法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

自動継続特約の趣旨に反する消滅時効の起算点に係る主張について

2007-04-26 20:09:22 | Weblog
「満期ほったらかすと預金消滅」否定 最高裁,初判断 YOMIURI ONLINE

 第三小法廷は,いわゆる「自動継続特約」につき次のとおり判示。

 自動継続定期預金契約における自動継続特約は,預金者から満期日における払戻請求がされない限り,当事者の何らの行為を要せずに,満期日において払い戻すべき元金又は元利金について,前回と同一の預入期間の定期預金契約として継続させることを内容とするものである(最高裁平成11年(受)第320号同13年3月16日第二小法廷判決・裁判集民事201号441頁参照)。消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する(民法166条1項)が,自動継続定期預金契約は,自動継続特約の効力が維持されている間は,満期日が経過すると新たな満期日が弁済期となるということを繰り返すため,預金者は,解約の申入れをしても,満期日から満期日までの間は任意に預金払戻請求権を行使することができない。したがって,初回満期日が到来しても,預金払戻請求権の行使については法律上の障害があるというべきである。
 もっとも,自動継続特約によれば,自動継続定期預金契約を締結した預金者は,満期日(継続をしたときはその満期日)より前に継続停止の申出をすることによって,当該満期日より後の満期日に係る弁済期の定めを一方的に排除し,預金の払戻しを請求することができる。しかし,自動継続定期預金契約は,預金契約の当事者双方が,満期日が自動的に更新されることに意義を認めて締結するものであることは,その内容に照らして明らかであり,預金者が継続停止の申出をするか否かは,預金契約上,預金者の自由にゆだねられた行為というべきである。したがって,預金者が初回満期日前にこのような行為をして初回満期日に預金の払戻しを請求することを前提に,消滅時効に関し,初回満期日から預金払戻請求権を行使することができると解することは,預金者に対し契約上その自由にゆだねられた行為を事実上行うよう要求するに等しいものであり,自動継続定期預金契約の趣旨に反するというべきである。そうすると,初回満期日前の継続停止の申出が可能であるからといって,預金払戻請求権の消滅時効が初回満期日から進行すると解することはできない。


 至極もっともな判断。特約を信じてそのままにしていた預金者を「権利のうえに眠っている。」と難詰することはできない。自動継続定期預金は,雑ぱくな言い方をすれば,「眠っていても結構です。」という預金契約。自動継続の取扱いに期限を設けている金融機関もあるやに聞くが,これなど,消滅時効の起算点に係る自分たちの主張に理がないことを見越した商品設計といえそうだ。
それにしても,1年定期の約定利息が3.86%。中島みゆきじゃないけれど,そんな時代もあった。元本200万円で昭和62年2月24日から支払済みまでの約定の割合による利息及び遅延損害金というから・・・,まぁ,そういう計算になる。何とも羨ましい話し。

判例検索システム 平成19年04月24日 預金払戻請求事件


民法の関連条文

(消滅時効の進行等)
第百六十六条  消滅時効は,権利を行使することができる時から進行する。
2  前項の規定は,始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために,その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし,権利者は,その時効を中断するため,いつでも占有者の承認を求めることができる。

(債権等の消滅時効)
第百六十七条  債権は,十年間行使しないときは,消滅する。
2  債権又は所有権以外の財産権は,二十年間行使しないときは,消滅する。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする