『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』 東京都現代美術館

東京都現代美術館
『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』
2022/3/19〜6/19



東京都現代美術館で開催中の『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』を見てきました。

1954年の「ゴジラ」で特撮美術スタッフの一員に関わり、デザイナー、特撮美術監督として活躍した井上泰幸は、戦後日本の特撮映像史を支えながら、次世代のクリエイターにも大きな影響を与えました。

その井上の生誕100年を記念したのが『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』で、会場には図面や絵コンテ、現場写真にミニチュアなど500点にも及ぶ作品と資料が公開されていました。



今回の回顧展では特撮に関する資料のみならず、作り手としての井上に焦点を当てているのも特徴で、冒頭では家族との写真や学生時代のスケッチブック、それに大学の卒業証書なども展示されていました。また彫刻家である妻・玲子の創作もあわせて紹介されていて、生涯にわたって協働した2人の人生の歩みをたどることもできました。

手描きによる膨大な絵コンテなどを追っていくと、いかに井上が特撮美術監督として長きにわたって活動していたことが分かりましたが、特に印象に深いのは「仕事の進め方」ともいうべき特撮映画の制作プロセスでした。


というのも、井上は特撮美術監督としてデザイン画を数多く描くと、イメージプランから造形管理、またミニチュア制作を実装する方法を探求していて、「井上式セット設計」と呼ばれる独自の俯瞰的スタイルを築いていたからでした。

それらは単に美術面だけでなく、予算管理やスタッフの配置などにまで網羅されていて、いわば高いマネジメント力を見ることができました。

井上は東宝からの独立後、アルファ企画を立ち上げてからも幅広く仕事を手がけていて、フリーランスの特撮美術監督として映画に携わっただけでなく、コマーシャルやテレビ番組などにもミニチュアを作りました。そうした独立してからの仕事に関する資料や作品も見応えがあったかもしれません。



ラストのアトリウムでは、映画「空の大怪獣ラドン」の舞台となった西鉄福岡駅のターミナルビルである岩田屋周辺のミニチュアセットが20分の1スケールにて再現されていました。*ミニチュアは撮影OK



これは当時のセットではなく、井上の愛弟子である特撮研究所の三池敏夫によって手がけられたものので、背景画を特撮映画専門の絵描きとして知られる島倉二千六が担いました。



ともかく細部まで精巧に作られていて、さながら映画の世界へと迷い込むかのような高い再現度を見せていたのではないでしょうか。なお岩田屋のミニチュアは2021年に佐世保市博物館島瀬美術センターにて開かれた『ゴジラシリーズを支えた特撮映画美術監督 井上泰幸展』にて初めて公開され、福岡駅ホームや西鉄電車は今回のために新たに制作されました。


Penオンラインへも展示の内容について寄稿しました。*撮影許可をいただき、展示作品の写真を掲載しています。

ゴジラの特撮はこうして作られた!『生誕100年特撮美術監督 井上泰幸展』へ|Pen Online

ともかく質量ともに膨大です。時間に余裕をもってお出かけください。



6月19日まで開催されています。

『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』 東京都現代美術館@MOT_art_museum
会期:2022年3月19日(土)〜6月19日(日)
休館:月曜日。
時間:10:00~18:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1700円、大学・専門学校生・65歳以上1200円、中高生600円、小学生以下無料。
 *コレクション展も観覧可。
住所:江東区三好4-1-1
交通:東京メトロ半蔵門線清澄白河駅B2出口より徒歩9分。都営地下鉄大江戸線清澄白河駅A3出口より徒歩13分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 「温泉・食・... 『Soul ジェ... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。