「KING&QUEEN展―名画で読み解く 英国王室物語―」 上野の森美術館

上野の森美術館
「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展 ―名画で読み解く 英国王室物語―」
2020/10/10~2021/1/11



上野の森美術館で開催中の「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展 ―名画で読み解く 英国王室物語―」を見てきました。

世界屈指の肖像美術専門美術館であるロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリーには、主に15世紀以降、テューダー朝から現在のウィンザー朝へと至る歴代の王侯の肖像画が数多く収められてきました。

そうした一連のコレクションを日本で初めてまとめて公開したのが「KING&QUEEN展 ―名画で読み解く 英国王室物語―」で、絵画のみならず、版画や写真などの肖像が90点が展示されていました。

さてタイトルに「英国王室物語」とあるように、過去500年間のイギリス王室の歴史を辿られるのも大きな魅力と言えるかもしれません。



冒頭、エリザベス2世の威厳に満ちた肖像を過ぎると、ヘンリー8世やアン・ブーリン、さらにエリザベス1世などテューダー朝の肖像画が並んでいて、詳細な解説パネルや家系図などで、絵の描かれた背景や属性を知ることができました。

この属性とは人物の生き様や歴史のことで、例えば「エリザベス1世(アマルダの肖像画)」では、背景の左にイングランドの船が出港し、右に海に沈むスペイン艦隊が描かれていることから、アマルダ海戦での勝利を意味していることがわかりました。またエリザベス1世は一生独身を通したことでも知られていて、いわゆる処女性を象徴するとされる真珠のネックレスを身に纏っていました。

ステュアート朝の「チャールズ1世の5人の子どもたち」も興味深い作品かもしれません。中央で前を見据えるのがチャールズ1世の子、将来のチャールズ2世で、ローマ時代から番犬として愛されたマスティフ犬の頭の上に手を乗せていました。また左から2番目の子はチャールズ2世の弟であるジェームズ2世で、少女のような格好をしていました。この時代の子どもは性別に関係なく、少女のような服装をすることが多かったそうです。


ステュワート朝家系図 *会場内撮影可能パネル

そのジェームズ2世の子のアンを描いたゴドフリー・ネラーの「アン女王」に魅せられました。エリザベス1世以降で初めての女王であったアンは、例えば演説においてエリザベスの有名な衣装のレプリカを着用するなど、かつてのテューダー朝の権威を利用しながら統治を行いました。そして計17回妊娠したものの、幼少期を生き延びたのは男児1人だけという母としては悲劇的な人生を送りましたが、胸に手を当てて堂々と立つ姿には君主としての自負が感じられました。

ハノーヴァー朝のジョージ4世をモデルとした2枚の作品も面白いのではないでしょうか。1つはトーマス・ローレンスによる油彩の「ジョージ4世」で、鋳造されることはなかったものの、メダルを制作するために描かれました。引き締まって凛々しい横顔が印象に深いかもしれません。

もう1つは「消化におびえる酒色にふけた人(ジョージ4世)」と題した版画で、実は当時、肥満だった皇太子の姿を風刺するように表していました。ジョージ4世は芸術に対する支援活動で知られたものの、若い頃は暴飲暴食などの放蕩ぶりで「悪評」(解説より)されていました。さすがに顔つきこそ似ているものの、体格だけをとれば同じ人物とは思えませんでした。

ヴィクトリア女王の時代になると、印刷技術の進展によって王家の肖像への需要が高まり、さらに写真が一般に市販されるようになると、王室の写真画像も多く出回りました。またヴィクトリア女王も、いわゆるメディア戦略の一環として、自らの写真を肖像に使うことを進んで受け入れました。そうしたヴィクトリア朝時代の古写真も何点か出品されていました。


ドロシー・ウィンディング撮影、ベアトリス・ジョンソン彩色 「エリザベス2世」 1952年2月26日撮影 *会場内撮影可能作品。

ウィンザー朝の時代に入って目立つのは、王族の日常的な生活を捉えた写真でした。「ウィンザー城のクリスマス:ツリーを飾る」は、BBCのドキュメンタリー「ロイヤルファミリー」の収録中に写した作品で、家族と打ち解けた姿で暮らす女王の様子を有り体に示していました。ただ女王は後に同番組の撮影を許可したことを後悔したと言われていて、以降は放映されることはありませんでした。


チャールズ皇太子とカミラ妃、また故ダイアナ妃、さらにウィリアム王子とキャサリン妃にジョージ王子、ハリー王子とメーガン妃など、現在のロイヤルファミリーの写真も多く展示されていました。こうした写真も1つの見どころかもしれません。

新型コロナウイルス感染症対策に伴い、入場に際しては日時指定制が導入されました。各プレイガイドにて入場前日の17時までに購入することができます。また当日の場合は、会場のチケットボックスにて日時指定券を購入することが可能です。但し事前販売で規定枚数に達した場合は販売がありません。なお平日と土日祝日にてチケット料金が異なります。

最新の販売状況については、KING&QUEEN展チケット情報のアカウント(@kingqueen_info)にてご確認ください。


作家の中野京子さんによる著書「名画で読み解くイギリス王家12の物語」(光文社新書)が、展覧会公式参考図書としてコラボレーションしていました。

必ずしも全ての出展作と準拠しているわけではないものの、テューダー、ステュワート、ハノーヴァーの3つの王朝を絵画を引用しながら辿っていて、歴史背景などを分かりやすく解説していました。私も前もって読んでから出かけましたが、あわせておすすめしたいと思います。



国内への巡回はありません。会期中無休にて2021年1月11日まで開催されています。

「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING&QUEEN展―名画で読み解く 英国王室物語―」@king_queen_ten) 上野の森美術館@UenoMoriMuseum
会期:2020年10月10日 (土) ~ 2021年1月11日 (月)
休館:会期中無休。
時間:10:30~17:00
 *入場は閉館30分前まで。
 *金曜日は20時まで開館。但し1月1日(金祝)は17時まで。
料金:一般1800(2000)円、大学・高校生1600(1800)円、中学・小学生1000(1200)円。
 *平日料金。( )内は土日祝日料金。
住所:台東区上野公園1-2
交通:JR線上野駅公園口より徒歩3分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅徒歩5分。京成線京成上野駅徒歩5分。
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