法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

支給の対象にならない可能性が高いと話す独立行政法人について

2007-04-29 19:04:49 | Weblog
いじめ自殺:遺族に給付金不払いの可能性 自宅は対象外 MSN毎日インタラクティブ

 災害共済給付の給付基準や「学校の管理下」で発生したといえるかは,独立行政法人日本スポーツ振興センター法施行令第5条とその委任を受けた文科省令が規定している。
疾病については,省令第22条第7号に,「外部衝撃,急激な運動若しくは相当の運動量を伴う運動又は心身に対する負担の累積に起因することが明らかであると認められる疾病のうち特にセンターが認めたもの」とある。

上記「心身に対する負担の累積」のうち,「心身に対する負担」については,独立行政法人日本スポーツ振興センター災害共済給付の基準に関する規程には次のような注書きがある。

 ここにいう「心身に対する負担」は,その心身への負担の加わり方について,身体的な運動のあることを必要要件としていないので,疾病発生の原因に激しい運動あるいは相当の運動量を伴う運動がなくても,学校の管理下における何等かの事象が当該者に負担として加わり,これが累積して疾病の発生をみたものと認められる場合は,給付の対象として差し支えないものである。

さらに,「心身に対する負担の累積に起因する疾病」の具体例のひとつである「精神的な負担が継続的に加わったことにより発症したと認められる心因反応などの疾患」については次の注書きが。

 ここにいう「精神的な負担が継続的に加わった」とは,精神的な苦痛をもたらすような行為が継続的に行われた場合をいう。
 例えば,いわゆる「いじめ」の類で,一定の者から特定の者に対し,集中的,継続的に苦痛を与える行為が行われた場合がこれに該当する。この場合,精神障害の発祥には個人の素質の影響も強いことから,一般の児童生徒等が心因反応などの疾患に至る程度のものについて給付の対象とする。
 なお,「いじめ」とは具体的には,「仲間はずれ」,「無視」,「悪口」,「ひやかし・からかい」,「持ち物隠し」,「殴る」,「蹴る」等をいう。


 さて,死亡については,省令第24条第2号に,「第二十二条に掲げる疾病に直接起因する死亡」とあるが,独立行政法人日本スポーツ振興センター災害共済給付の基準に関する規程には,疾病にあるような上記の「心身に対する負担の累積」云々の記述が見あたらない。
この規定に拠った場合は,いじめによる精神疾患には支給があり,いじめによる自殺には支給がないことになりそうである。しかし,この別なる扱いに合理性,あるだろうか?

なお,令第5条第4項には,「児童生徒等の死亡でその原因である事由が学校の管理下において生じたもののうち,文部科学省令で定めるもの」とある。「結果」ではなく「原因」が「学校の管理下」で生じたかどうかが重要なのだ。「自宅は対象外」はおかしい。

独立行政法人日本スポーツ振興センター 災害共済給付

独立行政法人日本スポーツ振興センター 独立行政法人日本スポーツ振興センター災害共済給付の基準に関する規程


独立行政法人日本スポーツ振興センター法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,独立行政法人日本スポーツ振興センターの名称,目的,業務の範囲等に関する事項を定めることを目的とする。

(名称)
第二条  この法律及び独立行政法人通則法 (平成十一年法律第百三号。以下「通則法」という。)の定めるところにより設立される通則法第二条第一項 に規定する独立行政法人の名称は,独立行政法人日本スポーツ振興センターとする。

(センターの目的)
第三条  独立行政法人日本スポーツ振興センター(以下「センター」という。)は,スポーツの振興及び児童,生徒,学生又は幼児(以下「児童生徒等」という。)の健康の保持増進を図るため,その設置するスポーツ施設の適切かつ効率的な運営,スポーツの振興のために必要な援助,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校,高等専門学校,特殊教育諸学校(盲学校,聾学校又は養護学校をいう。第十八条において同じ。)又は幼稚園(第十五条第一項第七号を除き,以下「学校」と総称する。)の管理下における児童生徒等の災害に関する必要な給付その他スポーツ及び児童生徒等の健康の保持増進に関する調査研究並びに資料の収集及び提供等を行い,もって国民の心身の健全な発達に寄与することを目的とする。

