法律の周辺

核心ではなく, あくまでも物事の周辺を気楽に散策するブログです。

神戸市の過誤納金に係る消滅時効の援用について

2005-11-17 20:15:52 | Weblog
取り過ぎ税金37万「時効でも賠償命令」判決…神戸 YOMIURI ONLINE

 神戸市の考えは,概略,次のようなものであろう。

 課税明細書が送付されている場合は,納税者にも,特例措置の適用・不適用の如何は分かるはず。その場合,過誤納金の還付請求権の消滅時効期間は,納付時点から開始すると考えるべきである。よって,納税者が過誤納金を還付請求した場合でも,その時点で5年の時効期間が経過し,市側がこれを援用した場合は,納税者は還付を受けることはできない。

しかし,社会秩序の維持・安定,立証の困難性,といった時効制度の趣旨に照らせば,落ち度のある自治体がこれを援用するのは相当に疑問。
百歩譲って,援用は許されるとしても,「課税明細書が送付されていれば気付くだろう」は,特例措置の複雑性・周知性などを考えると,やはり,疑問である。起算点はもっと遅らせるべきであろう。

神戸市は速やかに還付に応ずるべきだ。控訴すべきではない。


民法の関連条文

(基本原則)
第一条  私権は,公共の福祉に適合しなければならない。
2  権利の行使及び義務の履行は,信義に従い誠実に行わなければならない。
3  権利の濫用は,これを許さない。

地方税法の関連条文

(過誤納金の還付)
第十七条  地方団体の長は,過誤納に係る地方団体の徴収金(以下本章において「過誤納金」という。)があるときは,政令で定めるところにより,遅滞なく還付しなければならない。

(還付金の消滅時効)
第十八条の三  地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権(以下第二十条の九において「還付金に係る債権」という。)は,その請求をすることができる日から五年を経過したときは,時効により消滅する。
2  第十八条第二項及び第三項の規定は,前項の場合について準用する。

(住宅用地に対する固定資産税の課税標準の特例)
第三百四十九条の三の二  専ら人の居住の用に供する家屋又はその一部を人の居住の用に供する家屋で政令で定めるものの敷地の用に供されている土地で政令で定めるもの(前条の規定の適用を受けるものを除く。以下本条,次条第一項,第三百五十二条の二第一項及び第三項並びに第三百八十四条において「住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は,第三百四十九条の規定にかかわらず,当該住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。
2  住宅用地のうち,次の各号に掲げる区分に応じ,当該各号に定める住宅用地に該当するもの(以下本項において「小規模住宅用地」という。)に対して課する固定資産税の課税標準は,第三百四十九条及び前項の規定にかかわらず,当該小規模住宅用地に係る固定資産税の課税標準となるべき価格の六分の一の額とする。
一  住宅用地でその面積が二百平方メートル以下であるもの 当該住宅用地
二  住宅用地でその面積が二百平方メートルを超えるもの 当該住宅用地の面積を当該住宅用地の上に存する住居で政令で定めるものの数(以下本条及び第三百八十四条第一項において「住居の数」という。)で除して得た面積が二百平方メートル以下であるものにあつては当該住宅用地,当該除して得た面積が二百平方メートルを超えるものにあつては二百平方メートルに当該住居の数を乗じて得た面積に相当する住宅用地
3  前項に規定する住居の数の認定その他同項の規定の適用に関し必要な事項は,総務省令で定める。

(住宅用地等に対する都市計画税の課税標準の特例)
第七百二条の三  第三百四十九条の三の二第一項又は第三百四十九条の三の三第一項(同条第二項において準用する場合及び同条第三項(同条第四項において準用する場合を含む。)の規定により読み替えて適用される場合を含む。次項において同じ。)の規定の適用を受ける土地に対して課する都市計画税の課税標準は,第七百二条第一項の規定にかかわらず,当該土地に係る都市計画税の課税標準となるべき価格の三分の二の額とする。
2  第三百四十九条の三の二第二項の規定又は第三百四十九条の三の三第一項の規定により読み替えて適用される第三百四十九条の三の二第二項の規定の適用を受ける土地に対して課する都市計画税の課税標準は,第七百二条第一項及び前項の規定にかかわらず,当該土地に係る都市計画税の課税標準となるべき価格の三分の一の額とする。

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相互会社の相談役制度の廃止について

2005-11-17 18:38:21 | Weblog
明治安田生命,相談役制度を廃止へ NIKKEI NET

 相互会社は,相互保険を営むための社団法人。相互会社から株式会社への組織変更は,1995年の保険業法の全面改正によって認められるようになった。現に,大同生命保険,三井生命保険などが株式会社に組織変更している。

 相互会社の総代・総代会等による経営陣の監督機能についてはいろいろ問題点が指摘されているところだが,保険業法も,会社法の施行に伴う整備法で,一部改正され(整備法第215条),また,経過措置が設けられている(同第216条)。この改正により,相応のガバナンス強化は図られることになる。
記事の「相談役制度の廃止」は,「経営の意思決定の透明性確保」を目指すもの。やはり,ガバナンス強化の一貫として位置づけられる。

内部統制に係るところであり,株式会社でも,今後,同様のことが検討されることになろう。


保険業法の関連条文

(組織変更)
第八十五条  相互会社は,その組織を変更して保険業を営む株式会社とすることができる。

会社法の関連条文

(取締役会の権限等)
第三百六十二条 取締役会は,すべての取締役で組織する。
2 取締役会は,次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は,取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 取締役会は,次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置,変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
5 大会社である取締役会設置会社においては,取締役会は,前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。

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佐賀市議選の投票総数過多の原因判明について

2005-11-17 17:50:40 | Weblog
佐賀市議選「13票」過多,開票時の入力ミスが原因 YOMIURI ONLINE

 再選挙は回避できそう。市選管は一安心といったところだろうか。しかし,市選管は,これまで「管理執行にミスはなく,選挙結果は有効」「(投票者数より多い13票は)偽造票の可能性が高い」としてきた。
確かに,選挙自体の管理執行にミスはなかったのだろうが,原因解明に随分と手間取った。市政の混乱を招いた責任は重いと思う。

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裁判員制度ウェブサイトの開設について

2005-11-17 14:36:59 | Weblog
最高裁 裁判員制度

 裁判員制度に関し,ウェブサイトが開設された。適宜参照したい。

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髪を短くされたことによる美容室に対する損害賠償請求について

2005-11-17 08:45:39 | Weblog
「髪短くされ,売り上げ落ちた」 美容室に賠償命令 (朝日新聞) - goo ニュース

 笑い話に,散髪が終わった後,鏡を見た「その筋の方」から,穏やかな調子で「なかなかいい。でも,兄ちゃん,もうちょっと長くしてくれ。」と言われる,というのがあったが ^^; 。
本件の原告の職業はいわゆる「水商売」の1つ。通常でも,髪型は自由に任せるというわけではないから,契約類型としては,やはり,「請負」ということになるのであろう。

判決は,カットの誤り(不完全履行)と収入減の因果関係は否定したうえで,接客に自信がもてなくなった時期があると認定,慰謝料約25万円の支払いを命じるもの。水野裁判官が女性だということは,裁判には特に影響ないと思うが ^^; 。


民法の関連条文

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは,債権者は,これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも,同様とする。

(損害賠償の範囲)
第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は,これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2  特別の事情によって生じた損害であっても,当事者がその事情を予見し,又は予見することができたときは,債権者は,その賠償を請求することができる。

(請負)
第六百三十二条  請負は,当事者の一方がある仕事を完成することを約し,相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって,その効力を生ずる。

(委任)
第六百四十三条  委任は,当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによって,その効力を生ずる。

(受任者の注意義務)
第六百四十四条  受任者は,委任の本旨に従い,善良な管理者の注意をもって,委任事務を処理する義務を負う。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は,これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
第七百十条  他人の身体,自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず,前条の規定により損害賠償の責任を負う者は,財産以外の損害に対しても,その賠償をしなければならない。

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