都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」 国立歴史民俗博物館
国立歴史民俗博物館
「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」
7/12〜9/4

国立歴史民俗博物館で開催中の「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」を見てきました。
江戸幕末期、2度に渡り、医者として来日したシーボルト。博物学者でもあったことから日本の生活資料を数多く収集し、ヨーロッパへと持ち帰りました。
そのシーボルト、現地の博物館でいわゆる日本の博物展示を行ったそうです。

「日本人の画家によるシーボルト肖像」 ブランデンシュタイン家
冒頭はシーボルト自身に関する資料です。シーボルトの肖像画はどうでしょうか。描いたのは日本の絵師。目を吊り上げ、口を尖らせては横を向く姿を捉えていますが、ともかく鼻が異様に高い。西洋人の鼻はよほど印象に深かったのでしょう。かなり誇張しています。
最初の来日後は出島に住み、16歳の女性に身の回りの世話をさせます。その人物こそが、事実上の夫婦生活を送ったオタキこと其扇です。5年間ともに暮らし、娘のイネをもうけました。
シーボルトは長崎郊外の鳴滝に学塾を構えることを許されます。ここで日本人の研究者と交流。医学知識を教えるとともに、日本の資料収集に熱心に取り組みました。

「鳴滝の家屋模型」 ミュンヘン五大陸博物館
「鳴滝の家屋模型」が出ていました。木造2階だて、縦の格子が特徴的な建物です。意外と小さい。結果的にシーボルトは当時、国外へ持ち出し禁止だった地図を持ち出そうとして追放処分を受けます。とは言え、他の収集品はそのまま持ち帰ることに成功。帰国後は日本研究の成果を著した「日本」、「日本動物誌」、そして「日本植物誌」などを刊行しました。
この「日本」の扉絵の原画が面白い。鳥居があり、甲冑を着た武将が座り、鬼が現れ、何故かトウモロコシが描かれています。古来の神話をモチーフとしたそうです。西洋人の見た日本のイメージを詰め込んでいるかもしれません。

「日本植物誌(オタクサ)」 ブランデンシュタイン家
植物誌の原画も出ています。名は「オタクサ」。オタキに因んで付けられたものです。薄い紫の花弁も美しい。極めて写実的に表されています。
シーボルトは人類学にも深い関心を寄せていました。よって日本人の肖像画も多く描かせています。例えば肖像の「くまそ」です。銅版画を思わせる深い陰影が目を引きます。顔面の筋肉、髪の毛の一本一本の表現も大変に細かい。おそらくはモデルの特徴を巧みに捉えています。
ヨーロッパでの最初の日本展示を実現したのは帰国から3年後。場所はライデンです。シーボルトの自宅で開催しました。

「雑誌に掲載されたアムステルダムにおける展示風景」 ブランデンシュタイン家
その後、シーボルトは2度目の来日を挟み、計4度の日本展示を行います。まずはアムステルダムです。同地の産業振興会館でした。さらに故郷ヴュルツブルクへも移設。時のバイエルンの国王に日本コレクションの有益性を説きます。最終的には1866年、ミュンヘンの宮殿内のギャラリー棟にて日本展示室をオープンさせました。
この日本の博物展示を再現したのが「ようこそシーボルトの日本博物館」です。現在はミュンヘンの五大陸博物館に収蔵されるコレクションをまとめて展示。いわゆる里帰りです。約150年ぶりにシーボルトの意図した博物館が日本の地で蘇りました。

「花鳥図衝立」 ミュンヘン五大陸博物館
このシーボルトのコレクションが思いがけないほどに多彩です。華やかなのは「花鳥図衝立」。極彩色の花鳥図が4面に続く衝立です。上下の浮彫も見事に表されています。

「燈籠」 ミュンヘン五大陸博物館
「燈籠」も目立つのではないでしょうか。計2つ。寺院にあったものだと言われています。ほか「阿弥陀如来立像」も立派です。まさか家具や仏像彫刻までを網羅していたとは思いませんでした。

「阿弥陀如来立像」 ミュンヘン五大陸博物館
絵画もありました。「泥絵画帖」や伝探幽の「貝之図」、それに「捕鯨之図」なども印象深い。ちなみに捕鯨はシーボルト自身も強い興味を持っていたそうです。10隻以上もの船が連なっては鯨を追い込む様子が描かれています。

「法被(長崎くんち衣裳)」 ミュンヘン五大陸博物館
日用品や玩具などの生活資料も充実しています。例えば「かるた」や「色紙」。胃薬「清神丸」の小袋も収集しています。文具では「筆洗」です。さらにアイヌの前掛けや長崎くんちの衣装やら獣面に太鼓、蒔絵や太刀と幅広い。小判もありました。

「麦藁細工の玩具」 ミュンヘン五大陸博物館
デジタルコンテンツも用意されています。ミュンヘンの五大陸博物館にあるシーボルトコレクション、計6000点をタッチパネルで拡大閲覧することも可能です。

シーボルトが取り組んだヨーロッパでの日本博物展示。新出の地図をはじめ、初来日品も少なくありません。かなり綿密に資料調査を行った形跡も伺えます。その一端を知ることが出来ました。
[よみがえれ!シーボルトの日本博物館]巡回スケジュール
江戸東京博物館:9月13日(火)〜2016年11月6日(日)
長崎歴史文化博物館:2017年2月18日(土)〜2017年4月2日(日)
*以降、名古屋、大阪へも巡回予定。

9月4日まで開催されています。
「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」(@150Siebold) 国立歴史民俗博物館(@rekihaku)
会期:7月12日(火)~9月4日(日)
休館:月曜日。但し休日の場合は翌日が休館日。8月15日(月)は開館。
時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般830(560)円、高校生・大学生450(250)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*毎週土曜日は高校生が無料。
*総合展示も観覧可。
住所:千葉県佐倉市城内町117
交通:京成線京成佐倉駅下車徒歩約15分。JR線佐倉駅北口1番乗場よりちばグリーンバス田町車庫行きにて「国立博物館入口」または「国立歴史民俗博物館」下車。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」
7/12〜9/4

国立歴史民俗博物館で開催中の「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」を見てきました。
江戸幕末期、2度に渡り、医者として来日したシーボルト。博物学者でもあったことから日本の生活資料を数多く収集し、ヨーロッパへと持ち帰りました。
そのシーボルト、現地の博物館でいわゆる日本の博物展示を行ったそうです。

「日本人の画家によるシーボルト肖像」 ブランデンシュタイン家
冒頭はシーボルト自身に関する資料です。シーボルトの肖像画はどうでしょうか。描いたのは日本の絵師。目を吊り上げ、口を尖らせては横を向く姿を捉えていますが、ともかく鼻が異様に高い。西洋人の鼻はよほど印象に深かったのでしょう。かなり誇張しています。
最初の来日後は出島に住み、16歳の女性に身の回りの世話をさせます。その人物こそが、事実上の夫婦生活を送ったオタキこと其扇です。5年間ともに暮らし、娘のイネをもうけました。
シーボルトは長崎郊外の鳴滝に学塾を構えることを許されます。ここで日本人の研究者と交流。医学知識を教えるとともに、日本の資料収集に熱心に取り組みました。

「鳴滝の家屋模型」 ミュンヘン五大陸博物館
「鳴滝の家屋模型」が出ていました。木造2階だて、縦の格子が特徴的な建物です。意外と小さい。結果的にシーボルトは当時、国外へ持ち出し禁止だった地図を持ち出そうとして追放処分を受けます。とは言え、他の収集品はそのまま持ち帰ることに成功。帰国後は日本研究の成果を著した「日本」、「日本動物誌」、そして「日本植物誌」などを刊行しました。
この「日本」の扉絵の原画が面白い。鳥居があり、甲冑を着た武将が座り、鬼が現れ、何故かトウモロコシが描かれています。古来の神話をモチーフとしたそうです。西洋人の見た日本のイメージを詰め込んでいるかもしれません。

「日本植物誌(オタクサ)」 ブランデンシュタイン家
植物誌の原画も出ています。名は「オタクサ」。オタキに因んで付けられたものです。薄い紫の花弁も美しい。極めて写実的に表されています。
シーボルトは人類学にも深い関心を寄せていました。よって日本人の肖像画も多く描かせています。例えば肖像の「くまそ」です。銅版画を思わせる深い陰影が目を引きます。顔面の筋肉、髪の毛の一本一本の表現も大変に細かい。おそらくはモデルの特徴を巧みに捉えています。
ヨーロッパでの最初の日本展示を実現したのは帰国から3年後。場所はライデンです。シーボルトの自宅で開催しました。

「雑誌に掲載されたアムステルダムにおける展示風景」 ブランデンシュタイン家
その後、シーボルトは2度目の来日を挟み、計4度の日本展示を行います。まずはアムステルダムです。同地の産業振興会館でした。さらに故郷ヴュルツブルクへも移設。時のバイエルンの国王に日本コレクションの有益性を説きます。最終的には1866年、ミュンヘンの宮殿内のギャラリー棟にて日本展示室をオープンさせました。
この日本の博物展示を再現したのが「ようこそシーボルトの日本博物館」です。現在はミュンヘンの五大陸博物館に収蔵されるコレクションをまとめて展示。いわゆる里帰りです。約150年ぶりにシーボルトの意図した博物館が日本の地で蘇りました。

「花鳥図衝立」 ミュンヘン五大陸博物館
このシーボルトのコレクションが思いがけないほどに多彩です。華やかなのは「花鳥図衝立」。極彩色の花鳥図が4面に続く衝立です。上下の浮彫も見事に表されています。

「燈籠」 ミュンヘン五大陸博物館
「燈籠」も目立つのではないでしょうか。計2つ。寺院にあったものだと言われています。ほか「阿弥陀如来立像」も立派です。まさか家具や仏像彫刻までを網羅していたとは思いませんでした。

「阿弥陀如来立像」 ミュンヘン五大陸博物館
絵画もありました。「泥絵画帖」や伝探幽の「貝之図」、それに「捕鯨之図」なども印象深い。ちなみに捕鯨はシーボルト自身も強い興味を持っていたそうです。10隻以上もの船が連なっては鯨を追い込む様子が描かれています。

「法被(長崎くんち衣裳)」 ミュンヘン五大陸博物館
日用品や玩具などの生活資料も充実しています。例えば「かるた」や「色紙」。胃薬「清神丸」の小袋も収集しています。文具では「筆洗」です。さらにアイヌの前掛けや長崎くんちの衣装やら獣面に太鼓、蒔絵や太刀と幅広い。小判もありました。

「麦藁細工の玩具」 ミュンヘン五大陸博物館
デジタルコンテンツも用意されています。ミュンヘンの五大陸博物館にあるシーボルトコレクション、計6000点をタッチパネルで拡大閲覧することも可能です。

シーボルトが取り組んだヨーロッパでの日本博物展示。新出の地図をはじめ、初来日品も少なくありません。かなり綿密に資料調査を行った形跡も伺えます。その一端を知ることが出来ました。
[よみがえれ!シーボルトの日本博物館]巡回スケジュール
江戸東京博物館:9月13日(火)〜2016年11月6日(日)
長崎歴史文化博物館:2017年2月18日(土)〜2017年4月2日(日)
*以降、名古屋、大阪へも巡回予定。

9月4日まで開催されています。
「よみがえれ!シーボルトの日本博物館」(@150Siebold) 国立歴史民俗博物館(@rekihaku)
会期:7月12日(火)~9月4日(日)
休館:月曜日。但し休日の場合は翌日が休館日。8月15日(月)は開館。
時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
料金:一般830(560)円、高校生・大学生450(250)円、中学生以下無料。
*( )内は20名以上の団体料金。
*毎週土曜日は高校生が無料。
*総合展示も観覧可。
住所:千葉県佐倉市城内町117
交通:京成線京成佐倉駅下車徒歩約15分。JR線佐倉駅北口1番乗場よりちばグリーンバス田町車庫行きにて「国立博物館入口」または「国立歴史民俗博物館」下車。東京駅八重洲北口より高速バス「マイタウン・ダイレクトバス佐倉ICルート」にて約1時間。(一日一往復)
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