孫ふたり、還暦過ぎたら、五十肩

最近、妻や愚息たちから「もう、その話前に聞いたよ。」って言われる回数が増えてきました。ブログを始めようと思った動機です。

高齢者、「5S教」盲信者

2018年11月25日 | 社会観察
工場の生産現場を見れば、大抵その会社の品質管理レベルが想像できるものだ。

要る物と要らない物を区別して、取り出しやすいように整頓してあるか。床や機械がよく掃除されてきれいに保たれているか。整理・整頓・清掃の、いわゆる3Sが維持されているかどうかが観察ポイントとなる。

この3Sに、清潔・躾(しつけ)が加われば、五つのSで始る単語の語呂合わせで「5S」となる。今や、整理整頓する事が、5Sの代名詞のようになっていたりして、あまり散らかしていると、「オイ、5Sを徹底しろ!」な~んて言われたりする。

今から40~50年前に日本中の工場で流行った、QCサークルという職場の小集団活動がある。自分たちの職場の問題点、改善点を炙り出して、話し合い様々な手法で問題解決を図る、という日本独特の社員の自主的な活動である。

その頃は、盛んに5S、5Sと叫ばれたものであった。

何をどこに置くか、置き場所を決めて、必要な時はすぐに取り出し易いようにしよう、という趣旨で床や棚にはテープやペンキで線が引かれ、見て分かるように名前が明示された。

もしもその区画から外れた置き方がしてあると、「オイ、5Sを徹底しろ!」などと注意されるのだった。

私は、製造業を何度か転職しているので、各社似たような取り組みをしているのを見てきたが、その取組み方の程度には、各社微妙な違いがあったように思う。特に記憶に残っているのは、大手自動車メーカーの下請けのY社である。

毎月一回、5S点検という日があって、恐らく一度リタイヤして再雇用の上、顧問になっているベテランの高齢者の方が、担当の部下を引き連れて、私の所属していた部屋にやってきた。

オフィス全体を隅ずみまで目を凝らしてチェックし、気のついたところは、連れの部下に写真を撮るよう指示し、後からメールで一覧表に添付して、改善点と改善予定日などを記入して返送するのである。

しかし、「そこまでやるか?」と私が疑問に思ったのは、生産現場に行く際は必ず着帽する帽子を、机の上に置いてあったとき、写真を撮られて、「机は帽子を置くところで亜はありません。すぐ改善して下さい。」と指摘された時だった。

普段は、引き出しに入れておくのだが、たまたまその日は現場から戻ってきて、机に置いてあったのだが、そんなことも推察できず、わざわざ証拠写真を撮って指摘するのは、どう考えても馬鹿げている。

また、こんなケースがその会社では、常識としてまかり通っていた。

それは、事務机の右上の引き出しの使い方に関してであった。

私の場合は、ざっと下の写真のような使い方だった。

 主に文房具類


しかし、他のほとんどの人は、薄めの発泡スチロールの板を引き出しの大きさに切り、文具が収まるようにくり抜き、置き場所を決めてしまうのである。

 見た目はきれいだが

誰もその馬鹿馬鹿しさが分かっていたので、新参者の私がそれをやらなかったのを知っていて、それを咎めようとはしなかったのではないかと、今でも思っている。

その勤め先の社風は、少し的外れなところがあって、事務方も作業現場も使っていたカッターナイフは、突然使用禁止となったようだった。切れ味が悪くなると2cmほどペキッと折る事ができるタイプのナイフである。

 便利なカッターナイフ

 使い方別に種類も多い


紙を切るだけでなく、ダンボール用カッターとか布用など、用途別に何種類もあって、安価ながらも実用的なナイフであるが、一度現場の作業者が使っている時、刃先が折れて、目に突き刺さり、失明した事故があったそうだ。

その事故をきっかけにして、工場長は刃先を折るタイプのカッターナイフを使用禁止としたそうだ。社内にあるカッターナイフをすべて処分し、代わりに購入したのは「デザインナイフ」と呼ばれるカッターであった。

  切れ味抜群

刃を折っていくタイプではないが、先端は薄く尖っていて、その切れ味は恐ろしいほどいい。ちょっと間違えば、指先をスパッと切ってしまいそうである。

カッターナイフの刃先が折れて失明した事故は、一体カッターナイフそのものが原因だったのだろうか。

仮に、工場敷地内で社用車運転中に追突事故か衝突事故があって、従業員が一命を落とすような事があったら、工場内での自動車の使用を禁止するのだろうか。

不具合が起きた場合には、是正措置と予防措置を講ずる上で、最も大切なのは原因の特定なのであるが、もしそれが「カッターナイフ」にあったのなら、今でも文房具店で販売されているわけが無いだろう。

トップの下す判断は、常にただしいものとは限らない。


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