(業務の範囲)
第十五条  センターは,第三条の目的を達成するため,次の業務を行う。
一  その設置するスポーツ施設及び附属施設を運営し,並びにこれらの施設を利用してスポーツの振興のため必要な業務を行うこと。
二  スポーツ団体(スポーツの振興のための事業を行うことを主たる目的とする団体をいう。)が行う次に掲げる活動に対し資金の支給その他の援助を行うこと。
イ スポーツに関する競技水準の向上を図るため計画的かつ継続的に行う合宿その他の活動
ロ 国際的又は全国的な規模のスポーツの競技会,研究集会又は講習会の開催
三  優秀なスポーツの選手若しくは指導者が行う競技技術の向上を図るための活動又は優秀なスポーツの選手が受ける職業若しくは実際生活に必要な能力を育成するための教育に対し資金の支給その他の援助を行うこと。
四  国際的に卓越したスポーツの活動を行う計画を有する者が行うその活動に対し資金の支給その他の援助を行うこと。
五  投票法 に規定する業務を行うこと。
六  学校の管理下における児童生徒等の災害(負傷,疾病,障害又は死亡をいう。以下同じ。)につき,当該児童生徒等の保護者(学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第二十二条第一項 に規定する保護者をいい,同項 に規定する保護者のない場合における里親(児童福祉法 (昭和二十二年法律第百六十四号)第二十七条第一項第三号 の規定により委託を受けた里親をいう。)その他の政令で定める者を含む。以下同じ。)又は当該児童生徒等のうち生徒若しくは学生が成年に達している場合にあっては当該生徒若しくは学生その他政令で定める者に対し,災害共済給付(医療費,障害見舞金又は死亡見舞金の支給をいう。以下同じ。)を行うこと。
七  スポーツ及び学校安全(学校(学校教育法第一条 に規定する学校をいう。以下この号において同じ。)における安全教育及び安全管理をいう。)その他の学校における児童生徒等の健康の保持増進に関する調査研究並びに資料の収集及び提供を行うこと。
八  前号に掲げる業務に関連する講演会の開催,出版物の刊行その他普及の事業を行うこと。
九  前各号に掲げる業務に附帯する業務を行うこと。
2  センターは,前項に規定する業務のほか,当該業務の遂行に支障のない範囲内で,同項第一号に掲げる施設を一般の利用に供する業務を行うことができる。

(災害共済給付及び免責の特約)
第十六条  災害共済給付は,学校の管理下における児童生徒等の災害につき,学校の設置者が,児童生徒等の保護者(児童生徒等のうち生徒又は学生が成年に達している場合にあっては当該生徒又は学生。次条第四項において同じ。)の同意を得て,当該児童生徒等についてセンターとの間に締結する災害共済給付契約により行うものとする。
2  前項の災害共済給付契約に係る災害共済給付の給付基準,給付金の支払の請求及びその支払並びに学校の管理下における児童生徒等の災害の範囲については,政令で定める。3  第一項の災害共済給付契約には,学校の管理下における児童生徒等の災害について学校の設置者の損害賠償責任が発生した場合において,センターが災害共済給付を行うことによりその価額の限度においてその責任を免れさせる旨の特約(以下「免責の特約」という。)を付することができる。
4  センターは,政令で定める正当な理由がある場合を除いては,第一項の規定により同項の災害共済給付契約を締結すること及び前項の規定により免責の特約を付することを拒んではならない。

独立行政法人日本スポーツ振興センター法施行令の関連条文

(学校の管理下における災害の範囲)
第五条  災害共済給付に係る災害は,次に掲げるものとする。
一  児童生徒等の負傷でその原因である事由が学校の管理下において生じたもの。ただし,療養に要する費用が五千円以上のものに限る。
二  学校給食に起因する中毒その他児童生徒等の疾病でその原因である事由が学校の管理下において生じたもののうち,文部科学省令で定めるもの。ただし,療養に要する費用が五千円以上のものに限る。
三  第一号の負傷又は前号の疾病が治った場合において存する障害のうち,文部科学省令で定める程度のもの
四  児童生徒等の死亡でその原因である事由が学校の管理下において生じたもののうち,文部科学省令で定めるもの
五  前号に掲げるもののほか,これに準ずるものとして文部科学省令で定めるもの
2  前項第一号,第二号及び第四号において「学校の管理下」とは,次に掲げる場合をいう。
一  児童生徒等が,法令の規定により学校が編成した教育課程に基づく授業を受けている場合
二  児童生徒等が学校の教育計画に基づいて行われる課外指導を受けている場合
三  前二号に掲げる場合のほか,児童生徒等が休憩時間中に学校にある場合その他校長の指示又は承認に基づいて学校にある場合
四  児童生徒等が通常の経路及び方法により通学する場合
五  前各号に掲げる場合のほか,これらの場合に準ずる場合として文部科学省令で定める場合

