が花開きました。

その安土桃山時代を中心に、室町時代末(天文年間)より江戸時代初期(寛永年間)までの100年間の文化を辿るのが「特別展 桃山―天下人の100年」で、絵画や陶芸、刀剣や甲冑などの作品、約230件(展示替えあり)が展示されていました。


左:「織田信長像」 狩野永徳 安土桃山時代・天正12年 京都・大徳寺
右:重要文化財「豊臣秀吉像画稿」 安土桃山時代 大阪・逸翁美術館

これほど桃山文化にまつわる優品が集まったことは、今までになかったかもしれません。狩野元信から永徳に探幽、さらにはライバルとされる長谷川等伯の絵画から江戸時代初期の風俗画、または上杉謙信や豊臣秀吉らの戦国武将ゆかりの甲冑、ないし千利休や古田織部にまつわる茶道具のほか、蒔絵や南蛮美術などの作品がずらりと並んでいて、ほぼ全編がハイライトと捉えても過言ではありませんでした。


手前:重要文化財「秋草蒔絵絵書箪笥」 安土桃山〜江戸時代 京都・高台寺
奥:国宝「楓図壁貼付」 長谷川等伯 安土桃山時代・文禄元年頃 京都・智積院

また絵画や工芸が時に一つの景色を作り上げるように展開しているのも特徴的で、例えば「秋草蒔絵歌書箪笥」越しに見やる等伯の「楓図壁貼付」では、秋草と赤と緑に彩られた楓の木が華麗に響き合うようでした。


「銀箔置白糸威具足」 安土桃山〜江戸時代 愛知・徳川美術館

「武将の装い」と題した刀剣と甲冑の展示も見逃せませんでした。ここでは家康の四男の松平忠吉や徳川四天王の一人である榊原康政らが用いた甲冑を中心に、家康自らがつけた刀剣などが並んでいて、戦国の世の武将の息吹きが感じられるようでした。


重要文化財「関ヶ原合戦図屏風」 江戸時代 大阪歴史博物館

現存する関ヶ原の戦いを描いた最古の屏風である「関ヶ原合戦図屏風」も見どころの1つかもしれません。右隻に決戦前の大垣城、関ヶ原へと向かう家康、そして本陣と続き、左隻に本戦と西軍の敗走が描かれていて、大勢の武将たちが対峙し合い、入り乱れては闘う姿を目の当たりにすることができました。家康の愛蔵品とされているものの、武将のほとんどを特定できない姿として示しているのも特徴と言われています。


重要文化財「花鳥蒔絵螺鈿聖龕」 安土桃山時代 九州国立博物館

キリスト教の聖画などを納めるための「花鳥蒔絵螺鈿聖龕」にも目を奪われました。全体を蒔絵で装飾し、部分を螺鈿に表した観音開きの扉の中には、聖母マリアやキリスト、それに聖ヨハネなどを描いたテンペラ画が描かれていて、螺鈿なども目映いばかりの光を放っていました。


「赤楽茶碗 銘 僧正」 道入 江戸時代 京都・樂美術館

道入の「赤楽茶碗 銘 僧正」にも魅せられました。朱に近い淡い土色の茶碗には、白土で小さな色紙を貼ったような紋様が記されていて、可憐に感じられました。


国宝「志野茶碗 銘 卯花墻」 安土桃山時代〜江戸時代 東京・三井記念美術館

この他、茶碗では「鼠志野茶碗 銘 山の端」や「志野茶碗 銘 卯花墻」なども並んでいて、桃山茶陶の世界を堪能することができました。なお「卯花墻」は三井記念美術館の誇る国宝の名品として知られていますが、同美術館で見るよりも僅かに赤色が強く感じられました。照明との効果によって若干見え方に違いがあったのかもしれません。


重要文化財「松鷹図襖・壁貼付」 狩野山楽 江戸時代・寛永3年 京都市(元離宮二条城事務所)

二条城二の丸御殿の大広間を飾った狩野山楽の「松鷹図襖・壁貼付」も迫力満点ではなかったでしょうか。緑の葉をつけた松の巨木や岩の上には、鋭い目を光らせる鷹が描かれていて、静かさに満ちながらも、威厳を感じさせるようでした。それこそ将軍の権威を見せつけるような作品と言えるかもしれません。


