「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」
2019/8/30~9/22



資生堂ギャラリーで開催中の「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」を見てきました。

1989年に大阪で生まれた遠藤薫は、沖縄県立芸術大学工芸専攻染めコースで学んだ後、工芸作家として活動しながら、VOCA展(2019年)に出展するなど現代アーティストとしても作品を発表してきました。現在は主にベトナムのハノイを拠点に制作を続けているそうです。



空間を埋め尽くさんとばかりに吊り下がる多くの布に目を奪われました。いずれもが麻や絹などを素材とした古い布で、福島や青森、それにカンボジアやベトナム、インドなどのアジア一帯から集められたものでした。

さすがに古い布だけに、表面は皮膚に刻まれた深い皺のように爛れていて、何とも深い味わいを醸し出していました。それこそ繊維や糸の1つ1つに使われた長い歴史が込められているのような、年季の入った布と言っても良いかもしれません。



布の色は一様ではなく、黄色や紫、それに青みがかったものなど、実にカラフルでした。また単純に布とはいえども、花の模様など、何らかの用途に使われたと思しきものがあることも見て取れました。



実のところ古い布には大きく分けて2種類あり、1つは古いベットシーツやこたつ布団、それに雑巾などの布、もう1つは戦前に織られた米袋や仕事着、ないしは絹などの布でした。そして前者では、古い布を集めては縫い締め、雑巾として活用し、また損なわれると修復した、いわば再利用を繰り返した布でした。



後者においても一口に古い布とは言い切れないかもしれません。とするのも、全てが戦前に織られた布であるものの、生きている蚕を這わせ、吐き出す糸によって穴などを修復するプロセスをとっていて、目を凝らすと確かに黄色くふわふわとした綿のような糸が広がっていることが分かりました。



この他にも沖縄夏の普段着である芭蕉布の破れを、米軍の服の端切れなどで直した布も展示されていました。かつての沖縄では、芭蕉布を米軍基地内のバナナの繊維で縫い繋いだり、米軍のパラシュートを解いた絹糸で布を織った歴史も存在していて、いわば布には戦争の痕跡も残されているわけでした。



遠藤はアジア各地の古い布をリサーチし、様々な方法で蘇らせるだけでなく、かつて布を織る仕事を担った女性の労働の在り方などにも目を向けています。



それぞれの随所に残った穴や傷痕を目にしていると、布の果たした役割とともに、長く辿ってきた歴史がひしひしと伝わるかのようでした。

【第13回 shiseido art egg 展示スケジュール】
今村文展: 2019年7月5日(金)~7月28日(日)
小林清乃展:2019年8月2日(金)~8月25日(日)
遠藤薫展: 2019年8月30日(金)~9月22日(日)

なお7月より行われた第13回「shiseido art egg」は、今回の遠藤薫の個展をもって終了します。会期後、専門家諸氏の選定を得て、上記3名の作家より大賞であるshiseido art egg賞が決定されます。(10月頃にギャラリーの公式サイトで発表予定。)


9月22日まで開催されています。*掲載写真は全て「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」会場風景、及び展示作品。

「第13回 shiseido art egg 遠藤薫展」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:2019年8月30日(金)~9月22日(日)
休廊:月曜日。*祝日が月曜にあたる場合も休館
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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