独立行政法人日本スポーツ振興センターに関する省令の関連条文

(令第五条第一項第二号 の文部科学省令で定める疾病)
第二十二条  令第五条第一項第二号 の児童生徒等の疾病でその原因である事由が学校の管理下において生じたもののうち文部科学省令で定めるものは,次に掲げるものとする。一  家庭科若しくは技術・家庭科の調理実習における試食又は修学旅行若しくは遠足における給食に起因する中毒及び理科等の実験又は実習におけるガス等による中毒
二  熱中症
三  溺水及びこれに起因する嚥下性肺炎
四  異物の嚥下又は迷入及びこれらに起因する疾病
五  漆等による皮膚炎
六  前各号に掲げる疾病に準ずるものと認められる疾病のうち特にセンターが認めたもの
七  外部衝撃,急激な運動若しくは相当の運動量を伴う運動又は心身に対する負担の累積に起因することが明らかであると認められる疾病のうち特にセンターが認めたもの
八  令第五条第一項第一号 本文に掲げる負傷に起因することが明らかであると認められる疾病のうち特にセンターが認めたもの

(障害の程度)
第二十三条  令第五条第一項第三号 の負傷又は疾病が治った場合において存する障害のうち文部科学省令で定める程度のものは,別表下欄に定める程度のものとする。

(令第五条第一項第四号 の文部科学省令で定める死亡)
第二十四条  令第五条第一項第四号 の児童生徒等の死亡でその原因である事由が学校の管理下において生じたもののうち文部科学省令で定めるものは,次に掲げるものとする。一  学校給食に起因することが明らかであると認められる死亡
二  第二十二条に掲げる疾病に直接起因する死亡
三  前二号に掲げるもののほか,学校の管理下において発生した事故に起因する死亡

(令第五条第一項第五号 の文部科学省令で定める死亡)
第二十五条  令第五条第一項第五号 の文部科学省令で定める死亡は,次に掲げるものとする。
一  突然死であってその顕著な徴候が学校の管理下において発生したもの
二  前号に掲げる突然死に準ずるものとして,特にセンターが認めたもの

(令第五条第二項第五号 の文部科学省令で定める場合)
第二十六条  令第五条第二項第五号 の文部科学省令で定める場合は,次に掲げる場合とする。
一  学校の寄宿舎に居住する児童生徒等が,当該寄宿舎にあるとき。
二  児童生徒等が,学校以外の場所であって令第五条第二項第一号 の授業若しくは同項第二号 の課外指導が行われる場所(当該場所以外の場所において集合し,又は解散するときは,その場所を含む。)又は前号に規定する寄宿舎と住居との間を,合理的な経路及び方法により往復するとき。
三  令第三条第七項 に規定する高等学校の定時制の課程又は通信制の課程に在学する生徒が,学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)第四十五条の二 (同法第五十一条の九第一項 において準用する場合を含む。)の規定により技能教育のための施設で当該施設の所在地の都道府県の教育委員会の指定するものにおいて当該高等学校における教科の一部の履修とみなされる教育を受けているとき。

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県による履行期限を待たない駆除措置について

2007-04-29 09:38:43 | Weblog
県,被害民有林を伐採へ 松くい虫対策,命令後に代執行 - さきがけ on the Web

 森林病害虫等防除法第4条第1項には,「農林水産大臣は,前条第一項第一号から第四号まで若しくは第六号,第二項又は第三項の規定による命令をした場合において,森林,樹木,指定種苗又は伐採木等の所有者又は管理者が指定された期間内に命ぜられた措置を行わないとき,行つても十分でないとき又は行う見込みがないときは,当該措置の全部又は一部を行うことができる。」とある。この規定は,都道府県知事の駆除命令等に係る同第5条第4項において準用されている。

奈良県ため池条例事件では,堤とうの利用制限は「災害を未然に防止するという社会生活上の已むを得ない必要から来ることであって」,使用を制限される者は「公共の福祉のため,当然これを受任しなければならない」とされたが,森林病害虫等防除法は第8条に損失補償規定を置いている。
憲法第29条の「正当な補償」「公共のために用いる」の意義,補償の要否等を考えるのに好個の事案。

