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窮地の韓国大統領

2016-11-05 21:39:39 | Weblog


韓国のパク・クネ大統領が辞任の瀬戸際に立たされている。

韓国ギャラップの世論調査では支持率が5パーセントに落ちた。国家の機密文書を支持者の実業家に渡した疑惑のせいである。必要であれば大統領自らも検察の調べに応じる、とさえ発言せざるをえないところまで追い込まれた。

思い起こせば、韓国の大統領の多くが退任後、在任中のスキャンダルが暴露されて政治家としての晩節を汚すはめになった。チョン・ドファン大統領の場合は金銭スキャンダルと民主化活動家への弾圧。ノ・テウ大統領も政治資金隠匿と民主化運動弾圧を追及された。

ノ・ムヒョン大統領も親族や側近の金銭スキャンダルに加え、自身も政治資金の不正な受け取りを疑われた。逮捕が噂される中でノ・ムヒョン氏は自宅裏山の崖から投身自殺した。

イ・ミョンバク大統領も私邸用地の不正購入を疑われたことがある。イ大統領の実兄の国会議員は不正政治資金問題で逮捕され、親族の不正をイ大統領は謝罪した。

日本の戦後政治史研究には戦後疑獄史の研究が欠かせないほど、政治スキャンダルの悪徳の花盛りの時代が続いてきたが、ロッキード事件以来、日本を揺るがすほどの大規模な贈収賄事件はこれといって表ざたになっていない。最近では、甘利TPP担当大臣が大臣室で業者から現金入りの封筒を受け取った程度の小型スキャンダルが露見しているだけだ。

ちょっとありえない想像だが、日本の政治家たちが徳性を身につけてきたためだろうか?

いまはどうか知らないが、スハルト政権時代、汚職はインドネシアの文化だという風評があった。日本人がインドネシア人に、汚職はインドネシアの文化であると言ったら、インドネシア人が、汚職が文化なら、日本も汚職文化の国ではないか、とまっとうなことを日本人に言い返した。すると、日本人が、インドネシアでは収賄した政治家や役人が捕まることはないが、日本では政治家が収賄容疑でときどきは捕まることがある、と逃げをうった。

古い話だが1954年の造船疑獄捜査のさい、検察が佐藤栄作・自由党幹事長を収賄容疑で逮捕しようとしたら、犬養健法務大臣が指揮権を発動して逮捕を中止させたことがあった。ちまちました話になるが、最近では、家族で食べた回転ずしの払いを政治資金で済ませたという政治家の話もある。

政治家稼業を続けているうちに公金と私金、不浄の金と浄財、その境界線が見えなくなるのだろう。政治家の方は、金にきれいも汚いもあるものか、要るものは要る、「白河の清きに魚も住みかねてもとの濁りの田沼恋しき」というではないか、といった気分なのだろうが。

権力をあさる政治家の群れがある限り、各種スキャンダルは多かれ少なかれ世界各国どこにでもある。韓国で検察が大統領のスキャンダルを果敢に捜査してきたのは、①韓国の検察が優秀であるから②政敵追い落としの政治勢力の策謀に検察が一役買わされている、のいずれかであろう。

ということは、日本の検察が有権者の憤激を呼び大衆行動の引き金になるような政治スキャンダルをこのところ捜査していないということは①日本の検察が無能であるから②政敵追い落としをはかるような敵対勢力が弱くなった、のいずれかであろう。永田町の政党勢力分布は1強多弱であり、1強の政党の内部でも1強多弱の議員構成だ。出る杭は打たれる、と萎縮する向きが多いのであろう。

(2016.11.5  花崎泰雄)





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