
鳴門へ行った目的は一番に 矢野陶苑の登り窯の見物であった。
以前、窯場の句をたくさん詠んでいて、又何かが拾えるのではないか 柳の下にドジョウがいるのではないかとの吟行であった。


なんと云う幸運であったのだ。
登り窯に火が入っている。
何人かの作業の方がいて、火の番をしている。
工程表があり、一日ごとの作業時間のスケジュールを書いて窯場に貼っている。
窯には三つ窓があり、そこから、薪をくべて火の温度の調整をしているようだ。
一つの窓から、ちょうど薪をくべる時。
「近くで窯の中を覗いてみな」
と云ってくださる。
「熱いでよ、火の粉が飛ぶか解らんからきいつけないよ」
「わーすごい!」
窯番さんと私の会話。阿波弁、、、、である。
「ほれ見てみな。入れとる作品が見えるだろ」
「ほんまじゃ~、どれくらい入れとん?」
「うん 大きいのから こんまいぐい飲みみたいなんも全部で、千五百くらいじゃな~。」
「へ~」
「今日な、ここのところよ」
と、工程表の最後の日を指差して教えてくださる。
「テレビ観て来たん?」
「ううん、、偶然。こんな幸運にめぐりあえるとは思わなんだ」
三年ぶりに登り窯に火を入れたそうである。

窯の正面の入り口はきれいに土を塗って蓋をしている。
窯の中に作品」を入れ、薪を入れて幾日か寝ずの火の番をする。
自然の火の勢いや色々の要素で 芸術作品に仕上がるのであろうか。
万全を期した 三年ぶりの登り窯での作品がまさに生まれようとしていた。
二十年も前に詠んだ句を思いだした。
☆ 八朔の窯場のお神酒徳利かな
その時は転がっていたお神酒徳利が今回は蓋をした窯の前にお祀りされている。

登り窯は全長14~5メートルはあるだろうか。
大麻山の麓を利用して、昔のままの窯が残っている。

最後部まで登って行くと、煙がもきもくと出ている。
辺りの木の枝が煤で黒くなっている。

「一緒に習わんで、面白いでよ」
と誘ってくださる。
陶芸教室で陶芸を習っている人も、火の番に参加をしているのであろう。
私と会話をしていると、阿波弁であるから、近くに住んでいると思ったのであろう。
句はものに出来なかったけれど、まあそれはぼちぼちと、、、、
幸せな吟行?になった。
☆ 窯番に老鶯の鳴く日和かな
☆ アイスクリームの差し入れ窯の番続く
☆ 空梅雨は天の恵みぞ窯を炊く
☆ 竹皮を脱ぐさやぎなる陶の里
☆ 栴檀の花の散りしく窯場かな
☆ 轆轤繰る親し訛や立ち葵
☆ 松の芯窯のけぶりに煤けをり
☆ 窯の火も三日となりぬ渋団扇
☆ 窯の火の爆ぜる小窓や夏の萩
☆ 凌霄の花色窯の炎々と
見たまま説明を、、さて省略推敲?・・?