記事によれば,駆除命令の履行期限は来年3月末の予定とのこと。県が6月中に駆除措置をおこなうとすれば,「伐採木等の所有者が命ぜられた措置を行う見込みがないとき」にあたるとしてであろうか。この場合は,民有林所有者の考えをよく聴取してからということになろう。


日本国憲法の関連条文

第二十九条  財産権は,これを侵してはならない。
2  財産権の内容は,公共の福祉に適合するやうに,法律でこれを定める。
3  私有財産は,正当な補償の下に,これを公共のために用ひることができる。

森林病害虫等防除法の関連条文

(目的)
第一条  この法律は,森林病害虫等を早期に,且つ,徹底的に駆除し,及びそのまん延を防止し,もつて森林の保全を図ることを目的とする。

(定義)
第二条  この法律において「森林病害虫等」とは,樹木又は林業種苗に損害を与える次に掲げるものをいう。
一  松の枯死の原因となる線虫類(以下「線虫類」という。)を運ぶ松くい虫(以下「松くい虫」という。)
二  樹木に付着してその生育を害するせん孔虫類であつて,急激にまん延して森林資源に重大な損害を与えるおそれがあるため,その駆除又はまん延の防止につき特別の措置を要するものとして政令で定めるもの(以下「特定せん孔虫」という。)
三  前二号に掲げるもののほか,松毛虫その他の昆虫類,菌類,ウイルス及び獣類であつて政令で定めるもの
2  この法律において「伐採木等」とは,伐採された樹木その他土地から分離した樹木の幹及び枝条(用材及び薪炭材であるものを含む。)並びにこれらの包装をいう。
3  この法律において「特定森林」とは,特定樹種(松くい虫に係る場合にあつては松,特定せん孔虫に係る場合にあつては特定せん孔虫の種類ごとに政令で定める樹種をいう。以下同じ。)からなる森林をいう。
4  この法律において「高度公益機能森林」とは,森林法 (昭和二十六年法律第二百四十九号)第二十五条第一項 若しくは第二項 又は第二十五条の二第一項 若しくは第二項 の規定により保安林として指定された特定森林及びその他の公益的機能が高い特定森林であつて特定樹種以外の樹種からなる森林によつては当該機能を確保することが困難なものとして政令で定める特定森林をいう。
5  この法律において「被害拡大防止森林」とは,松くい虫又は特定せん孔虫(以下「松くい虫等」という。)の被害対策を緊急に行わないとすれば,松くい虫が運ぶ線虫類又は特定せん孔虫(以下「特定原因病害虫」という。)により当該特定森林に発生している被害が高度公益機能森林に著しく拡大することとなると認められる特定森林(高度公益機能森林を除く。)をいう。
6  この法律において「特別伐倒駆除」とは,松くい虫等が付着している樹木の伐倒及び破砕(農林水産省令で定める基準に従い行うものに限る。以下同じ。)又は当該樹木の伐倒及び焼却(炭化を含む。)をいう。
7  この法律において「樹種転換」とは,特定森林を保護し,及びその有する機能を確保するために行う特定原因病害虫により被害が発生している特定森林の特定樹種以外の樹種又は特定原因病害虫により枯死するおそれのない特定樹種からなる森林への転換をいう。

