「おもしろびじゅつワンダーランド2017」 サントリー美術館

サントリー美術館
「おもしろびじゅつワンダーランド2017」 
8/1~8/31



2012年にサントリー美術館で開催され、新たな体感型の展示として話題を集めた「おもしろびじゅつワンダーランド」が、内容を一新して、約5年ぶりに帰って来ました。

合言葉は「ひらけ!美のとびら」です。デジタルとアナログを問わず、インタラクティブな仕掛けを随所に施し、日本美術に親しみをもてるように工夫されています。



ワンダーランドへの旅を誘うのは鳳凰でした。名付けて「出現!鳳凰ワールド」です。案内してくれるのは「サン美 ツル太」で、江戸時代の「色絵鶴香合」をモチーフにしたマスコットでした。



「桐鳳凰図屏風」が映像で展開します。屏風絵が広がったと思うと、鳳凰が羽ばたいては、彼方へと飛び去っていきました。また「鳳凰ワールドのまめちしき」として、パネルによる鳳凰、また屏風のイロハについての解説も有用です。鳳凰について分かりやすく知ることが出来ました。


狩野探幽「桐鳳凰図屏風」 江戸時代・17世紀 サントリー美術館

映像の奥に出現するのが、本物の「桐鳳凰図屏風」でした。かの狩野探幽の作品です。鳳凰が左右に2羽ずつ、互いに視線を合わせていることから、夫婦だと考えられています。右隻にはひな鳥の姿も見えました。


狩野探幽「桐鳳凰図屏風」(部分) 江戸時代・17世紀 サントリー美術館

桐は住処を表し、背後には鳳凰が飲むための水も流れています。そもそも鳳凰自体が幸せを意味することから、結婚の祝いのために制作されたと考えられているそうです。輝かしい金地に白や緑などの羽をつけた鳳凰の姿は典雅です。先にデジタルで舞う姿を見たからか、さも画中の鳳凰が動き出すかのようなイメージが浮かび上がりました。



続くのが切子です。テーマは「切子の宇宙」でした。ぐっと照明を落とし、目映い光を放つ切子の美しさを見事に引き出しています。


「切子 蓋付三段重」 江戸時代・19世紀 サントリー美術館

壁に投影される切子の拡大の映像も効果的です。確かに切子の煌めきが夜空に光る星々のようにも見えなくありません。しばらくその光に酔いしれました。



宝探しならぬ、宝物ばかり集めたのが「くつろぎの宝尽ルーム」でした。江戸時代の「宝尽文筒描蒲団地」や、鍋島の「色絵寿字宝尽文八角皿」など、吉祥主題の作品からモチーフを引用し、それをクッションに仕立てています。


「色絵寿字宝尽文八角皿」 江戸時代・18世紀前半 サントリー美術館

「寿」に模したスペースではクッションを触って遊ぶことも可能です。さらに「宝物大集合!」と題した吉祥主題の解説パネルがとても良く出来ていました。宝剣や打出小槌はもとより、軍配や冊子、法螺貝などの宝物の由来を一つずつ解説しています。鑑賞の参考になりました。



今回の「おもしろびじゅつ」で、一番チャレンジングなのが「みんなで叫んで!吹墨文」です。ご覧のように、階段下の吹き抜けに、巨大な徳利を模した装置を置き、四隅のマイクへ声を吹き込むと、様々な色や形が浮き上がるという展示を行っています。


この吹墨文は小声ではあまり形が現れません。だからこその「叫んで!」です。かなり大きな声をマイクに発する必要があります。私が出かけた時も子どもたちの大きな声が館内に轟いていました。


「染付吹墨文大徳利」 江戸時代・17世紀前半 サントリー美術館

通常、静粛性が求められる美術館では、異例の取り組みと言えるかもしれません。なお文様は一度に多くの方が声を吹き込んだ方がたくさん出現します。グループで参加するのも良さそうです。



突如、日本家屋風の空間が登場しました。「みて・きいて!鼠草子絵巻」です。「みて」とはもちろん目での鑑賞です。分かりやすい解説の元、計4巻の絵巻を順を追って見ることが出来ます。では、「きいて!」とは一体、何を示すのでしょうか。



答えは音声ガイドでした。鼠草子のコーナーの手前に小屋があり、そこでガイドを借りると、音声の解説を頼りに耳で絵巻を味わうことが出来ます。


「鼠草子絵巻」(部分) 室町時代〜桃山時代・16世紀 サントリー美術館

この解説がまたコミカルです。絵巻の面白さをうまく伝えていたのではないでしょうか。約15分のロングバージョンです。長い絵巻とはいえ、1つの作品に、これほど長い音声ガイドがついたことはなかったかもしれません。



ラストがタッチパネルを利用した「キモノ・デザイン」でした。手元の端末を用いて、江戸時代の装束を、色や絵柄のサンプルから多様にデザインすることが出来ます。



はじめは色、そしてデザイン、さらにモデルの人形と順を追って操作すると完成です。完成作は「作品」として会場内のモニターに一覧表示されます。前回の鍋島に代わっての着物のデザインです。思い思いに挑戦してみてはいかがでしょうか。



前回展から早くも5年。いわゆる体感型の手法を取り入れた展覧会は、ほかの博物館や美術館でもかなり増えました。撮影可、デジタルコンテンツでのインタラクティブな試みも珍しくなくなりました。ただ「おもしろびじゅつ」ほど体感型に特化した美術展は、さすがに見当たりません。


「能装束 間道縞に桜蜘蛛巣模様縫箔」 江戸時代・19世紀 サントリー美術館

初日の夕方に出かけため、館内は空いていましたが、遅かれ早かれ混み合うことは間違いありません。タッチパネルは台数も限られています。予め時間に余裕を持ってお出かけ下さい。

子どもたちが楽しそうにクッションで寝そべったり、着物のデザインに夢中で取り組む姿が印象に残りました。ファミリーで夏休みの思い出を作るのにも良い機会と言えそうです。



撮影もOKです。8月31日まで開催されています。

「六本木開館10周年記念展 おもしろびじゅつワンダーランド2017」 サントリー美術館@sun_SMA
会期:8月1日(火)~8月31日(木)
休館:8月6日(日)のみ休館。
時間:10:00~18:00
 *毎週金曜、土曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般1000円、大学・高校生800円、中学生以下無料。
 *アクセスクーポン、及び携帯割(携帯/スマホサイトの割引券提示)あり。
場所:港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウンガレリア3階
交通:都営地下鉄大江戸線六本木駅出口8より直結。東京メトロ日比谷線六本木駅より地下通路にて直結。東京メトロ千代田線乃木坂駅出口3より徒歩3分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )