「DOMANI・明日」展 2007 損保ジャパン東郷青児美術館

損保ジャパン東郷青児美術館新宿区西新宿1-26-1 損保ジャパン本社ビル42階)
「未来を担う美術家たち『DOMANI・明日』展 2007 - 文化庁芸術家在外研修の成果 - 」
1/11-2/18



文化庁の「芸術家在外研修(新進芸術家海外留学)」制度によって、海外へと派遣された芸術家の作品を概観します。新進芸術家という言葉とは裏腹に、既にキャリアを積んだいわゆる中堅の作家が多く紹介されていました。全30名、主に絵画を中心とした約70点にて構成された展覧会です。



既に親しみのある作家も何名か登場しています。その中では、瑞々しいアクリルによるパステル調の色彩が眩しい丸山直文の「Jump 1」(2003)や、砂浜に横たわる裸体の男性がまるで彫像を象るかのような小林孝旦の「Sunbather 1」(2003)などが印象的でした。ちなみに丸山のそれは、「長靴の中のピッピ」の主人公ピッピをモチーフにしたものだそうです。それこそメルヘン風にまとめ上げたその淡い画風に魅力を感じます。しばらく見ていると、あたかも色の温もりに包み込まれ、そのタッチに溶け込んでしまうような作品です。(チラシ表紙掲載の作品です。)

うっすらと水色を帯びた和紙に、まるで炭の破片のような黒い面がいくつも並んだ高橋洋の「water on water 2」(2003)も美感に溢れていました。和紙に染み込ませたのは顔料、そして黒の面は木版によるものでしょうか。控えめな青みの中に、リズムを奏でながら浮遊する黒には心地良ささえ覚えます。まるでピアノの黒鍵が、例えばミニマル音楽などを静かに紡いでいるかのようです。

深いエメラルドグリーンの質感が重々しい、東島毅の「6-days-W」(2006)も心に残りました。いわゆる抽象画かと思いますが、その藍を帯びた色の深みからは、長髪の女性が朧げに浮かび上がってくるような錯覚さえします。目に染み入るような、どっしりとした色の物質感を楽しむことが出来ました。



諏訪敦の「うつらうつらと 流れた」(2006)は目立っています。彼の描くヌードの女性からは、その徹底したリアリスムに由来する官能の匂いと、その反面での奇妙に冷めた色彩による不気味な気配を同時に感じます。極めて精緻に描かれていながらも、どこか生気を抜き去ったような感触が、女性の存在感を幾分弱めているのかもしれません。振り乱された流麗な髪に美意識を感じつつ、若干の「死」をもイメージさせる不思議な作品でした。

展示作品と「在外研修の成果」に関連を見出しにくいのも事実ですが、真摯に表現に取り組んだ作家の痕跡を感じ取ることは出来ました。今月18日までの開催です。(2/3鑑賞)
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