(駆除命令)
第三条  農林水産大臣は,森林病害虫等が異常にまん延して森林資源に重大な損害を与えるおそれがあると認めるときは,早期に,かつ,徹底的に,これを駆除し,又はそのまん延を防止するため必要な限度において,区域及び期間を定め,次に掲げる命令をすることができる。
一  森林病害虫等が付着している樹木を所有し,又は管理する者に対し,当該樹木の伐倒及び薬剤による防除又は当該樹木の伐倒及びはく皮並びに森林病害虫等及びその付着している枝条及び樹皮の焼却を命ずること。
二  森林病害虫等が付着し,又は付着するおそれがある根株の存する伐採跡地を所有し,又は管理する者に対し,薬剤による防除又は当該根株のはく皮並びに森林病害虫等及びその付着している枝条及び樹皮の焼却を命ずること。
三  森林病害虫等が付着している樹木又は指定種苗(樹木の種子及び苗であつて農林水産大臣の指定するものをいい,その容器及び包装を含む。以下同じ。)を所有し,又は管理する者に対し,森林病害虫等並びにその付着している枝条又は指定種苗の焼却を命ずること。
四  森林病害虫等の被害を受け,又は受けるおそれがある樹木又は指定種苗を所有し,又は管理する者に対し,薬剤による防除を命ずること。
五  森林病害虫等が付着している指定種苗又は伐採木等の移動を制限し,又は禁止すること。
六  森林病害虫等が付着し,又は付着するおそれがある伐採木等を所有し,又は管理する者に対し,薬剤による防除又は当該伐採木等のはく皮若しくは森林病害虫等並びにその付着している枝条,樹皮及び包装の焼却を命ずること。
2  農林水産大臣は,松くい虫等が異常にまん延して森林資源たる特定森林に重大な損害を与えるおそれがあると認めるときは,前項の規定によるほか,早期に,かつ,徹底的に,これを駆除し,又はそのまん延を防止するため特に必要な限度において,区域及び期間を定め,高度公益機能森林又は被害拡大防止森林につき,当該特定森林を所有し,又は管理する者に対し,特別伐倒駆除を命ずることができる。
3  農林水産大臣は,高度公益機能森林又は被害拡大防止森林につき,第一項第一号の規定による命令(松くい虫等が付着している樹木の伐倒及び薬剤による防除に係るものに限る。)又は前項の規定による命令をするに際し,又は命令をした後において,特定原因病害虫により当該特定森林に発生している被害の状況からみて,これらの命令のみによつては早期に,かつ,徹底的に,松くい虫等を駆除し,又はそのまん延を防止する目的を達することができないと認めるときは,その必要の限度において,これらの命令の区域及び期間の範囲内で区域及び期間を定め,当該特定森林を所有し,又は管理する者に対し,松くい虫等が付着しているおそれがある樹木(枯死しているものに限る。)の伐倒及び薬剤による防除(以下「補完伐倒駆除」という。)を命ずることができる。
4  前三項の規定による命令で第八条の規定により損失の補償を伴うものは,これによつて必要となる補償金の総額が国会の議決を経た予算の金額を超えない範囲内においてしなければならない。
5  第一項から第三項までの規定による命令をしようとするときは,その二十日前までに,農林水産省令で定める手続に従い,次の事項を公表しなければならない。ただし,森林病害虫等の駆除又はそのまん延の防止のための措置を緊急に行う必要があるときは,この限りでない。
一  区域及び期間
二  森林病害虫等の種類
三  行うべき措置の内容
四  命令をしようとする理由
五  その他必要な事項
6  前項第一号の区域内において森林,樹木,指定種苗又は伐採木等を所有し,又は管理する者は,同項の規定による公表があつた日から二週間以内に,理由を記載した書面をもつて農林水産大臣に不服を申し出ることができる。
7  農林水産大臣は,前項の規定による不服の申出を受けたときは,当該申出をした者に対し,あらかじめ期日及び場所を通知して,公開による意見の聴取を行つた後,当該申出に対する決定をしなければならない。この場合において,意見の聴取に際しては,当該申出をした者又はその代理人は,当該事案について証拠を提出し,意見を述べることができる。
8  農林水産大臣は,第五項ただし書の規定により公表をしないで第一項第一号から第四号まで若しくは第六号,第二項又は第三項の規定による命令をする場合には,その命令に係る措置の実施に必要な準備期間を考慮して,第一項,第二項又は第三項の期間を定めなければならない。
9  農林水産大臣は,第一項から第三項までの規定による命令をするには,その命令を受けるべき者に対し,次に掲げる事項を記載した命令書を交付しなければならない。
一  第一項第一号から第四号まで若しくは第六号,第二項又は第三項の規定による命令にあつては,次の事項
イ 第五項各号に掲げる事項
ロ その命令を受ける者が,次条第一項に規定する場合に該当することとなつたとした場合には,同項の規定による措置をとることがある旨
ハ 次条第一項の規定による措置をとることにより同条第二項に規定する場合に該当することとなつたとした場合には,同項の規定による費用の徴収をすることがある旨
二  第一項第五号に規定する命令にあつては,第五項各号に掲げる事項
10  農林水産大臣は,前項の規定による命令書の交付を受けるべき者の所在が知れないときその他当該命令書をその者に交付することができないときは,農林水産省令で定める手続に従い,当該命令書の内容を公告してその交付に代えることができる。
11  第一項から第三項までの規定による命令については,行政手続法 (平成五年法律第八十八号)第三章 (第十二条及び第十四条を除く。)の規定は,適用しない。

