「加藤翼 縄張りと島」 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリー
「加藤翼 縄張りと島」
2021/7/17~9/20



東京オペラシティアートギャラリーで開催中の「加藤翼 縄張りと島」を見てきました。

1984年生まれのアーティスト加藤翼は、複数の参加者による協働作業によるパフォーマンスで知られ、これまでにも国内外にて数々のプロジェクトを展開してきました。

その加藤の美術館として初の個展が「縄張りと島」で、過去に手掛けたプロジェクトを映像や写真、さらには構造体などで紹介していました。



冒頭からただならぬ会場の雰囲気に圧倒されるかもしれません。暗がりの展示室内にてまず姿を表すのが巨大でかつ傾いた木の構造物で、その前のモニターには「ISEYA Calling」が映されていました。


「ISEYA Calling」 2012年

これは2012年、吉祥寺の老舗焼き鳥店「いせや公園店」が改築のために解体された際、木材を井の頭公園へ運び、二階建ての店舗を復元しようとしたもので、映像には参加者が力を合わせて構造を組み上げる様子が捉えられていました。


「Superstring Secrets: Hong Kong」 2020年

箱型のスクリーンに映された「Superstring Secrets: Hong Kong」は、香港の人々に秘密を書いてもらうプロジェクトで、アーティストや哲学者、学生たちの協力の元、地下のトンネルにて行われました。そしてこのボックスからは秘密を書いた紙をによって作られたロープが伸びていて、半ば映像から飛び出してきたような姿を見せていました。また紙、つまり秘密はシュレッダーで細かく裁断されていました。


「The Lighthouses -11.3 PROJECT」 2011年

加藤の作品でよく知られるのは、東日本大震災後の福島県いわき市にて行われた「The Lighthouses -11.3 PROJECT」ではないでしょうか。ここでは津波で壊された家々の瓦礫により灯台の形に組み上げられた構造体を、500人の人々ともに引き起こしていて、家を失った家主より大量の木材の提供を受けて実現しました。当時の加藤は現地で瓦礫撤去のボランティアに参加していました。



このように現地の人々が集い、様々な知恵を出し合いながら、ロープと人力のみで巨大な構造体を倒したり、引き起こす「Pull and Raise」が加藤の代表的なシリーズで、福島ではこのプロジェクトが契機となり、震災からの復興を目指す祭事の開催へと発展しました。

こうした一連の大型の構造物が目立つ反面、一転して小さな素材を用いて作品を制作しているのも面白いかもしれません。


「Can You Hear Me?」 2015年

例えば「Can You Hear Me?」は携帯電話サイズの液晶画面を4つ並べた作品で、画面の中に映された人はひたすら手前へ向かって小石を投げていました。これはシアトル、ボストン、クアラルンプール、メキシコシティの路上にて同時多発的に行われたパフォーマンスで、集まったアーティストらは電話で話し合いながら姿の見えない相手に向かって石を投げました。


「第十八回オリンピック東京大会」 2021年

さらに代名詞といえる引き起こしをミニチュアで表現した作品も展示されていて、大小へと切り替わる様々なスケール感も魅力的に思えました。



会場には各プロジェクトに参加した人たちの「セーノ!セーノ!」や「go!go!」といった掛け声とともに、構造体を引き起こしたり倒す「ドッカン、バッタン」といった音が轟いていて、あたかも一緒にプロジェクトに加わっているような錯覚さえ与えられました。この一体感、ないしライブ感も加藤の作品の醍醐味なのかもしれません。



予約は不要です。撮影もできました。


9月20日まで開催されています。

「加藤翼 縄張りと島」 東京オペラシティアートギャラリー@TOC_ArtGallery
会期:2021年7月17日(土)~9月20日(木)
休館:月曜日(祝日の場合は翌火曜日)。
時間:11:00~19:00 
 *入場は閉館30分前まで。
料金:一般1200(1000)円、大・高生800(600)円、中学生以下無料。
 *同時開催中の「収蔵品展071 夏の風景:寺田コレクションの日本画」と「project N 83 衣川明子」の入場料を含む。
 *( )内は各種割引料金。
住所:新宿区西新宿3-20-2
交通:京王新線初台駅東口直結徒歩5分。
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