重要文化財「竹林虎図襖」 狩野山雪 江戸時代・寛永8年 京都・天球院

今回の展覧会で私が最も感銘したのは、狩野山雪の「竹林虎図襖」と「籬に草花図襖」、及び狩野山楽の「牡丹図襖」と「紅梅図襖」でした。前者は京都の天球院を飾る襖絵で、後者は同じく京都の大覚寺の間を飾っています。


重要文化財「籬に草花図襖」 狩野山雪 江戸時代・寛永8年 京都・天球院

中でも特に魅惑的なのが「籬に草花図襖」で、画面右上から左にかけて低くなる竹垣へたくさんの花を咲かせた朝顔が絡み合う光景を表していました。垂直と水平を意識した竹垣と曲線で広がる朝顔との取り合わせも絶妙で、朝顔の構図からは其一の名作「朝顔図屏風」を連想させるものがありました。


重要文化財「鼠志野茶碗 銘 山の端」 安土桃山〜江戸時代 東京・根津美術館

さて新型コロナウイルス感染症対策に伴う情報です。混雑緩和のため、オンラインでの事前予約制が導入されました。但しオンライン予約が難しい場合は、当日のみ有効の日時指定券を博物館の窓口にて購入することができます。(若干枚数のみ)


重要文化財「牡丹図襖」 狩野山楽 江戸時代 京都・大覚寺

時間枠は9時半の開館時より30分毎に15回(通常開館時)と21回(夜間開館時)設定されていて、それぞれに指定した枠内にて入場が可能です。入替制ではありませんが、90分での鑑賞が推奨されていました。


国宝「太刀 銘 助真 黒漆打刀」 刀身:鎌倉時代 刀装:江戸時代 栃木・日光東照宮

現在のところ午前中の早い時間帯から予約が集中し、昼過ぎから夕方にかけて時間枠に余裕が出来ているようです。



私も内覧会に続き、11月1日(日)の16時の予約枠にて改めて出向いてきました。時間枠内での入場者数を絞っているからか、会場内は混雑することなく、どの作品もスムーズに見られました。特に閉館1時間前以降はかなり人が減り、17時半を回るとほぼ貸切に近いほどでした。


会期は主に前期(10月6日~11月1日)と後期(11月3日~11月29日)に分かれていて、一部の作品が入れ替えとなります。(本記事は前期展示の内容です。11月3日より後期展示に入りました。)

一般の観覧料は2400円と過去の特別展と比べると高額です。これは感染症防止等の観点より入場者数を限定したことや、人件費が増えたことが理由に挙げられるそうです。*参考リンク:感染対策で入場料「最高」に 東京国立博物館の特別展(朝日新聞)


「特別展 桃山―天下人の100年」から「武将の装い」 展示風景

例えば2人で観覧する場合であれば、メンバーズプレミアムパス(5000円)も有用になってくるかもしれません。1年間有効の同パスは常設展を何度でも観覧できる上、4枚分の特別展の観覧券が付いてきます。「特別展 桃山」で観覧券を2枚利用したとしても、残りの2枚を来春に予定されている「国宝 鳥獣戯画のすべて」で使うことができます。実際、私もプレミアムパスの会員のため、2度目の鑑賞時はパスの観覧券を利用しました。


重要文化財「銀伊予札白糸威胴丸具足」 安土桃山時代 宮城・仙台市博物館

はじめに全編がハイライトと書きましたが、ともかく最初から最後までに質量とも充実した桃山美術の品々に圧倒されるものを感じました。今年の日本美術の大型展でも特に注目を集める展覧会となりそうです。



11月29日まで開催されています。おすすめします。

「特別展 桃山―天下人の100年」@momoyama_2020) 東京国立博物館・平成館(@TNM_PR
会期:2020年10月6日(火)~11月29日(日)
時間:9:30~18:00。
 *会期中の金・土曜は21時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。ただし11月23日(月・祝)は開館し、11月24日(火)は休館。
料金:一般2400円、大学生1400円、高校生1000円。中学生以下無料
 *団体料金の設定なし。
 *本展観覧券で、観覧日当日1回に限り、総合文化展(平常展)も観覧可。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。

注)写真は報道内覧会の際に主催者の許可を得て撮影しました。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 2020年11月に... 「KING&QUEEN... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。