(駆除措置)
第四条  農林水産大臣は,前条第一項第一号から第四号まで若しくは第六号,第二項又は第三項の規定による命令をした場合において,森林,樹木,指定種苗又は伐採木等の所有者又は管理者が指定された期間内に命ぜられた措置を行わないとき,行つても十分でないとき又は行う見込みがないときは,当該措置の全部又は一部を行うことができる。
2  農林水産大臣は,前項の規定により同項の措置の全部又は一部を行なつた場合において,その費用の額が,同項の命令を受けた者が自らその措置の全部又は一部を行なつたとした場合にその者が受けることとなるべき第八条第一項の規定による補償の額をこえるときは,そのこえる部分の額に相当する額をその者から徴収することができる。
3  前項の規定による費用の徴収については,行政代執行法 (昭和二十三年法律第四十三号)第五条 及び第六条 の規定を準用する。

(都道府県知事の駆除命令等)
第五条  都道府県知事は,森林病害虫等を駆除し,又はそのまん延を防止するため必要があるときは,その必要の限度において,区域及び期間を定め,第三条第一項各号に掲げる命令をすることができる。
2  都道府県知事は,松くい虫等を駆除し,又はそのまん延を防止するため特に必要があると認めるときは,前項の規定によるほか,その必要の限度において,区域及び期間を定め,高度公益機能森林又は被害拡大防止森林につき,当該特定森林を所有し,又は管理する者に対し,特別伐倒駆除を命ずることができる。
3  都道府県知事は,高度公益機能森林又は被害拡大防止森林につき,第一項の規定による命令(松くい虫等が付着している樹木の伐倒及び薬剤による防除に係るものに限る。)又は前項の規定による命令をするに際し,又は命令をした後において,特定原因病害虫により当該特定森林に発生している被害の状況からみて,これらの命令のみによつては松くい虫等を駆除し,又はそのまん延を防止する目的を達することができないと認めるときは,その必要の限度において,これらの命令の区域及び期間の範囲内で区域及び期間を定め,当該特定森林を所有し,又は管理する者に対し,補完伐倒駆除を命ずることができる。
4  前三項の場合には,第三条第五項から第十一項まで及び前二条の規定を準用する。
5  農林水産大臣は,森林病害虫等がまん延して高度公益機能森林その他の森林資源として重要な森林に損害を与えるおそれがあると認めるときは,都道府県知事に対し,第一項から第三項までの規定による命令に関し必要な指示をすることができる。

(損失補償)
第八条  国又は都道府県は,第三条第一項から第三項まで若しくは第五条第一項から第三項までの規定による命令,第七条第一項の規定による指示又は同条第二項の規定により当該官吏若しくは森林害虫防除員の行う処分により損失を受けた者に対し,損失を補償しなければならない。
2  前項の規定による補償の額は,第三条第一項第一号から第四号まで若しくは第六号,第二項若しくは第三項の命令又は第七条第一項の指示に係る場合にあつては,樹木の伐倒,破砕又は炭化の措置を行うことにより通常生ずべき損失額に相当する金額及び薬剤による防除,幹若しくは根株のはく皮又は樹木,枝条,樹皮,包装,指定種苗若しくは森林病害虫等の焼却の措置を行うのに通常要すべき費用に相当する金額とし,第三条第一項第五号の命令又は第七条第二項の処分に係る場合にあつては,その命令又は処分により通常生ずべき損失額に相当する金額とする。
3  第一項の補償を受けようとする者は,農林水産大臣又は都道府県知事に,補償を受けようとする見積額を記載した申請書を提出しなければならない。
4  農林水産大臣又は都道府県知事は,前項の申請があつたときは,遅滞なく補償すべき金額を決定し,当該申請人に通知しなければならない。
5  前項の決定に不服がある者は,その決定を知つた日から六箇月以内に,訴えをもつて補償金額の増額を請求することができる。
6  前項の訴えにおいては,国又は都道府県を被告とする。

(国庫補助)
第九条  国は,都道府県に対し,政令で定めるところにより,この法律の規定により都道府県知事の行う森林病害虫等の駆除又はそのまん延の防止に関する措置に要する費用の一部を補助する。

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