「柵瀨茉莉子展 いのちを縫う」 横浜美術館アートギャラリー1、カフェ小倉山

横浜美術館アートギャラリー1、カフェ小倉山
「柵瀨茉莉子展 いのちを縫う」
2020/11/14~12/13



横浜美術館アートギャラリー1、カフェ小倉山で開催中の「柵瀨茉莉子展 いのちを縫う」を見てきました。

1987年に神奈川県の横須賀で生まれた柵瀨茉莉子(さくらい・まりこ)は、「縫う」ことを表現の手段としては、木片や花びらなどを素材に作品を制作してきました。

その柵瀨の個展が「いのちを縫う」と題した展示で、過去の作品を踏まえつつ、生まれ育った横須賀の佐島を舞台とした新作などが公開されていました。


「葉っぱのかさぶた」 2007〜2008年

まず最初期に制作されたのが「葉っぱのかさぶた」で、作家が学生時代、構内に落ちた椎の葉を布のかばんに縫い付けた作品でした。ここで興味深いのは縫う行為に至ったプロセスで、当時の大学内で自ら命を絶った人がいたと知り、消えた命のために糸で葉を日々縫い込んだとしていました。


「いとの日 2」 2019〜2020年

以来、柵瀨は亡き祖母のトレーナーへ髪の毛を塗った作品や、展示の準備の際に起きた台風の被災者に思いを馳せて針を進めるなど、縫いに鎮魂の祈りを捧げてきました。こうした縫う所作と祈りが結びついているのも、柵瀨の創作の大きな特徴かもしれません。それぞれの作品に作家自らが手書きで思い出を添えているのも印象に残りました。


「木を縫う 11」 2010年

「葉っぱのかさぶた」に続き、木の皮に穴を開けて金糸で縫い取ったのが「木を縫う」のシリーズでした。会場でもいくつかの木片が吊るされていて、遠目では判然としないものの、近づいて見ると確かに金色の糸が縫われていることが分かりました。


「木を縫う 11」(部分) 2010年

それらは木目に沿っていながらも、時には自由に模様を広げていて、必ずしも一様ではありませんでした。中には集めた樹皮を縫いつなぎ、立体として表現した作品もありました。


「貝の試作」 2020年

この他では、貝殻やダチョウの卵に刺繍を施した作品も興味深いのではないでしょうか。また亡くなった祖母が戦時中に使っていたかばんに縫いを入れた作品には、それこそ祖母への祈りとともに、カバンを再生させては新たな命を吹き込もうとする作家の意思が感じられました。


「山の記憶」 2019〜2020年
 
大きな布に花びらや葉、それに実や皮などを塗って山の形を築いた「山の記憶」も魅惑的な作品かもしれません。これほど樹皮や葉っぱが愛おしく感じられたこともなく、細かな糸と木の皮や葉の織りなす小宇宙に心を惹かれました。


「戦時中のかばん」 2018年

会場は横浜美術館のアートギャラリー1で、正面エントランスよりグランドギャラリー右手横の企画展入口の奥のスペースになります。またカフェ小倉山でもミニ展示が行われていました。


入場は無料です。新型コロナウイルス感染防止の観点から、当初会期(3月14日~4月12日)より変更されました。12月13日まで開催されています。

「柵瀨茉莉子展 いのちを縫う」 横浜美術館アートギャラリー1、カフェ小倉山(@yokobi_tweet
会期:2020年11月14日(土)~12月13日(日) *会期変更
休館:木曜日。
時間:11:00~18:00
 *カフェ小倉山は10:45~18:00
料金:無料。
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
交通:みなとみらい線みなとみらい駅3番出口から徒歩3分。JR線、横浜市営地下鉄線桜木町駅より「動く歩道」を利用、徒歩約10分。
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